2010年NPT再検討会議を終えて:今後の展開
本財団理事長 スティーブン・リーパー

核拡散防止条約(NPT)締約国が2010年の条約の再検討を終えました。

広島、長崎、平和市長会議、Yes!キャンペーン実行委員会はもとより、多大なるご支援をいただいたYMCA、YWCA、全国の生協の皆様は、 NPT再検討会議(以下、再検討会議と記述)に向けて世論を高め、前向きな結果を得るために働きかけるなど、しかるべき役割を果たされたことをさぞかし誇りに思われていることでしょう。 再検討会議で日本は中心的な役割を演じていますが、それは政府ではなく市民だったのです。 世界中のNGOコミュニティは、再検討会議のカバクトゥラン議長に、核兵器廃絶を求める1,500万筆もの署名を提出しています。 この目を見張るような数字は、草の根からの核兵器廃絶に対する切実な願いの表れであり、これらの署名の大多数は日本で集められたものです。 実は、その他の地域からの署名も、日本の署名運動がきっかけなのです。 日本のおかげでこのように署名が集まったのです。

2千人から3千人の日本人がはるばる海を越えてニューヨークに渡りました。 再検討会議に先立って、5月1日に大きな会議が、2日に平和行進と集会が開催されました。 世界から1万人から2万人が参加し、盛大な行事になりました。 日本人がいなければ、これらは実現しなかったことでしょう。
  世界の核兵器との戦いは、日本人が主導しているといって間違いありません。 平和行進はとくに象徴的でした。 先頭にヒバクシャ、そのすぐ後に秋葉(あきば)広島市長、田上(たうえ)長崎市長、日本から他に4人の市長、続いて平和市長会議の大派遣団が歩いたのです。 前日のNGO会議では、潘 基文(パン ギムン)国連事務総長のスピーチに続いて、秋葉市長が閉会のスピーチを行いました。 ニューヨークに滞在した10日間、秋葉市長は少なくとも15ヵ所で主要なスピーチを行っています。 田上市長も大活躍でした。 しかも、5月4日に行われた平和市長会議は、国連事務総長がスピーチをした2つのNGO主催会議の1つだったのです。 もう1つは、我々とも緊密に連携している核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)主催の会議でした。 事務総長は秋葉市長、田上市長、平和市長会議の発揮するリーダーシップを評価して登壇(とうだん)されたのであり、引き続き成果を期待していることを明言されたのです。

平和市長会議、世界のNGO、多くの日本人が一丸となって、外交官たちに猛烈に働きかけ、 その結果、再検討会議第一委員会(核軍縮)の出した最初の合意文書草案(そうあん)は驚くほど強い表現になっていました。 それは、核兵器のない世界へとつながる交渉プロセスの即時開始を求め、核兵器のない世界の実現に反するすべての活動の即時停止を求めるものでした。 2020年までの核兵器廃絶を提案するものではありませんでしたが、廃絶の緊急性を繰り返し述べ、期限の設定が望ましいと言い切っていました。 さらに、2014年に全世界で核兵器禁止条約を実現する交渉に入るべく、核保有国に2011年に交渉を開始することを求めていました。 これらの記述は、「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を意識しているように思えます。 また、日本政府による最初の演説でも、この議定書について言及しています。 秋葉市長やYes!キャンペーン実行委員会が先頭に立って進めた、この議定書を推進する日本での強力なキャンペーンが、再検討会議に一方ならず影響を与えたことは疑う余地もありません。

今回の再検討会議でまとめられた最終文書も、それほど残念なものではありません。 最終文書を出すことができたのは、潘事務総長や世界のリーダーたちの協力精神の賜物(たまもの)です。 最終文書には「世界の国は核不拡散体制を強化し、核兵器を廃絶することへの決意を再確認した」とはっきり述べられています。
  最終文書の行動計画の最初の項目には、全ての国が「核兵器のない世界」というゴールに即した核政策をとることが規定されています。 言い方は遠まわしですが、これは、まぎれもなくヒロシマ・ナガサキ議定書の第一条と同じ内容です。 さらに、最終文書の中に「核兵器禁止条約」という言葉が2度も出てきたのですが、これは前代未聞のことです。 この条約はヒロシマ・ナガサキ議定書の第二条で規定している内容のものです。 これらの成果は私たちが期待したものには及びませんでしたが、意味がないと片づけることはできません。 国際社会が一体となって全力を尽くし、軍縮への動きを作り出し、かつてなく意義のあるステップを、小さいながらも踏み出したということなのですから。

他方で、核保有国は猛反発し、@核兵器のない世界につながる包括的プロセスの実施、 A核兵器禁止条約や早期の交渉開始、 B核兵器に関わる行動の停止、 C期限の言及、等を約束する項目の削除を求めています。なぜでしょうか?

残念ながら、この結果から多くの人が出した結論は、核保有国は核兵器を廃絶することを本気で考えていない、ということです。 非核保有国が再検討会議からこのメッセージを受けとったとするなら、一部には、自らの核兵器を取得し、実験し、配備する準備を始める国も出てくるかもしれません。

この動きを抑えるためにも、私たちは今回の再検討会議の最終文書を踏み台にして、都市や市民がキャンペーンを拡大し、働きかけを強化しなければなりません。 政府が核兵器のない世界を実現できないのであれば、私たちが実現しなければなりません。 これには皆さまの協力が欠かせないのです。

地雷禁止キャンペーンが成功したのは、故ダイアナ元皇太子妃が、メディアを通してキャンペーンのメッセージを送ることができる十分な資金を得る後押しをしたからです。 核兵器廃絶キャンペーンは、広報活動が十分でないため低迷しています。 これは資金がないからなのです。

平和市長会議は7月27日から29日まで広島で会議を開催します。 この会議が、グローバルな大きなうねりとなるキャンペーンの公表のチャンスとなることを願っています。 皆さまが会議に参加し、我々がゴールを達成できる後押しをしていただきたいのです。 どのような施策をとっても、効果的にキャンペーンを続けるためには、今よりもはるかに莫大な資金が必要になります。 どうか、みなさまのご協力をお願いします。

協力の方法については、下記でご覧いただくことができます。
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