和文機関紙「平和文化」No.176, 平成22年10月号
“平和について思う”

若者に平和を問う 〔遺稿〕

広島国際青少年協会 総主事 林 壽彦
林壽彦
プロフィール 〔はやし としひこ〕
民間青少年団体の指導運営に携わって49年、青少年活動、青少年教育専門家としてこの道一筋に今日に至る。
昭和43年、日独文化協定に基づき、初めて日本青少年代表を全国から選抜し、その青少年使節団の指導監督として訪独。 その際のハノーバー市長との出会いが今日の広島ハノーバー両市青少年交流に発展。 両市は昭和58年姉妹都市提携調印を行った。 このほか、ドイツ国営北ドイツ放送協会と広島テレビ放送の姉妹提携の仲介など広島ハノーバーに関わる各種の交流提携に橋渡しの役を行ってきた。
本年(2010年)10月25日に逝去。享年79歳。

 簡単にいえば大人は汚い。 我田引水(がでんいんすい)という言葉があるが、大人は皆自分の所へ水を引こうとする。 しかし、若い人は自分の所に水を引く事をあまり考えないところに良さがある。 若い人たちが考える平和と、年をとった人たちが考える平和とは異なるものであり、戦争を知っている人たちの平和と、戦争を知らない人たちの平和もまた異なると思う。 戦争を体験した人たちは「あの苦しみを二度と繰り返してはならないから平和は大切である」と言い、戦争を全く知らない人たちは「平和だからいいじゃないか。難しく考えなくて、平和とはいいものだ」という感覚なのだろう。
 オリンピックを例にあげると、若い人がオリンピックに対して考えることと、年をとった人が考えることはまた異なる。
 モスクワオリンピックはいわゆる冷戦(れいせん)問題で日本も参加してない。 拒否して参加しなかった国が多くあった。 私はおかしいと思った。 オリンピックを純粋に考える前に政治的に、経済的に大人は考える。 しかし、私はテーマを提供して、若い人たちが純粋にオリンピックは必要であるのかというところから考えることは大事だと思う。 広島の秋葉忠利(あきば ただとし)市長と長崎の田上富久(たうえ とみひさ)市長とで平和の祭典としてのオリンピックを開こうと言った。 広島でオリンピックを開催するのはお金がかかるから反対だと言う人が出てきた。 商業的な問題と政治的な問題が出ているが、私は違った意味でオリンピック自体を政治や商業よりもっと根本的な問題、なぜ1都市で開かなければならないのかという事に疑問を抱いている。 実質、国が開催しているが、お題目(だいもく)としては1都市で開催する事になっており、今回の場合広島・長崎の共同開催はできないとなった。 そのため、長崎が辞退して協力するという事になった。 古代アテネの頃のような小規模のものであれば可能だろうが、今のように大きくなってしまっては1都市では開催できない。 国が動いて初めて開催できるのに、なぜそれを改(あらた)めないのか。 何かメリットがあるのではないかと勘繰(かんぐ)ってみたくなる。 お金のかからないオリンピックをつくろうといった上で、1都市で開催するなら話は分かる。 しかし、そのような方法をとらないのであれば、国のレベルで主催するという方法に変えるべきではないか。 オリンピックが発祥(はっしょう)した古代アテネのオリンピアで開催された素朴(そぼく)なオリンピックは非常に良いのではないかと思う。 オリンピックは縮小するのであれば、1都市でも開催できると思う。 そのような点を考えると、一つの転換期(てんかんき)として考えるいい材料になるのではないかと思う。 実際、広島が開催するとしたら、国が前面に出てくる事になり、純粋なものにはならない。
 国際会議と国際交流は両輪(りょうりん)であると私は言うが、スポーツもそうあるべきである。 しかし、大人の手にかかるとそれは崩(くず)されてしまう。 利益の上がる事柄に関しては、大人はみな手を挙げる。 利益が上がらない事柄になると、みなそっぽを向いてしまう。
 しかし、利益は上がらなくても、非常に大事なことは皆で支援すべきだと思う。 たとえば、平和市長会議の名前で核兵器廃絶を2020年までに実現しようと一生懸命言っているが、なくならないかもしれない。 だからこそ、なくなるようにしようと一生懸命なのである。 オバマ大統領がプラハ演説で核をなくすといっているが、オバマ氏自身、いつなくなるのかはわからない、まだまだ先の話であると言っている。 今核を持っている国がはたして2020年までに全て廃絶するかというと、とても難しいと思う。 しかし、だからと言ってやめてしまってはならない。 若いからこそ、核兵器をなくすためにどうしたらよいか、ということを考える人であってほしい。
青少年国際平和未来会議ヒロシマ2009の参加者とともに(林氏は前列右から6番目)

青少年国際平和未来会議ヒロシマ2009の参加者とともに
(林氏は前列右から6番目)

 ご生前のご功績を偲び、心よりご冥福をお祈りいたします。

(平成22年10月)

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