
どうすることもできない
突然女の悲鳴が聞こえその方を見ると倒壊した家屋の二階の窓ぎわに髪をふり乱し両手をあげて助けを呼んでゐるのである。体は梁の下敷きとなり身動きもできないらしい、階下にも「助けてー」という声がする。然しその家屋からは既に火の手が上がってゐてどうすることもできない。生きながらにして焼かれるなんて、何んと言う悲惨なことであろう。此の世の中にこんな地獄の世界があろうとは。(『被爆体験-私の訴えたいこと(上)』NHK中国本部発行、1977年から)
- 絵に描かれた情景の日時:8月6日午前8時25分頃
絵に描かれた場所:爆心地からの距離1,400m/鷹野橋(大手町)
作 者:伊藤貫一(被爆当時40歳、絵を描いたとき69歳)