国立広島原爆死没者追悼平和祈念館では、被爆体験記や原爆詩を読み語ることによって、多くの人々が被爆者の記憶や思いを共有し、次の世代へ継承していくことを目的として、「被爆体験記朗読会」を開催しています。
朗読会では、原爆被害の概要を映像で紹介した後、被爆体験記朗読ボランティアが被爆体験記・原爆詩の朗読を行い、最後に参加者自らが原爆詩を朗読します。
昨年11月21日(日)には、平和文化月間の行事の一つとして、11:00からと14:30からの2回、定期朗読会を開催しました。
広島市にお住まいの方や、県外から旅行で来られた方、日本に住む米国出身の方など、のべ15人の方が参加しました。
参加者の声
げんしばくだん (坂本はつみ)
げんしばくだんがおちると
ひるがよるになって
人はおばけになる
出典:『原子雲の下より』青木書店
今回で朗読会への参加が3回目になるという保育士の女性は、昭和27年(1952年)に刊行された詩集『原子雲の下より』掲載の、小学校3年生の坂本はつみ
(さかもと はつみ)さんが書いた原爆詩「げんしばくだん」が特に印象に残っているそうです。
げんしばくだん (坂本はつみ)
げんしばくだんがおちると
ひるがよるになって
人はおばけになる
出典:『原子雲の下より』青木書店
「この子は、おばけに会ったことがないのに、被爆して傷ついた人々をおばけに例えています。そのような言葉でしか表現できないほどの恐ろしさだったのだろうなと思います。朗読会に参加することで心が動くと思います。時間も40分と、参加しやすい長さなので、是非いろいろな人に聞いてほしいです」と、話してくださいました。
ボランティアの声
被爆体験記朗読ボランティアの松尾洋子
(まつお ようこ)さんにお話を伺いました。
被爆体験を伝えたい
私は平和記念式典で「平和への誓い」を述べる小学生たちが参加する、「ピースサミット 平和の意見発表会」の司会を26年前から務めています。
「子どもたちがこんなに広島のことや平和のこと、身近なことを考えているのに、私は何をしているのだろう」と背中を押される思いがしていました。
そんなときに「被爆体験記朗読ボランティア」の募集を知り、朗読を通じて、被爆体験を伝えていこうと思い応募しました。
平成16年(2004年)に、第1期生として活動を始めました。
ことばを心に響かせる
被爆者の方々は、私たちには想像もできないような体験や思いをされたと思います。
被爆者の心に寄り添い、被爆体験記・原爆詩を繰り返し読み、言葉として発する。
それが聞いてくださる方の心に響けばいいなと思って活動しています。
「こんな思いは他の誰にもさせてはならない」この大きくて優しいメッセージを、受け取った私たちが、伝え続けていかなければならないと思っています。
朗読は奥が深いものです。
行間や「、」と「。」の違いの中にも、被爆者の方の思いが込められています。
それをいかに私たちがくみ取って伝えられるか。
これからも学び続けていきたいと思います。
(原爆死没者追悼平和祈念館)