国立広島原爆死没者追悼平和祈念館は平成14年(2002年)8月1日に開館し、今年で20周年を迎えます。
開館以来、当館は原爆で亡くなった方のお名前やご遺影を登録・公開してきました。
登録の際に、ご遺影とともに家族写真が寄せられることも多く、これらを大切に保管してまいりました。
このたびの特別展示では、家族写真の中から、被爆前に撮影された約200枚を選び、高さ約8m、円周約55mの平和祈念・死没者追悼空間に展示します。
また、体験記閲覧室では、それら家族写真の中から6家族に焦点を当て、それぞれの家族の物語を紹介します。
関連する体験記等もあわせて閲覧できます。
その6家族の中から、今回の特別展示のチラシに掲載させていただいた今岡
(いまおか)家についてご紹介します。
写真は昭和16年(1941年)に撮影されたものです。
中央に写っている笑顔の女性がシズコさん、抱っこされている男の子は、弟の義夫
(よしお)さんです。
昭和20年(1945年)8月6日、シズコさんは自宅で、義夫さんと父の新一
(しんいち)さんとともに被爆します。
姿が見えなくなった義夫さんを、父、新一さんは名前を叫び続け、懸命に探しました。
被爆時たまたま縁側にいた義夫さんは、その後、全身に火傷を負った姿で見つかります。
意識がはっきりしていたために、3日間苦しみ続け、9日に息を引き取りました。
はかない9年間の命でした。
新一さんは泣きながら息子を荼毘
(だび)に付し、骨上げの際には、悲しみのあまり義夫さんの奥歯を一本、思わず飲み込んでしまったそうです。
当館が所蔵しているシズコさんの体験記からは、被爆時のさらに詳しい様子を知ることができます。
原爆の後も大切に残されてきた家族写真。
こちらを見つめる一人一人のまなざしから、人の命だけでなく、家族の絆
(きずな)さえも一瞬にして奪った原爆の恐ろしさと、平和の尊さを感じ取っていただければと思います。
特別展示のほか、研修室3では過去の企画展の映像作品を上映します。
(期間中不定期開催。詳細は当館までお問い合わせください。)
【お問い合わせ】
国立広島原爆死没者追悼平和祈念館
TEL(082)543-6271
FAX(082)543-6273
ホームページURL:hiro-tsuitokinenkan.go.jp