広島市では、長崎市と共同で、ニューヨーク、ジュネーブ、ウィーンの国連施設に、被爆資料や写真パネルなどで構成する常設の原爆展を開設しており、日々、各国政府の指導者をはじめ、世界中から多くの見学者が訪れています。
原爆展を通して、より効果的に被爆の実相を伝えるためには、案内役のガイドやガイドツアー担当職員に被爆の実相を共有していただくことが不可欠です。
このため、平和記念資料館では、国連3施設の見学ツアーガイドを広島に招しょう聘へいし、被爆の実相を理解するための「国連見学ツアーガイドのヒロシマ研修」事業を平成29年度に開始しました。
3回目となる今回は、ガイド6人を対象に、昨年11月30日(日)から12月4日(水)までの5日間、実施しました。
研修の内容は、講義の受講のほか、平和記念資料館の見学、慰霊碑や被爆遺構めぐり、被爆体験講話の聴講、ボランティアとの交流会、市内見学などです。
今回、初の試みとして、被爆体験証言者による講話の英語通訳を、証言者の娘である被爆体験伝承者が行い、母娘
(おやこ)で被爆の実相と平和への思いを届けました。
また、資料館の展示見学後に学芸員が展示コンセプトの決定や展示資料の選定の過程について受講者に話しました。
ここでは、展示物を案内するガイドとしての視点に立った質問が多く寄せられました。
受講者からは、「証言を聴き、人生観が変わるほどの強い衝撃を受けた」、
「広島の地でしかできない貴重な経験を得て、今後の自身の業務に大いに励みになった。ここで学んだことをツアーに反映させることで、核兵器廃絶の必要性をよりリアリティを伴って訴えることができる」との感想が寄せられました。
今後もこの事業を中心に、国連各施設における原爆被害に関する展示の充実や、各施設で行われるツアーでの被爆・核兵器廃絶に関する解説内容の拡充を図り、国際社会での“ヒロシマの心”の発信力の強化に努めていきます。
将来的に国連施設に被爆体験証言者と資料館職員を派遣し、証言と被爆の実相に関する講義を行う「出張研修」を実施することも検討しています。
(平和祈念資料館 啓発課)