第2回広島平和記念資料館展示検討会議

平成22年(2010年)9月27日(月)午後2時〜
広島国際会議場3階 研修室(2)



                  次    第

                  1 開会

                  
                  2 議題 1 本館展示構成について
 
                      資料1  本館展示構成について
                      資料2  展示ゾーニング

                  3 議題 2 本館展示手法、展示資料の課題の整理
                       資料3  展示手法、展示資料の課題の整理


                 4 閉会



資料1

本館展示構成について

(1) 基本計画での整備方針と展示内容
 @ 目的
   当館の使命を果たすための中心的な展示であり、被爆者が高齢化し、どのように被爆体験を継承・伝承していくかが大きな課題となっている中で、原爆の
   非人道性、原爆被害の甚大さ・凄惨さ、被爆者や遺族の苦しみ・悲しみなどを、これまで以上に伝えることを目的とする。

 A 整備方針
  ○原爆による熱線、爆風、放射線が同時に都市を襲い、甚大な被害をもたらしたことを示す。
  ○人間(被爆者)の視点から原爆の悲惨さを伝えるため、被爆者の遺品や被災写真、市民が描いた原爆の絵、被爆者証言映像など被爆の事実をストレート
    に伝える実物資料の展示を重視する。
  ○様々な被爆状況を示すため、より多くの被爆資料を展示する。
  ○原爆被害を人間(被爆者)の視点から紹介していく中で、熱線、爆風、放射線などの科学的な視点からの知見も織り交ぜて展示する。
  ○凄惨な被爆の惨状を伝える資料については、基本的にはありのままを見せるべきであるが、児童などへの心理的な影響に配慮して、負傷した人々の写真
    医学標本などについては、展示手法や場所を工夫するとともに、展示場所の予告などを行う。

 B 展示内容
  ○最初に「8月6日のヒロシマ」を紹介し、被爆直後の広島の全体像をありのままに伝える。
  ○原爆被害の全体像を一望した来館者に対して、「被爆者」に主眼を置いた展示により、一人一人の被爆者の被害の実態、失われた命の尊さ、被爆者や遺
    族の苦しみ・悲しみなどを紹介する。
  ○市民の被害のみならず、当時、広島にいた朝鮮半島や中国大陸からの人々など外国人被爆者の存在についても紹介する。
  ○被爆者の今日までの歩みを紹介し、健康被害や心の傷など今日も続く原爆被害の実態を明らかにする。


 C テーマと主な内容

フロア テーマ 主な内容
本館2階 8月6日のヒロシマ
・原爆投下(キノコ雲)
・爆心地
・都市の壊滅
(焼失、倒壊など熱線・爆風、高熱火災による影響を交えて)
・人の被害
(被爆直後の救援救護、行方不明の家族捜し、死亡者の火葬など)
・放射線(急性障害、黒い雨、入市被曝など)

被爆者
(魂の叫びの場)

遺品・被爆資料
(被爆した場所、犠牲者の状況、寄贈者の思い、資料の背後にある被 爆者や遺族の悲しみ)

市民が描いた原爆の絵(被爆者が見た被害、苦しみなど)


外国人被爆者


証言映像
(被爆者の証言、傷ついた被爆者の映像など)


(今日までの歩み)

原爆症による健康被害
・放射線による後障害、健康被害
・被爆者の心の傷
・佐々木禎子さんの生涯

フロア テーマ 主な内容
本館2階 平和記念公園の解説
平和記念公園とその設計理念などについて紹介
(丹下健三の設計理念)




(2) 本館展示構成案(事務局案)
    被爆の実相(人間の視点から)





(3) 8月6日のヒロシマ

@ 展示構成の考え方
   最初に「8月6日のヒロシマ」を紹介し、被爆直後の広島の全体像をありのままに伝える。このコーナーは、原爆投下・爆心地、都市の壊滅、人の被害、救援・
 救護、放射線で構成する。

A 展示項目と概要

番 号 展示項目 展示概要(事務局案)
1 原爆投下・爆心地
1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分の原爆投下をきのこ雲の写真で表現し、原爆による破壊(熱線、爆風、放射線)について概説する。また、爆心地付近のパノラマ写真や現物資料などから、爆心地の惨状について紹介する。

2 都市の壊滅
市内各地域の被害状況、県庁や市役所の破壊による行政機能の停止、電気や水道など都市機能の被害など都市の壊滅の全体像を紹介する。また、熱線を浴びた瓦や高熱火災によるガラスの溶融塊など、多くの被爆資料を展示し、都市の惨状を表現する。

3 人の被害
原爆による熱線、爆風、放射線の影響を瞬時に受け、傷つき、亡くなった住民、動員学徒、義勇隊、軍関係者など、人々の被害の全体像を紹介する。また、焼け焦げた遺体、川に浮かぶ遺体、逃げ惑う負傷者など、想像を絶する被害の様子を展示する。

4 救援・救護
被爆直後の混乱の中で始まった救援・救護活動を治療の状況、救護所内部の惨状、遺体を荼毘に付す様子などを交えて紹介する。また、市周辺や県外からの救護班の活動、肉親を捜して市内に入る人々の様子なども展示する。

5 放射線
(急性障害・黒い雨・入市被爆)

被爆から短期間に現れた火傷や外傷の他、下痢、脱毛、皮膚の出血斑点などの急性障害について説明し、多くの人が亡くなったことを紹介する。また、黒い雨や被爆後の入市による放射線の影響について紹介する。





(4) 被爆者(魂の叫びの場)
 
  @ 展示構成の考え方
     原爆被害の全体像を一望した来館者に対して、「被爆者」に主眼を置いた展示により、一人一人の被爆者の被害の実態、失われた命の尊さ、被爆者や
   遺族の苦しみ・悲しみなどを紹介する。また、市民の被害のみならず、当時、広島にいた朝鮮半島や中国大陸からの人々など外国人被爆者の存在につい
   ても紹介する。

  A 展示項目と概要


展示項目 展示概要(事務局案)
魂の叫びの場 遺品・被爆資料
さまざまな職業や年代の人たちの遺品・資料を展示する。資料一点、一点に詳しい説明文をつけ、被爆状況や家族の思いなどを伝える。

市民が描いた原爆の絵
遺品や被爆資料とも関連させながら、市民が描いた原爆の絵を展示する。

外国人被爆者
朝鮮半島や台湾からの人々、東南アジアからの留学生、米軍捕虜など外国人被爆者について概説し、遺品や市民が描いた原爆の絵、証言などを交えてその実態を展示する。

証言映像
遺品・被爆資料と関連させながら証言映像を活用する。




(5) 被爆者(今日までの歩み)

  @ 展示構成の考え方
     被爆者の今日までの歩みを紹介し、健康被害や心の傷など今日も続く原爆被害の実態を明らかにする。後障害の代表的な例として、佐々木禎子さんの
   生涯を、現行の展示構成を活用しながら紹介する。

  A 展示項目と概要

展示項目 展示概要(事務局案)
今日までの歩み 後障害
(佐々木禎子さんの生涯)

1945年(昭和20年)末までに、急性障害は、ほぼ終息したが、原爆による影響は、これで終わることはなく、ケロイドなどさまざまな障害を引き起こしたことを展示する。合わせて原爆小頭症の紹介を通じて、放射線が胎児にも影響を及ぼしたことを展示する。また、原爆による後障害の代表的な例として、被爆から10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんの生涯を紹介し、原爆の放射線の恐ろしさを展示する。

被爆者の心の傷
放射線による健康被害だけでなく、援護の不足による生活の苦しみ、自身の被爆体験や家族を失った悲しみや発病の不安などによる心の傷など、今日まで被爆者が直面してきた困難について展示する。





(6) 平和記念公園の解説

  @ 展示構成の考え方
    本館ギャラリーから望む平和記念公園の眺望を生かし、丹下健三氏による平和記念公園の設計から完成までを展示する。また、原爆ドーム、原爆死没者
  慰霊碑などについても紹介する。
 
 A  展示項目と概要

番 号 展示項目 展示概要(事務局案)
1 被爆前後の中島地区
現在の平和記念公園一帯は、被爆前は、多くの商店や住宅が立ち並ぶ地域であり、原爆により大きな被害を受けたことを中島地区の復元地図や写真などで展示する。

2 平和記念公園の設計から完成まで
被爆後、廃虚となった中島地区が広島平和記念都市建設法によって平和記念公園に整備され、平和記念資料館などが建設される過程を、公園の設計者である丹下健三氏の理念を交えて展示する。

3 原爆ドームと原爆死没者慰霊碑
本館ギャラリーから望むことができる原爆ドームと原爆死没者慰霊碑について、原爆ドームは保存運動や世界遺産登録、原爆死没者慰霊碑は建設過程などを展示する。また、館内から見ることができる他の慰霊碑や記念碑について地図パネルなどで紹介する。







資料2

                                   展示ゾーニング




資料3


展示手法の課題

項 目 基本計画での方針 事務局気づきなど
8月6日のヒロシマ 熱線・爆風・放射線の展示をどの程度行うか。
・最初に「8月6日のヒロシマ」を紹介し、被爆直後の広島の全体像をありのままに伝える。

・原爆による熱線、爆風、放射線が同時に都市を襲い、甚大な被害をもたらしたことを示す。

・原爆被害を人間(被爆者)の視点から紹介していく中で、熱線、爆風、放射線などの科学的な視点からの知見も織り交ぜて展示する。

・東館3階「核兵器の危険性」の「原爆の脅威」との展示の重複を避ける必要がある。

「原爆の脅威」を伝えるため、原爆の仕組みや、熱線、爆風、放射線による被害などを物理学や医学の視点から客観的に紹介する。

実物資料の群展示
・様々な被爆状況を示すため、より多くの被爆資料を展示する。

・焦土と化した市域の状況を伝えるため瓦やガラスビン、溶融塊などの資料はまとめて展示し、数量の多さで被害の状況を印象づける。

・現在は、「高熱火災による被害」のコーナーで資料の群展示を行っている。更新後は、「都市の壊滅」のコーナーでの展示が考えられる。
被爆者 外国人被爆者の展示について ・市民の被害のみならず、当時、広島にいた朝鮮半島や中国大陸からの人々など外国人被爆者の存在についても紹介する。
・外国人被爆者についての所蔵資料は少ない。特に多くの犠牲者を出したと言われている朝鮮半島からの人々の被害を示す写真・実物資料は、所蔵していない。韓国原爆被害者協会、韓国被爆者対策特別委員会、在日本朝鮮人総連合会などの関係機関を通じて新たに資料を収集する必要がある。

・導入展示や東館2階の「広島の歩み」のコーナーでの展示も含めて展示内容を検討する必要があるが、本館では、原爆の絵や被爆資料を中心として被害の実態を示す展示が考えられる。

「被爆者の今日までの歩み」の展示
・被爆者の今日までの歩みを紹介し、健康被害や心の傷など今日も続く原爆被害の実態を明らかにする。

・後障害や心の傷などを示す写真や現物資料は、所蔵資料が少ない。また、被爆者の思いや心の傷など写真や現物資料で表現することは難しい内容もある。体験記や被爆者の実態調査結果の活用などが考えられる。

・東館2階「広島の歩み」との展示の重複を避ける必要がある


都市が復興する一方で被爆者の支援が立ち遅れたことや苦労の中から被爆者自身が立ち上がり被爆者援護施策を求めていったことを紹介する。

共通 生々しさをどのように表現するか
・人間(被爆者)の視点から原爆の悲惨さを伝えるため、被爆者の遺品や被災写真、市民が描いた原爆の絵、被爆者証言映像など被爆の事実をストレートに伝える実物資料の展示を重視する。

・被爆した実物資料や被災写真などは資料自体が人間の視点からの被爆の実相を伝える強い力を持っていることから、過度の演出を抑えたシンプルな展示とする。

・「人の被害」や「救援・救護」のコーナーに人体被害の写真や市民が描いた原爆の絵を、数多く展示したり、大きく引き伸ばしたりするなど展示することが考えられる。

・被爆後の人の被害を撮影した映像なども活用する。
人体被害の写真や映像に対する、児童などへの配慮について
・凄惨な被爆の惨状を伝える資料については、基本的にはありのままを見せるべきであるが、児童などへの心理的な影響に配慮して、負傷した人々の写真、医学標本などについては、展示手法や場所を工夫するとともに、展示場所の予告などを行う。

・人体被害の写真は、基本的にはありのまま見せるが、児童などへの心理的な影響について考慮し、展示エリアを明確にし、事前に警告するなどの対応を工夫する。

・生々しさをどのように表現するかによって児童に配慮した展示手法が関係してくると思われる。
遺品・被爆資料の展示
・原爆被害の全体像を一望した来館者に対して、「被爆者」に主眼を置いた展示により、一人一人の被爆者の被害の実態、失われた命の尊さ、被爆者や遺族の苦しみ・悲しみなどを紹介する。

・犠牲者の遺品は、遺影や被爆場所、犠牲者の状況、寄贈者の思いなどを合わせて紹介し、一人ひとりの命の存在や遺族の悲しみなどを伝える。

・被爆した衣類などは、被爆の状況や身につけていた人を想像させるため、立体的な展示も検討する。

・基本計画では、「被爆者」のコーナーで、遺品・被爆資料の展示を明記しているが、「8月6日のヒロシマ」の「人の被害」のコーナーでも遺品・被爆資料の展示が考えられる。

・現在、新着資料展や収蔵資料展では、資料の詳しい説明文に加えて遺影を展示しており、こうした展示手法も考えられる。

・3人の中学生の遺品など、衣類の中で、長期間にわたって展示を行っている資料は、資料の劣化の恐れもある。新しい資料の展示などを検討する必要があると思われる。
レンガ模型・ジオラマ模型
・本館(被爆の実相)では、実物資料の展示を中心としたありのままを伝える展示とするため、撤去や代替展示が望ましい。

・現在のジオラマ模型について、修学旅行生などから衝撃を受けたという声もある。
パノラマ模型

・現行のパノラマ模型はいずれも撤去し、導入展示に新たな模型を設置することが望ましい。

・広島上空の航空写真、パノラマ写真は、被害の大きさを一望できるため、導入展示または本館の展示に使用する。

・一瞬にして都市が壊滅したことを一見して理解できることから、パノラマ写真とセットで展示するなど効果的な配置が望ましい。


・基本計画の段階では、本館に設置し、じっくりと観覧できるようにするという意見もある。設置場所は設計の段階で決定する必要がある。本館に設置する場合は、「都市の壊滅」のコーナーでの展示が考えられるが、大型資料の配置や展示スペースを考慮にいれながら検討する必要があると思われる。
リトルボーイ模型
・被爆の実相の展示ではなく、導入展示や原爆の構造や仕組みを理解するための資料としての展示が望ましい。

・導入展示、東館3階「核兵器の危険性」の中での展示が考えられる。
人影の石 ・特になし
・原爆の熱線による影響、人の被害を示す資料であり、展示更新後も、本館に継続して展示する。

「爆風による被害」のコーナーの「山形に持ち上がったレンガ塀」「ゆがんだ鉄扉」など大型資料の活用 ・本館や東館3階の「原爆の脅威」での活用が考えられる。
・本館に展示する場合は、「都市の壊滅」のコーナーでの活用が考えられるが、展示スペースを見ると現在展示している大型資料をすべて展示することは難しいのではないかと思われる。展示資料の選択が必要である。

放射線量測定器 ・特になし
・基本計画の新たな展示手法として、疑似体験・実験を示しており、「児童・生徒が関心を示しやすく学習の動機付けになることが期待されるが、一方、被爆の実相そのものや核兵器の危険性を正確に伝えることには困難な面もあることを考慮して使用を検討する。」と記している。

・使用する場合は、東館3階「核兵器の危険性」の「原爆の脅威」のコーナーでの展示が考えられる。

市民が描いた原爆の絵
・「市民が描いた原爆の絵」は、本館を中心に活用する。

・被爆直後の被災写真や記録映像が少ない中で、被爆者が体験した個々の被爆の実相を伝える貴重な資料であるため、本館の常設展示として主動線上に配置するが、扱い方や枚数・種類などは、全体構成の中で検討する。

・現在、原画は、約3,600点を所蔵。東館地下1階展示室(3)で、テーマを決めて1年ごとに約50点ずつ展示している。本館に10点の複製を展示している。

・展示更新後は、東館地下1階の展示室(3)は、ビデオシアターの設置を検討しているため、現在のような形態で市民が描いた原爆の絵を展示することは難しくなる。

・東館3階の導入展示との関係を調整。

・原爆の絵は、大きさや素材も作品によって違う。

・原画を長期間、展示すると作品の劣化の可能性がある。

・人の被害を予見する展示は、本館展示と重複しないように配慮しながら、証言や原爆の絵などメッセージ性の強い資料を紹介する。

被爆者証言ビデオ ・被爆者の個々の被害状況を知ることができる資料であり、来館者の感情に訴えることができることから、被爆の実相の展示に活用することや、ヒロシマからの象徴的なメッセージとして活用する方法も考えられる。

・証言はストーリー性があり編集困難なものも多いため、情報資料室などで被爆者証言ビデオ全編が観覧できるようにする。


・特定の遺品・被爆資料に関連する証言をその資料のそばで閲覧できるように配置することも考えられる。

・現在、本館では、北側のギャラリーで証言ビデオの上映行っている以外は、音声が流れる展示を行っていない。遺品・被爆資料の展示コーナーに音声が流れる展示が可能かどうか、展示室内の雰囲気などを考慮にいれながら展示手法を検討する必要があると思われる。

・展示室内に配置すると、現状のように椅子に座るなど、じっくり証言ビデオを視聴してもらう環境を整備することは、スペースの問題から難しいと思われる。