和文機関紙「平和文化」No.206, 令和3年3月号

核兵器禁止条約が発効しました!

 核兵器の非人道性に対する認識の世界的な広がりや、核軍縮の停滞などを背景に、2017年7月7日、国連加盟国の6割を超える122か国が核兵器廃絶に向けた明確な決意から賛成票を投じ、「核兵器禁止条約」が採択されました。 それから3年余り経った2020年10月24日、批准国が発効要件である50か国に達し、その90日後の2021年1月22日に発効しました。

1 条約の主な特徴

⑴ 被爆者(ヒバクシャ)に言及 (前文)

 被爆者(ヒバクシャ)の苦しみと被害に触れ、人道の諸原則の推進のために、核兵器廃絶に向けて被爆者などが行ってきた努力にも言及しています。

⑵ 核兵器の開発、実験、使用、使用の威嚇などを禁止 (第1条)

 核兵器の開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移譲、使用、使用の威嚇などの活動を、いかなる場合であっても禁止しています。

⑶ 核保有国の加盟についても規定 (第4条)

 定められた期限までに国際機関の検証を受けて核兵器を廃棄する義務を果たすことを前提に、核保有国も条約に加盟できると規定しています。

⑷ 条約について話し合う会議を開催 (第8条)

 その運用などについて話し合う締約国会議や再検討会議の開催について定めており、いずれの会議にも、条約に加盟していない国やNGOなどをオブザーバーとして招請するとしています。

2 今後の動き

 2021年1月22日の条約発効から1年以内に、第1回締約国会議が開催され、条約の運用について検討される予定です。 現在、オーストリアのウィーン市での開催が検討されています。

3 今後の課題

 今後の課題は、この条約を実効性の高いものとしていくために、先ずは条約の署名・批准国を一層拡大していく必要があります。 そして条約に反対している核保有国やその傘の下にある国に対して、締約国会議への参加を通じて条約の効果的な運用に向けた議論への参画を促し、可能な限り早く条約への加盟を求めていかなければなりません。
 当財団に事務局を置く平和首長会議は、165か国・地域の8,000を超える加盟都市のネットワークをさらに拡大するとともに、市民一人ひとりが日常生活の中で平和について考え、行動することを奨励する「平和文化」を市民社会に根付かせて平和意識を醸成する取組などにより、平和への大きな潮流を作り、核兵器のない世界の実現に向けて為政者の政策転換を後押ししていきます。
発効記念行事を開催
 核兵器禁止条約が1月22日に発効したことを受け、翌23日(土)に、広島・長崎・東京の3都市をオンラインで繋(つな)ぐ記念行事「核なき世界へスタート!」を平和首長会議と市民団体が協働して開催しました。
 東京会場では、条約発効に尽力した国連・関係団体の代表者等のビデオメッセージを放映しました。
 広島会場では、プログラムの最初に、平和首長会議会長である松井(まつい)広島市長が、湯﨑(ゆざき)広島県知事、被爆者代表2人と共に登壇し、「核兵器はいらないという声を世界に広げ、みんなで平和な共生社会を作っていきましょう」と訴えました。 次に、若者5人が、被爆者の方々の思いを受け継いで行っている自身の平和活動を発表し、互いの活動に対する感想や今後の抱負を語り合い、「私たち若い世代が被爆者の思いを継承し、行動を起こしていかなくてはならない」と決意を新たにしました。 続く平和団体代表者のビデオメッセージの放映の後、被爆体験記朗読ボランティアがギターの演奏をバックに原爆詩を朗読しました。 最後に、小学生による平和の歌の合唱のビデオ放映でプログラムを締めくくりました。
「核なき世界へスタート!」広島会場の参加者
「核なき世界へスタート!」広島会場の参加者
 長崎会場では、若者や被爆者団体代表へのインタビューの後、核兵器禁止条約をより国際社会に浸透させるための方法について、長崎市長等が対談しました。
 この記念行事の最後には、オンラインで繋がった全会場の参加者が、今後も共に核兵器のない世界を目指し、邁進(まいしん)していこうと誓い合いました。
 平和首長会議では、同条約の発効を新たなスタートとして、引き続き加盟都市と共に様々な取組を通じて、核兵器廃絶に向けた国際世論の醸成・拡大を目指していきます。
(平和首長会議・2020ビジョン推進課)
公益財団法人 広島平和文化センター
〒730-0811 広島市中区中島町1番2号
 TEL (082)241-5246 
Copyright © Since April 1, 2004, Hiroshima Peace Culture Foundation. All rights reserved.