3.核兵器の運搬手段
○ICBM

 大陸間弾道ミサイル(Inter Continental Ballistic Missile,ICBM)は、6,400キロメートル以上の射程をもつ弾道ミサイルである。通常は1万キロメートル前後の射程をもち、水爆弾頭を装備した地上発射のミサイルである。次に述べるSLBM、戦略爆撃機とともに、戦略核兵器の「三本柱」をなす。

○SLBM

 潜水艦発射弾道ミサイル(Submarine Launched Ballistic Missile,SLBM)の開発は、原子力潜水艦の開発と並行して進められてきた。ICBMは自国の領土に基地をおき,たとえそれが地下基地でも偵察衛星の発達で、相手国にその位置が知られてしまう。これに反してSLBMは常時海中を移動する原子力潜水艦から発射されるので、探知されにくいばかりでなく、相手国の領海近くにまで接近することが可能である。このため相手国の核攻撃から生き残って反撃する戦略核兵器として重視されている。

○原子力潜水艦

 原子力潜水艦には、核魚雷を装備して相手の水上艦艇や原子力潜水艦を狙う攻撃型原潜(SSN)と、SLBMを装備して数千キロメートル遠方の相手の陸上施設を狙う戦略原潜(SSBN)の2種類がある。

○戦略爆撃機

 長距離爆撃機はICBMなどのミサイル兵器が登場する以前から戦略兵器としての役割を担ってきた。第2次世界大戦末期に日本全土はグアムやサイパンから飛来したアメリカの戦略爆撃機B29によって徹底的に破壊された。広島・長崎に原爆を運んだのもB29であった。この時の爆弾積載重量は最大5トンであったとされる。
 アメリカの最新鋭の戦略爆撃機B-2は、最大速度マッハ0.9、兵器搭載量22トンで、レーダーに探知されにくい「ステルス」構造になっている。
米軍戦略爆撃機B-2 写真提供/NHK
○MIRV

 複数弾頭個別目標ミサイル(Multiple Independently Targetable Reentry Vehicles,MIRV)は、1基のミサイル(ICBMやSLBM)に3個から10数個の核弾頭を積載し、それぞれあらかじめ定めた別々の目標を攻撃するよう設計されたものである。複数の核弾頭(再突入装置)と誘導制御装置を備え、かついくつかの小型ロケットを装備した「バス」と呼ばれるものを打ち上げることになる。3段からなるブースター・ロケットでバスを第1攻撃目標を狙うコースに打ち上げると,バスは1個弾頭を発射するごとに,小型ロケットを用いて第2,第3の目標にコースを定めて,あたかもバスが停留所ごとに乗客を降ろすように,次々と弾頭を発射する仕組になっている。

○IRBM/MRBM/SRBM

 射程の長さにより、次のように分類される。
 中距離弾道ミサイル(Intermediate-Range Ballistic Missile,IRBM)
 射程2,400~6,400キロメートル
 準中距離弾道ミサイル(Medium-Range Ballistic Missile,MRBM)
 射程800~2,400キロメートル
 短射程ミサイル(Short-Range Ballistic Missile,SRBM)
 射程800キロメートル以下

○巡航ミサイル

 ICBMやSLBMがロケットエンジンであるのに対して,巡航ミサイルはジェットエンジンにより飛行する。速力は亜音速で自己誘導装置を構えた無人機といってもよい。本土復帰以前の沖縄米軍基地にはメースBという中距離誘導核ミサイルがあった。巡航ミサイルの航続距離は近年5,000キロメートル近くまでのびて戦略兵器の範疇に入りこんできた。
 巡航ミサイルには海中発射式(SLCM)、空中発射式(ALCM)、地上発射式(GLCM)がある。海中発射式は、潜水艦か水上艦艇から魚雷発射菅などを用いて発射される。空中発射式は戦略爆撃機に搭載し,相手の防空レーダー網の手前から発射する方式が考えられている。
米軍戦略爆撃機B-2 写真提供/NHK