和文機関紙「平和文化」No.210, 令和4年10月号

被爆77年 平和記念式典

―他者を威嚇し、その存在をも否定するという行動をしてまで自分中心の考えを貫くことが許されてよいのでしょうか―
 被爆から77年目の8月6日(土)、広島市の平和記念公園で、市主催の平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)が行われ、被爆者や28都道府県の遺族代表の他、核兵器国のアメリカ、イギリス、フランスを含む99か国と欧州連合(EU)の大使や代表など、およそ三千人が犠牲者の冥福と世界恒久平和を祈りました。
 式典は午前8時に始まり、最初に松井(まつい)広島市長と遺族代表2人が、この1年間に亡くなられたことが確認された4,978人の氏名が記帳された2冊の原爆死没者名簿を、原爆死没者慰霊碑の中の奉安箱に奉納しました。 これで名簿登録者総数は333,907人、名簿総数は123冊となりました。
 続いて佐々木(ささき)広島市議会議長の式辞、各代表による献花の後、原爆が投下された8時15分に、遺族代表の米田慎志(よねだ しんじ)さんと、こども代表の舛本陽毬(ますもと ひまり)さんが平和の鐘をつき、参列者全員が1分間の黙祷(もくとう)を捧(ささ)げました。
 この後、松井市長が平和宣言を読み上げました。 市長は、ロシアによるウクライナ侵攻で、核兵器を使う可能性が示唆されていることにふれ、核保有国の為政者は、是非とも被爆地を訪れ、核兵器使用の結末を直視して、国民の生命と財産を守るためには、核兵器の廃絶以外に解決策は見いだせないことを確信していただきたいと訴えました。 また、とりわけ、来年、広島で開催されるG7サミットに出席する為政者には、このことを強く期待すると述べました。
平和宣言を読み上げる松井市長
平和宣言を読み上げる松井市長
 そして日本政府には、開催中のNPT再検討会議での橋渡し役を果たすとともに、次回の締約国会議に是非とも参加し、一刻も早く締約国となり、核兵器廃絶に向けた動きを後押しすることや、平均年齢が84歳を超え、心身に悪影響を及ぼす放射線により、様々な苦しみを抱える多くの被爆者に寄り添い、被爆者支援策を充実することを強く求めました。
 続いて、こども代表のバルバラ・アレックスさんと山﨑鈴(やまさき りん)さんによる「平和への誓い」で、二人は「世界中の人の目に、平和な景色が映し出される未来を創るため、私たちは、行動していくことを誓います」と述べました。
 この後のあいさつで、岸田(きしだ)内閣総理大臣は、我が国は、いかに細く、険しく、難しかろうとも、「核兵器のない世界」への道のりを歩み、非核三原則を堅持しつつ、「厳しい安全保障環境」という「現実」を「核兵器のない世界」という「理想」に結び付ける努力を行っていくと述べました。 また、来年のG7サミットで、核兵器使用の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示し、G7首脳と共に、平和と国際秩序、そして自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値観を守るために結束していくことを確認するとの考えを示しました。
 今回の式典では、グテーレス国連事務総長が初めて参列し、あいさつを行いました。 事務総長は、深刻な核の脅威が、中東から、朝鮮半島へ、そしてロシアによるウクライナ侵攻へと、世界各地で急速に広がっていると述べ、核兵器保有国が、核戦争の可能性を認めることは、断じて許容できないとし、核保有国の指導者たちに、「核という選択肢を取り下げてください。永遠に。今こそ、平和を拡散させるべき時です。被爆者の方々のメッセージを聞き入れてください。もう二度と、広島の悲劇を引き起こさないでください。もう二度と、長崎の惨禍を繰り返さないでください。」と訴えました。
 式典で読み上げられた「平和宣言」と「平和への誓い」の全文は広島市ホームページから閲覧できます。
(総 務 課)
公益財団法人 広島平和文化センター
〒730-0811 広島市中区中島町1番2号
 TEL (082)241-5246 
Copyright © Since April 1, 2004, Hiroshima Peace Culture Foundation. All rights reserved.