第3回広島平和記念資料館展示検討会議

平成22年(2010年)12月3日(金)午後2時〜
広島国際会議場3階 研修室(3)



                  次    第

                  1 開会

                  
                  2 議題 1 本館展示
 
                      資料1  展示ゾーニング図
                      資料2  本館展示案
                      資料3  外国人被爆者、後障害に関する資料

                  3 議題 2 導入展示の構成
                       資料4  導入展示の構成


                 4 閉会



資料1

展示ゾーニング図


資料2


本館展示案

@ 原爆投下・爆心地

   


展示ストーリー
郊外から爆心地へ向かう。

展示資料


(被爆資料)
・爆心地(島病院)付近で収集された被爆資料

(写 真)
・米軍が上空から撮影したきのこ雲
・地上から撮影されたきのこ雲
・被爆当日(御幸橋)の写真
・爆心地付近のパノラマ写真
・爆心地(島病院)の写真

(原爆の絵)
・被爆当日に避難する人々の情景を描いた絵
・爆心地近くの情景を描いた絵

(その他)
・燃料会館の地下で被爆した野村英三さんの手記「爆心に生き残る」


展示整備上の制約

・通路幅 1.8m〜2.6m
・大型資料の配置は困難







A 都市の壊滅・人の被害
 

  


展示ストーリー

 
  爆心地を中心に市内一円の街の惨状、人々の被害を再現し、人々の「むごい死」と想像を絶する負傷者の状況、市民の生活基盤の破壊を伝える。街の惨状では、「人影の石」、「鉄骨の梁」、「ゆがんだ鉄扉」などの大型資料を配置し、高熱火災の影響を受けた資料の群展示を行う。


展示資料


(被爆資料)
・熱線、爆風、高熱火災の影響を受けた資料
・亡くなった人々の遺品

(写 真)
・被爆後の市内の各地域の被害状況を撮影した写真
・建物に対する熱線、爆風の影響を撮影した写真
・死体、火傷など負傷した人々の写真
・焼け焦げた市内電車、全壊全焼した県庁など都市機能の破壊を示した写真

(映 像)
・廃虚の街並み(日本映画社撮影映像)

(原爆の絵)
・死体、負傷者を描いた絵

(その他)
・市内の全壊・全焼地域などを示した図表
・動員学徒の出動場所や被害の状況を示した図表


展示整備上の制約








B 救援・救護

  


展示ストーリー


  被爆直後の混乱の中で行われた救援・救護活動と救護所の惨状を紹介する。救護所内部の様子は、治療を行った側、治療を受けた側の両方の視点から展示する。

展示資料



(被爆資料)
・救護かばん、担架、救護班の腕章、罹災証明書、医薬品などの資料
・救護所で亡くなった人々の遺品
・似島で発掘された遺品

(写 真)
・負傷者の救護・収容や救援物資の搬入、だびに付すため遺体を運ぶ様子を撮影した写真
・収容された人々や手当てを受ける様子など救護所内部を撮影した写真
・収容者名簿で肉親を捜す人々、伝言板を撮影した写真

(映 像)
・負傷者と救護所内部(日本映画社撮影映像)

(原爆の絵)
・負傷者への食糧配給の様子を描いた絵
・救護所内部の様子を描いた絵

(その他)
・被爆者の郊外への避難と市外からの救援の状況を示した図表



展示整備上の制約








C 放射線

  


展示ストーリー
 
  放射線による人体への深刻な影響について、急性障害、黒い雨、入市被爆の3つの項目で展示する。急性障害では、症状の実態の他、当初、症状が赤痢などの伝染病と認識されたこと、その後、地元の医師や調査団の調査により、症状の実態や治療の指針がまとめられたことを合わせて紹介する。

展示資料

(被爆資料)
・抜けた頭髪、出血斑のある舌(複製)
・黒い雨あとが残った白壁、黒い雨のあとが残るスリップなど黒い雨を浴びた資料

(写 真)
・脱毛や出血斑など急性障害の症状を示す写真
・市内へ入市する人々を撮影した写真

(映 像)
・脱毛した姉と弟など急性障害の症状(日本映画社撮影映像)

(原爆の絵)
・急性障害の人々を描いた絵
・黒い雨を描いた絵

(その他)
・時期別に急性障害の症状を示す図表
・残留放射線について説明した図表
・黒い雨の降雨範囲を示した図表


展示整備上の制約







D 魂の叫びの場

  


展示ストーリー

 さまざまな人々が亡くなったことを示すため、遺品・被爆資料を年齢別に展示する。また、一家全滅や外国人の被爆を伝える。

展示資料


(被爆資料)
・三輪車、中学生の学生服、遺髪、弁当箱、財布など亡くなった人々の遺品
・被爆した米兵の認識票など外国人被爆者の遺品

(写 真)
・被爆米兵の墓標を撮影した写真

(映 像)
・被爆者証言ビデオ(複数の被爆者の声をコラージュして紹介する)

(原爆の絵)
・外国人被爆者を描いた絵
・亡くなった人々を描いた絵(一つのテーマをもとに展示)


展示整備上の制約








E 被爆者の今日までの歩み

   


展示ストーリー
 
  ケロイドや白血病などの後障害、「原爆孤児」や被爆者への偏見・差別など社会的な問題、被爆者の心の傷など現在まで続く原爆の影響について展示する。


展示資料

(被爆資料)
・ケロイドの切片、急性白血病の骨髄などの臓器標本
・佐々木禎子さんが折った折り鶴、カルテなど禎子さんに関連する資料
・体内から摘出されたガラス片、異形の爪などの被爆資料

(写 真)
・ケロイド、原爆白内障について撮影した写真
・白血病(佐々木禎子さん)に関連する写真
・胎内被爆、原爆小頭症(畠中百合子さん)に関連する写真
・被爆後の苦しい生活を送る被爆者を撮影した写真
・肉親を失った子どもたち、「原爆孤老」を撮影した写真
・在外被爆者に関連する写真

(映 像)
・白血病(佐々木禎子さん)
・原爆小頭症(畠中百合子さん)

(その他)
・体験記をもとにした後障害で苦しむ人々や家族の証言
・がんの症状や発症についての図表
・体験記や被爆者への偏見や差別、被爆者の心の傷についての証言



展示整備上の制約

・西側の一部が狭い。(2.2m〜2.6m)



資料3

外国人被爆者、後障害に関する資料

外国人被爆者について

◎平和記念資料館の所蔵資料

項   目 平和記念資料館所蔵資料
朝鮮半島からの人々
・市民が描いた原爆の絵
・被爆者証言ビデオ

中国選抜留学生
・被爆者証言ビデオ
南方特別留学生
・留学生の寮である興南寮を営んでいた家族が住む住居から見つかった被爆した鉄瓶
・市民が描いた原爆の絵
・被爆者証言ビデオ
米兵捕虜
・被爆死した米兵捕虜の認識票、被爆死した米兵が生前使用していた飛行帽など
・米兵捕虜の墓を撮影した写真
・市民が描いた原爆の絵
外国人神父
・市民が描いた原爆の絵
・被爆者証言ビデオ
・インタビュー映像(英語)


白系ロシア人

・わがなつかしの広島(市民が描いた絵)
・インタビュー音声テープ

◎現在の展示状況
  外国人被爆者について、文字パネルによって説明している。
  本館ギャラリーでは、韓国人被爆者の証言ビデオを上映している。


◎各機関への資料調査
  韓国原爆被害者協会、韓国被爆者対策特別委員会、在日本朝鮮人総連合会を通じて被爆資料の提供を呼びかけている。また、陜川原爆被害
者福祉会館の職員が平和記念資料館を訪問したのを機に被爆資料の収集を呼び掛けるチラシを配布し、協力を依頼した。



後障害に関する平和記念資料館所蔵資料と現在の展示状況

項  目 平和記念資料館所蔵資料 現在の展示状況
ケロイド
・ケロイド標本

・ケロイドの症状を撮影した写真
・昭和32年、昭和34年広島原爆病院整形外科入院日誌コピー
(平成13年の「放射線による被害」の展示更新の際に収集)
文字パネル、写真、ケロイド標本による展示
原爆白内障 ・白内障患者の目を撮影した写真
文字パネル、写真による展示
白血病 ・白血病の骨髄標本
・正常な骨髄と急性白血病の骨髄を撮影した写真
・佐々木禎子さん関連資料(カルテ、折り鶴、写真など)
・昭和35年広島原爆病院内科入院日誌コピー
(平成13年の「放射線による被害」の展示更新の際に収集)

・文字パネル、写真、被爆時の年齢と白血病の発生との関係を示した図表、骨髄標本による展示
・佐々木禎子さん関連資料をもとに年表や写真をもとにした映像を交えながら禎子さんの生涯を展示 
 

悪性腫瘍
・所蔵資料なし 文字パネルによる展示

胎内被爆、小頭症

・畠中百合子さん関連資料
(母親の体内から摘出されたガラス片、写真、映像、被爆者証言ビデオ)
・きのこ会会報
文字パネル、畠中百合子さんの写真をもとにした映像による展示

*平和記念資料館所蔵資料のうち下線を引いた資料は、現在、展示に活用している。


後障害に関する資料

◎後障害に関する資料を所蔵する機関

機関名 所蔵資料
広島大学原爆放射線医科学研究所
・被爆した人の白血病やがんなどの臓器標本、組織標本
・米国返還資料を中心とした後障害の写真

財団法人放射線影響研究所

・被爆者健康診断(当初2万人)の検査結果並びにその集計結果
・被爆者についての疫学調査結果

財団法人広島原爆障害対策協議会

・広島在住の被爆者を中心とした約18万点に及ぶカルテ、検診データ
・在米被爆者、在韓被爆者の検診データ
・病理標本のプレパラート
・被爆者援護に関する資料

広島赤十字・原爆病院

・病院で治療を受けた被爆者のカルテ
・骨や臓器などの標本
・白血球数を調査した文書資料など後障害について研究を行った関連資料


◎更新後の展示
  白血病以外のがん(固形がん)についての展示を充実させ、被爆から65年を経た今も、放射線による影響は続いていることを示す。また、現在の
展示のような症例の紹介だけにとどまらず、手記などを通して、障害に苦しむ人々の思いや家族の思いも紹介する。
  染色体異常や被爆線量による疾病の発症リスクについては、東館3階「原爆の脅威」のコーナーで科学的知見から放射線の人体に対する影響に
ついて展示する。


◎調査資料をもとにした展示手法
・被爆によって白血病とがんがどれだけ発生したかを模式図を用いて解説する。
・正常な臓器の模型と白血病やがん患者の臓器標本を対比させる。
・カルテをもとに、いつ頃、どのような症状が発症したか示す。また、現在も放射線により「がん」など複数の病気が発症していることを紹介する。


資料4

導入展示の構成(基本計画より)
    

(1)基本計画での整備方針と展示内容
 
@ 目的
 本館の展示(人間の視点からの被爆の実相)の観覧に当たって心理的な準備ができ、また、展示を通して館からのメッセージを受け止め、原爆や平和について考えられるようにすることを目的とする。
 
A 整備方針
○5分程度の観覧時間で、展示の全体像を把握できる簡潔なものとする。
○原爆には、他の戦争被害を超える残虐性、非人道性があることを示す。
○写真、映像、模型など視覚的に伝わる展示手法を中心に考える。
○ヒロシマで何が起こったか、核兵器がいかに残虐で非人道的な兵器であるか、人類は現在も核兵器の脅威にさらされていることなどについて、館からのメッセージを押し付けではなく、観覧者自身で確認してもらうものとする。
○3階の導入展示へ向かうエスカレーターの幅員や併用階段の整備について検討する。また、エスカレーターの降り口となる部分の空間は、滞留を示を避ける。
 
    
B 展示内容
○展示は、「広島と原爆」、「平和記念資料館からのメッセージ」の2項目で構成する。
○来館者の多くは、当時、広島で何が起こったのかを知ることを目的としていることから、導入展示は、「広島と原爆」からスタートし、被爆前の市民生活と原爆で廃虚となったヒロシマを紹介する。
 
○一瞬にして、都市が壊滅し多くの生命が失われたことを示すため、「廃虚のヒロシマ」は、建物の被害だけでなく、多数の人間への被害を予見させる展示とする。
 
○人の被害を予見する展示は、本館展示と重複しないように配慮しながら、証言や原爆の絵などメッセージ性の強い資料を紹介する。
○平和記念資料館からのメッセージは、資料館の設置目的、展示構成の概要、観覧者へのメッセージなどを文字や図表パネル、映像などで展示する。

C テーマと主な内容


フロア
テーマ 主な内容
東館3階
広島と原爆

・戦前の市民生活
・原爆の投下
・廃虚のヒロシマ

平和記念資料館からのメッセージ

・設置目的
・展示内容
・観覧者へのメッセージ(問題提起)






導入展示(基本計画展示整備イメージ図より)
    

                                   

(2) 導入展示構成案(事務局案)


展示項目と概要

テーマ 展示項目 展示概要
広島と原爆
戦前の市民生活

被爆前の中島地区の写真、「わがなつかしの広島」などの絵、発掘された現物資料などを通して、被爆前は、街並みが広がり多くの人が暮らしていたことを展示する。また、写真や「わがなつかしの広島」などの絵を通して戦時色が徐々に濃くなっていく要素も展示する。

原爆の投下

テニアン島を飛び立つエノラ・ゲイの映像、被爆前の広島の空撮写真、きのこ雲の映像を基に、広島に1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分に原子爆弾が投下されたことを展示する。

廃虚のヒロシマ

被爆前後のパノラマ写真などの対比、被爆後の広島の空撮写真を通して街が原爆により一瞬にして廃虚となったことを展示する。また、被爆者の証言や市民が描いた原爆の絵などにより、本館展示の人の被害を予見させる展示を行う。
平和記念資料館からのメッセージ

設置目的
展示内容
観覧者へのメッセージ
(問題提起)

館の設置目的、常設展示構成の概要、観覧者へのメッセージなどを文字や図表パネル、映像などで展示を行う。



展示手法の課題
・パノラマ模型の設置について
・一定の時間内に多くの人が見ることができるような大型スクリーンの設置について