和文機関紙「平和文化」No.207, 令和3年9月号

コロナ禍の中で開催した「へいわこうえん日本語教室」と「日本語ボランティア養成講座Ⅰ・Ⅱ」

へいわこうえん日本語教室
 新しく広島市民になった外国人のための日本語教室が昨年9月に初めて開講し、今年度は、春期(5月〜)と秋期(10月〜)の年2回にコースを増やして開講することとなりました。
 日本語で周りの人とコミュニケーションがとれないと、困っていても誰にも頼れずに孤立したり、災害時に大事な情報を受け取れなかったりします。 外国人が生活しづらいと感じながら過ごす時間を少しでも短くするため、来日直後のタイミングに日本語教育の機会を提供することを目指しました。
 春期の受講者はインド、ブラジル、ポーランド、フィリピン、アメリカ、ロシア、フランス、メキシコから来た10名です。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響が日本語教室を直撃しました。 開講予定日は5月7日でしたが、大型連休中に感染が急拡大し、5月6日から市内の公共施設が臨時閉館し、会場が使えなくなったのです。 先述のとおり、来日間もない外国人市民にとって日本語学習は生活に直結する切実な問題です。 開講延期にスタッフ一同も歯がゆい思いでしたが、何より受講者が一番落胆し、不安に過ごしていることが、対応の中でうかがえました。
直接会えなくても段々仲良くなり、毎回楽しみな教室になりました。
直接会えなくても段々仲良くなり、毎回楽しみな教室になりました。
 このため、実施方法を工夫して、6月からオンラインで授業を始めましたが、母語がバラバラな初学者の場合、先生が指示を出すのも簡単ではありません。 一方、受講者は、先生やクラスメイトからの情報を、聴覚だけでなく視覚など他の感覚も動員して一生懸命理解しようとしますが、小さな画面では得られる情報が少なく、スピーカー音が聞こえづらいといった制約もあります。 学習意欲を高める楽しいゲームや、気分転換になるクラスメイトとのたわいもないおしゃべりも限られてしまいます。
 しかし、このような環境の中でも、受講者はとても熱心に学習しました。 受講者、先生、スタッフの距離が段々と縮まり、7月13日に初めて教室に集まった時には、「わぁ!リアルな〇〇さんだ!初めまして!」とあいさつや冗談を言い合い、教室のあちこちで笑いの渦が起こっていたのが印象的でした。
直接会えなくても段々仲良くなり、毎回楽しみな教室になりました。
直接会えなくても段々仲良くなり、毎回楽しみな教室になりました。
日本語ボランティア養成講座Ⅰ・Ⅱ
 地域の外国人の日本語学習を支える「日本語ボランティア」の養成講座も、へいわこうえん日本語教室と同時期に開講しました。 地域の外国人と初めて出会う人向けの講座Ⅰと、サポート活動を始めている人向けの講座Ⅱの2コースです。
日本語ボランティア養成講座でロールプレイを通した日本語の教え方
日本語ボランティア養成講座でロールプレイを通した日本語の教え方について体験しながら学習している様子
 今年度は回数だけでなく、講座内容の充実も図りました。 日本語の教え方だけではなく、様々な言語で生活相談ができる窓口やボランティア活動への公的支援などの情報も提供し、広島の外国人市民の様々なニーズに市民と行政が協力して対応できる体制づくりを目指しました。 コロナ禍の現在、外国人市民にとっても、生活保障や福祉に直結する情報にアクセスできることや、身近な日本人がそのような情報についてアドバイスできることが、とても重要なのです。
 日本語ボランティア養成講座は、「まずは外国人と出会って話してみる」ことを目的として対面で開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、一部をオンライン化せざるをえなくなりました。 日本語教室の見学やサポート、広島での生活体験を聞くといった、外国人市民との直接の交流の機会が大幅に減ったことはとても残念でした。
日本語ボランティア養成講座でロールプレイを通した日本語の教え方
日本語ボランティア養成講座でロールプレイを通した日本語の教え方について体験しながら学習している様子
 なかなか収束が見えないコロナ禍ですが、教室にマスクなしの明るい笑顔が弾け、「リアル」な交流と多くの学びが生まれる日を心待ちにしています。
(国際交流・協力課)
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