今年6月21~23日、オーストリアのウィーンで核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開催されました。
これに合わせ、広島でも様々な行事が開催され、被爆者や市民が核なき世界に向けて発信しました。
広島から締約国会議を見つめた広島県被団協の箕牧智之
(みまき としゆき)理事長と、県被団協の佐久間邦彦
(さくま くにひこ)理事長にお話を伺いました。
箕牧智之さんから
自分はウィーンで活動することはできませんでしたが、連日報道された現地の様子から若者たちが大いに活動しているのを見て、「天晴れ」と感じました。
広島でも締約国会議に向けて若者や被爆者たちが参加する様々なイベントが行われました。
6月19日には原爆ドーム前とウィーンをつないだオンラインイベントで、原爆小頭症の被爆者である川下
(かわしも)さんが世界に向けて初めてとなるスピーチをされ、感銘を受けました。
世界では原爆小頭症についてはあまり知られていなかったと思いますが、今回、被爆の実相の一つとして認識されたのではないでしょうか。
現在のウクライナ情勢を見ると、国際秩序が武力によって破壊され、核による脅しの発言もあるなど、もってのほかな状況です。
人間としての最低限の道徳規範を守ってもらいたい。
世界の指導者が、核の使用によって何が起こるか、未だに知らないということはないだろうとは思いますが、こういう事態を見ると、まだまだ私たちの活動が世界に十分届いていないのではないかと感じます。
そんな中で開催された締約国会議には、日本政府にオブザーバー参加してほしかった。
今回、NATO(北大西洋条約機構)に加盟している国も含め、多くの国がオブザーバー参加していたので、日本政府も来年の第2回締約国会議には是非参加してほしいと思います。
今回の会議で採択されたウィーン宣言や行動計画は素晴らしいものですが、障害を持って生まれた核実験被害者の方がウィーンで自らの体験を訴えている様子などを見ると、彼らへの援助もまだこれからなのだと感じました。
また、核兵器禁止条約とNPT(核兵器不拡散条約)が互いに補完し合うものであると明言されたわけですから、この8月のNPT再検討会議を期待を持って注視していきます。
日本はNPTには加盟しているので、しっかりと橋渡し役を務めてもらいたいと思います。
来年はG7首脳会議が広島で開催され、核保有国のトップも来広します。
各国首脳にはぜひ、平和記念資料館を訪れ、77年前に核兵器が広島に何をもたらしたのか、現実をしっかり見てほしいです。
見れば何かを感じるはず、それを自国に持ち帰り、核兵器廃絶に向けて行動してほしいと思います。
原爆ドーム前とウィーンをつないだイベント「核なき世界へ! ウイーンへ届けよう被爆地の声!」
佐久間邦彦さんから
締約国会議がウィーンで開催されるにあたり、広島でも市内の被爆者7団体とNGO・ANT-Hiroshimaが、ピースボートとコラボして、日本政府にオブザーバー参加を求めるなど様々な活動を行いました。
そこに広島の若者の団体・カクワカ広島の若者たちや、ウィーンで活動する若者たちも加わり、締約国会議を盛り上げようと発信しました。
若者たちには今後も活動経験を積んで行ってほしいと思います。
また、彼らが活動を続けられるよう支える体制を、私たちも考えていかなければと思っています。
現在、ウクライナ情勢により、「やはり核は無くさなければならない」という意見に対して、「核は必要だ」という意見も出てきています。
そんな状況の中で核兵器禁止条約の締約国会議が開催された報道を見ることにより、これまで関心がなかった人たちも核兵器について考える機会となったのではないかと思います。
核兵器廃絶への機運が低下しているという声もありますが、だからこそ、核兵器廃絶に向けた活動の必要性が高まっているのではないでしょうか。
被爆者は高齢化しています。
今後は、年少だったため自らは被爆時のことをよく覚えていない世代の被爆者も、家族の体験も含めた講話をするなどの活動に力を入れていかなければと考えています。
ウィーンでは若者たちがよく頑張っていたと思います。
残念ながら締約国会議に日本政府は参加しませんでしたが、オブザーバーとしてNATO加盟国が参加しました。
彼らにとっては、核兵器禁止条約加盟国との対話の場を持てたことが成果だったのではないでしょうか。
これからも幅広い議論を続けるべきです。
また、私としては「黒い雨」被害者の支援もウィーン宣言で示された核被害者への支援の一つであると訴えて行きたい。
今回の会議で最終文書を採択することができましたが、これは出発点です。
核保有国は参加していないとはいえ、これだけ多くの国によって議論された内容は、彼らも気にしているはず。
これをもとに、どう呼びかけていくのかが大事です。
8月のNPT再検討会議において、核保有国は第6条の誠実交渉義務を果たすよう、訴えたいと思います。