全米市長会議総会への出席等のため米国を訪問
 平和首長会議の松井(まつい)一實(かずみ)会長(広島市長)及び小溝(こみぞ)泰義(やすよし)事務総長(本財団理事長)は、米国・ホノルル市で開催された第87回全米市長会議年次総会に出席し、核超大国である米国内で、平和首長会議の加盟都市の拡大及び都市・市民レベルの核兵器廃絶に向けた機運の醸成を図るための協力要請を行いました。
 併せて、オバマ前大統領の母校であるプナホウ・スクールで講演を行い、被爆の実相や被爆者の切なる思いを伝え、平和への思いを共有しました。
6月28日(金)
 小溝事務総長は広島市長の代理として、ホノルル市行政長官、伊藤(いとう)在ホノルル日本国総領事、ホノルル市と姉妹都市提携を結んでいる日本国内の3都市(宇和島(うわじま)市、茅ヶ崎(ちがさき)市、長岡(ながおか)市)の市長と共にケネディ元駐日米国大使との懇談会に出席しました。 小溝事務総長はケネディ元大使に、2016年のオバマ前米国大統領の来広に御尽力いただいたことへの謝意を伝えるとともに、平和首長会議の核兵器のない世界の実現に向けた活動に対して引き続き御支援・御協力をいただきたいと依頼しました。
 その後、日本国総領事館、ホノルル市、前述の3都市の代表者と共に、ホノルル姉妹都市交流サミットに出席しました。 出席者は、それぞれホノルル市との姉妹都市提携の経緯を紹介し、また、市の施策に姉妹都市交流をどう位置づけ、展開しているかについて意見交換を行いました。
 小溝事務総長は、ホノルルに広島出身の移民が多く定住していたことが姉妹都市提携の契機になったことなどを説明するとともに、平和首長会議が実施している事業を紹介し、取組に積極的に参加してもらうよう依頼しました。
 また、ジャックリーン・カバッソ本財団専門委員の呼びかけにより集まったハワイの平和活動家と意見交換会を行い、カバッソ専門委員と共に平和首長会議の活動を説明しました。
6月29日(土)
 平和首長会議の米国のリーダー都市であるデモイン市長が提案した、核兵器廃絶に向けた平和首長会議の取組を支持する決議文について審議する国際委員会に、小溝事務総長が出席しました。 決議案について、反対意見はなく全体審議の場に提案されることに決まりました。
 午前中の総会では、ケネディ元大使が講演しました。 父であるケネディ元大統領が、国を動かしているのは政府だけではなく、日々市民に向き合っている市長たちの努力によるところが大きいと考えていたこと、核なき世界を希求していたことを述べられ、また、オバマ前大統領の広島でのスピーチの「和解」と「道徳心の目覚め」という言葉の重要性や広島への思いを語られました。 その後、発言の機会を得た小溝事務総長は、オバマ前大統領の来広実現に向けて尽力いただいたことに対する謝意を述べ、今後の核なき世界に向けた平和首長会議の取組への協力を依頼しました。
 ホノルルに遅れて到着した松井会長は、小溝事務総長と共にハワイ日本人移民慰霊碑に参拝し、広島からハワイへ移住された方々の苦労を(しの)ぶとともに、第一次・第二次世界大戦の戦没者に黙祷(もくとう)(ささ)げました。
6月30日(日)
 松井会長と小溝事務総長は年次総会(3日目)に出席し、「アメリカの都市における100%再生可能エネルギーへの道」と題したセッションを傍聴しました。
 このセッションでは、ホノルル市のコールドウェル市長がスピーチし、その冒頭で2016年のオバマ前大統領の広島訪問について触れた後に、「その広島から市長がこの場に来ている。来年広島は原爆投下から75周年を迎えるが、広島や長崎のような惨劇は絶対に二度と起こらないようにしなければならない」と述べて、松井会長を紹介されました。 それを受けて松井会長がその場に起立して挨拶すると、出席者から歓迎の拍手が送られました。
 続く昼の総会で、松井会長はスピーチする機会を得ました。 全米市長会議会長であるサウスカロライナ州コロンビア市のベンジャミン市長から「松井市長は平和首長会議の会長として、カウニー デモイン市長を始めとする世界の加盟都市の市長と共に核兵器のない世界の実現に向けて国際世論を拡大するため、たゆみなく活動してきた。全米市長会議も平和首長会議と長年連携関係を築いてきたが、世界情勢が混迷を極めている今ほど平和首長会議の活動が重要かつタイムリーな時はない」と紹介され、登壇しました。
 松井会長は、平和首長会議の活動について説明した後、「被爆者たちは、平均年齢が82歳を超えた現在も、『こんな思いを他の誰にもさせてはならない』という信念の下、核兵器のない平和な世界が一日も早く訪れるよう訴え続けている」、 「核保有国が核戦力の近代化・機能向上のために費やしている予算は、本来市民の福祉や都市の基盤づくりなどのために、より建設的に使用され得るものである。市民の安心・安全な生活を守るために日々努力されている同志の皆様には、核兵器の使用によりその努力が無に帰すことにならないよう、核兵器のない世界の実現に向けて共に歩んでいただきたいと強く願っている」と述べ、大きな拍手を受けました。
全米市長会議年次総会でのスピーチ
 午後の「女性市長のリーダーシップ」のセッションでは、大統領選への出馬表明をしているハワイ州選出のギャバード下院議員のスピーチを傍聴しました。 ギャバード議員は、先の松井市長のスピーチと同様、核兵器の開発に多額の税金が費やされていることに言及し、「それらはハワイであれば老朽化してきたインフラ整備などに使われるべき予算である。このように国の安全保障の問題は市民の生活に直接影響するものであることを訴えるために自分は大統領選出馬を決めた」と述べられました。 スピーチ後に、松井会長はギャバード議員に挨拶をし、広島訪問及び平和首長会議との今後の連携を要請しました。
 その後、松井会長はハワイの新聞社からインタビューを受けました。 祖母が広島の被爆者であり、広島での取材経験も有する記者からは「家族に被爆者がいることは市長としての職にどのような関係があるか」などの質問があり、会長は「母親をはじめ親戚にも被爆者がいるが、みんな家族には自分の苦しんだ経験をあまり語りたがらなかった。市長になって多くの被爆者の方々と話す中で被爆体験や気持ちを聞き、より深く母親や親戚の思いについて理解できるようになった」と語りました。 また、インタビューの後半では、加盟都市であり、毎年全米市長会議において核兵器廃絶や平和首長会議への賛同決議を共同提案してくださっているオレゴン州ビーバートン市のドイル市長も同席しました。
 ドイル市長は、「市長が市民と共に国を動かしていくのだ。そのため平和首長会議は核兵器のない世界に向けて世界の国々で変化を起こしていく」と力強く述べられました。
7月1日(月)
 オバマ前大統領の母校であるプナホウ・スクールで、サマースクールに参加してアジアの歴史を学んでいる約130人の高校生を対象に、松井会長が講演を行いました。 会長は被爆の実相や被爆者の思いを伝え、「核兵器のない世界の実現への道を共に歩んでほしい」と述べました。 生徒たちはメモを取り
プナホウ・スクールでの講演
ながら熱心に講演を聴いた後で、会長に対し非常に多くの質問をしました。 「核兵器の廃絶は可能か」 「平和首長会議の会長として活動の成果をどのようにとらえているか」 「他国が原爆投下から学ぶことは何か」などの質問に対して、松井会長は、「原爆投下は人類全体にとって大変不幸な出来事だったが、再びその悲劇を繰り返さないために、意見の対立をいかに平和裏に解決できるか理性的に考え、持続可能な地球を残していくことが重要だ」と述べました。 また、生徒代表に神奈川県の中学生が折った千羽鶴を手渡し、平和への思いを伝えました。
 なお、全米市長会議年次総会では、午前中に行われたセッションで、核兵器廃絶と平和首長会議の取組に賛同する決議文が満場一致で採択されました。 これで決議文の採択は2006年から14年連続となりました。
 この日の年次総会では、ミシガン州ロチェスターヒルズ市のバーネット市長が全米市長会議次期会長就任スピーチを行い、「誰でも幸せに暮らす権利を有している。我々市長はそれを実現するために努力しなければならない」と訴えました。 その後、松井会長はバーネット新会長に大阪府の中学生が折った折鶴を手渡し、加盟要請を行いました。
 また、夕方からのホノルル市主催イベントでは、本年次総会まで全米市長会議会長を務め、今年の8月に平和都市宣言を行ったベンジャミン コロンビア市長や、被爆イチョウの苗木を育ててくださっているオレゴン州ヒルズボロ市のキャラウェイ市長などにも加盟要請を行い、好感触を得ました。 その後、コロンビア市から加盟要請書が提出され、10月1日付で加盟となりました。

(平和首長会議・2020ビジョン推進課)

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