和文機関紙「平和文化」No.211, 令和5年3月号

本財団新理事長に香川剛廣元エジプト大使が就任

香川剛廣理事長
香川剛廣理事長
 令和5年(2023年)2月1日、元エジプト国駐箚(ちゅうさつ)日本国特命全権大使の香川剛廣(かがわ たけひろ)氏が本財団の11代目の理事長に就任しました。
香川剛廣理事長
香川剛廣理事長
略歴  昭和32年(1957年)生まれ。 早稲田大学政治経済学部卒業。 昭和56年(1981年)外務省入省。 中近東アフリカ局中近東第一課長、米国大使館 参事官、在サウジアラビア大使館 参事官、 兼在イラク大使館(在サマワ自衛隊駐屯地、外務省リエゾンオフィス所長)、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部 公使、在中華人民共和国大使館 公使、大臣官房参事官兼中東アフリカ局、地球規模課題審議官(大使)、エジプト国駐箚日本国特命全権大使、内閣官房TPP等政府対策本部 首席交渉官 を経て、令和4年(2022年)11月外務省退官。

就任のあいさつ

 この度、小泉崇(こいずみ たかし)前理事長の後を受け、広島平和文化センター理事長に就任致しました香川剛廣と申します。 被爆地広島の想いを原点に、その継承と世界の平和を推進するため、国内外で様々な活動を展開している平和文化センター理事長という重責を担うことは身に余る光栄であり、センターの更なる発展に全力で取り組む所存です。 これまで平和文化センターを支え、育ててくださった多くの関係者の皆様の力をお借りして職務を遂行して参りますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 平和文化センターは多くの先人、関係者の皆様のご尽力のおかげで、被爆者の方々の想いを世界に伝える活動と共に、核廃絶に向けた様々な運動に取り組み、大きな成果を上げて来ました。 中でも40年の歴史を有し、国連に登録された国際NGOでもある平和首長会議は、平和文化センターがその運営を担ってきましたが、今や、世界の8,000以上の都市がその趣旨に賛同し、参加する大きな組織になっています。 また、2021年には広島の願いでもあり、極めて大きな歴史的意義を有する核兵器禁止条約が発効しました。 平和文化センターとしても平和首長会議のネットワークを活用し市民レベルでの条約の後押しの努力を行って参りました。 昨年開催された条約の第一回締約国会議に関しては、松井(まつい)市長と共に小泉前理事長が平和首長会議事務総長として参加し、各種イベントにも積極的に貢献されました。 私も、これまでの外交官としての経験・知見を活かし、核なき平和を求めて、文化・青少年交流などの分野を始め、国際交流、協力を更に前に進め、センターの活動推進と発展に貢献していきたいと考えております。
 私自身の経験を申し上げれば、40年の外交官生活の中で、如何に平和が大切であるか、そのための具体的な努力が重要であるかを実感してきました。 中東地域を担当した際には、イラク戦争などの紛争後の平和構築に関わり、戦乱で荒廃した都市や市民の窮状などをつぶさに見て関連のプロジェクトの立ち上げや実施に関与し、現場での様々な調整を担いました。 核の問題に関しては、イランの核開発を巡り国際社会の懸念が高まり、中東地域全体の平和と安定に大きな影響が及ぶ中、対イラン、国連外交などにも関わって来ました。
 広島と核兵器廃絶の問題に関しては、駐エジプト日本大使を務めていた際に、広島大学の越智(おち)学長一行が来訪され、首都カイロ市など幾つかの都市との交流が行われ、私もその現場に立ち合うことができました。 また、広島の思いとして、世界に平和を発信する使命がある、との学長のお話に大変感銘を覚えたことが思い出されます。 それ以来、エジプト人の有力者、友人に広島の努力を紹介すると共に、戦乱や紛争の続く中東の国だからこそ、若い世代への平和教育が重要との考えから大学などの教育関係者に平和教育の導入を訴えました。 広島大学には平和学の講座をエジプトの大学で担当していただくようお願いし、実現させることができました。 私自身、エジプトから広島に2度ほど訪問し、松井市長や広島大学も訪問させていただき、その際、エジプトからの思いも込めて、慰霊碑に参拝、献花もさせていただきました。 今後は、広島市立大学をはじめ他の大学や教育研究機関との連携も推進していきたいと考えています。
 現下の国際情勢を見ると、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後、市民を巻き込んだ人道上の深刻な危機が長期化すると共に、核兵器使用のリスクが冷戦後の世界で最も高まっていると言われています。 核兵器禁止条約の発効という前向きな兆しとは裏腹に、「核兵器廃絶」を巡る状況は、一段と厳しさを増していると認めざるを得ません。 核保有国による核軍縮は一向に進まず、核の拡散も深刻に懸念されています。 しかしながら、「核兵器廃絶」が如何に困難であろうとも、その実現を絶対に諦めてはならないと思います。 今こそ市民社会の声の結集、連帯の力が重要となっていると確信します。 そして、その観点からは、広島平和文化センターの役割、平和首長会議という連帯の輪がますます重要になっています。
 2021年に平和首長会議が採択した平和推進のためのビジョン(PXビジョン)においては、核兵器廃絶と共に、安全で活力のある都市の実現や、平和文化の振興を目標にしています。 このような幅広い目標への取り組みには、様々な分野の専門家、関係者の方々や、市民の皆様の御支援、御協力が欠かせません。
 私自身、広島の地で働くのは初めてではありますが、被爆者の方々を始め関係者の皆様に学び、広島の想いを共有しながら、全力で平和文化センターの活動に取り組んでいきたいと思います。 皆様方の温かなご理解とご協力をいただければ幸いに存じます。 どうか宜しくお願い致します。
(総 務 課)
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