公益財団法人 広島平和文化センター
理事長のページ
004

令和4年度被爆体験証言者・伝承者委嘱書交付式での理事長あいさつ(抜粋)

 広島平和文化センター理事長の小泉でございます。 交付式に際し一言ご挨拶申し上げます。 「冬は必ず春となる」との言葉どおり、厳しい冬を越え、桜花爛漫(おうからんまん)の春となり、皆様とこのように再会できましたことを喜び合いたいと思います。

 昨年度は、被爆体験証言講話は580件、被爆体験伝承講話は昨年10月より再開した定時講話を含め617件を実施し、コロナ禍におきましても多くの県内外の方々へ平和の思いを届けていただきました。 皆様に於(お)かれましては、コロナ禍の困難な状況下にあったにもかかわらず、また、体調も万全ではない方もいらっしゃったかも知れませんが、貴重なお時間を割いて証言活動、あるいは伝承活動を精力的に進めていただき、厚く感謝申し上げます。 ありがとうございました。

<中略>

 現在、ロシアによるウクライナへの武力攻撃が深刻化し、子供を含む多くの無辜(むこ)の市民に対する残虐な殺戮行為(さつりくこうい)が行われたことが明らかとなっています。 全く許しがたい行為であり、強い憤りを覚えます。 また、プーチン大統領は核兵器の使用をほのめかし、核超大国のリーダーとしてあるまじき発言をしています。 核保有の目的となっている「核抑止」とは、詰まるところ核を持たない者への「脅し」にすぎないことを大統領自らが明らかにしていることに他なりません。 そして核兵器という魔力に魅入られた独善的な為政者が何をしようとするのか、我々は目の当たりにしています。 それが実際に使われることのないように祈るばかりです。

 このように世界が国際平和と安全に対する重大な危機に直面する中で、この夏には、何度も延期された核軍縮に関する一連の会議が開催されます。 6月には核兵器禁止条約の第一回締約国会議が、また「核兵器の非人道性に関する国際会議」がウィーンで開催され、更に8月には第10回NPT再検討会議がニューヨークで開催される予定です。 それぞれ被爆者の代表者の方々も招待され、被爆の実相を語っていただくことになるでしょう。
 ウクライナを巡る情勢を踏まえれば、核軍縮の将来は暗く、NPT体制は既に崩壊しているのではないかという専門家もいますが、私はそうは思いません。 このような時であるからこそ、一挙に核廃絶に向かう機運が高まることもあるのではないかと思います。

 更に言えば、被爆者の方々や被爆体験伝承者の方々の役割への期待感が益々高まっていると感じます。 何故なら皆様方の証言や伝承が、それを聞く人の心の中に、平和を願う思いを楔(くさび)のように打ち込むことができると思うからです。 それが小学生であれ、年配者であれ、普通の日常を大事にしている人であれば、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の方々の思いを、真っすぐに受け取ることができると思います。 そして「一人ひとりの心の中に打ち立てる以外に戦争のない平和の確立はない」と言われるように、地道ではあっても、そのような活動が平和につながる直道であると信じます。

 皆様におかれましては、どうかくれぐれもご自愛の上、引き続き、証言、伝承活動により核兵器廃絶と世界恒久平和への思いを国内外に訴え続けていただきますよう、お願い申し上げますとともに、皆様お一人お一人のご健勝、ご長寿を心よりお祈りいたします。

 本日は誠にありがとうございました。

(公財)広島平和文化センター 理事長
小 泉 崇

(2022年4月8日 於広島平和記念資料館メモリアルホール)
公益財団法人 広島平和文化センター
〒730-0811 広島市中区中島町1番2号
 TEL 082-241-5246 
Copyright © Since April 1, 2004, Hiroshima Peace Culture Foundation. All rights reserved.