
水槽の中に折り重った死体 赤ちゃんを抱いた婦人の黒こげの死体
学校へ行っていた為両親と別々に被爆した私は翌七日朝七時宇品から比治山を越え幟町の私の家の焼跡へむかった。一面の焼野原で人影もまばら。私が始めて眞黒に焼けこげた死体を見たのは旧放送局入口横の水槽の中に折り重っている数体だった。それから四・五十米縮景園よりの路上に私は異様なものを見てギョッとした。近づいて見ると赤ちゃんをしっかり両手に抱いた女性らしき眞黒焦げの片足を上げた走る姿の立ったまヽの死体!
この人は一体誰だったのか。現在もなお鮮明に私の脳裏に残っている無残な光景である。
- 絵に描かれた情景の日時:8月7日午前8時頃
絵に描かれた場所:爆心地からの距離1,000m/広島中央放送局前の路上(上流川町、現在の幟町)
作 者:山縣康子(被爆当時17歳、絵を描いた時46歳)