被爆から78年目の8月6日(日)、広島市の平和記念公園で、市主催の平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)が行われ、被爆者や遺族、来賓などおよそ5万人が犠牲者の冥福と世界恒久平和を祈りました。
式典は午前8時に始まり、最初に松井一實
(まつい かずみ)広島市長と遺族代表2人が、この1年間に亡くなられたことが確認された5,320人の氏名が記帳された2冊の原爆死没者名簿を、原爆死没者慰霊碑の中の奉安箱に奉納しました。
これで名簿登録者総数は339,227人、名簿総数は125冊となりました。
続いて母谷龍典
(もたに たつのり)広島市議会議長の式辞、各代表による献花の後、原爆が投下された8時15分に、遺族代表の角田礼奈
(すみだ れな)さんと、こども代表の田中湊都
(たなか みなと)さんが平和の鐘をつき、参列者全員が1分間の黙祷
(もくとう)を捧
(ささ)げました。
この後、松井市長が平和宣言を行いました。
始めに、当時8歳だった被爆者の「核兵器保有国の指導者に広島、長崎を訪れて被爆の実相を知ってほしい。」という訴えを紹介しました。
続いて、「今年5月のG7広島サミットで、各国首脳が平和記念資料館の視察や被爆者との対話を経て記帳された芳名録は、被爆者の願いが各国首脳の心に届いていることの証しになると思う。」、「原爆死没者慰霊碑を参拝された各国首脳に直接伝えた碑文に込められた『ヒロシマの心』は、各国首脳の心に深く刻まれていると思う。」と述べました。
平和宣言を読み上げる松井市長 (写真提供 広島市)
そして、各国の為政者に、「核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえ、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要がある。」と訴えました。
その上で、G7広島サミットに訪れた各国首脳に続き、広島を訪れて平和への思いを発信し、核による威嚇を直ちに停止し、対話を通じた信頼関係に基づく安全保障体制の構築に向けて一歩を踏み出すことを強く求めました。
また、市民に対し、「市民の支持を必要とする為政者が市民と共に平和な世界に向けて行動するよう、世界中に『平和文化』を根付かせる取組を広めていこう。」と呼びかけました。
日本政府に対しては、核保有国と非核保有国との間で現に生じている分断を解消する橋渡し役を果たすことや、第2回核兵器禁止条約締約国会議にオブ
ザーバー参加することを求めました。
さらに、平均年齢が85歳を超え、心身に悪影響を及ぼす放射線により様々な苦しみを抱える多くの被爆者の支援策を充実することを強く求めました。
この後の「あいさつ」で、岸田文雄
(きしだ ふみお)内閣総理大臣は、「核軍縮を巡る国際社会の分断の深まりやロシアによる核の威嚇等により、『核兵器のない世界』の実現に向けた道のりは一層厳しいものになっている。今一度、それに向けた国際的な機運を呼び戻すことが重要であり、確固たる歩みを進める上で原点となるのは被爆の実相への正確な理解だ。」との考えを示しました。
そして、G7広島サミットでは、世界の
リーダーたちに被爆者の声を聞いていただき、被爆の実相や平和を願う人々の思いに直接触れていただいたことや、若者等による広島、長崎訪問を促したことを紹介し、「国際賢人会議の議論も踏まえながら、『核兵器のない世界』の実現に向け、引き続き積極的に取り組んでいく。」と述べました。
今回の式典ではアントニオ・グ
テーレス国連事務総長の「あいさつ」を中満泉
(なかみつ いずみ)国連事務次長兼軍縮担当上級代表が日本語で代読しました。
事務総長は、「1945年の8月6日に起きた惨劇と、その教訓を世界に伝え続ける被爆者の方々に対し、これからも支援し続けることを改めて誓う。」と述べました。
また、「サミットで広島を訪れた世界の指導者たちは、記念碑を目にし、勇敢な被爆者の方々と語り合い、核軍縮という大義に果敢に取り組んでいく姿勢を見せた。」と評価しつつも、「核戦争勃発の危機を知らせる鐘が再び鳴り響いている今、より多くの指導者たちが真剣に核軍縮に向き合わなくてはならない。」と訴えました。
そして、7月末に発表した政策ブ
リーフ「新たな平和への課題」で、軍縮をその中心に据えたことを紹介し、「核による破滅の脅威がこの世から影も形もなく消え去るまで、私たちの努力は続く。」と述べました。
湯﨑英彦
(ゆざき ひでひこ)広島県知事は、「持続可能性の観点から、国際社会の一致した目標として核兵器廃絶を目指し、核軍縮を進めていくことが必要だ。」と述べました。
こども代表の勝岡英玲奈
(かつおか えれな)さんと米廣朋留
(よねひろ ともる)さんは、原爆の惨禍から生き残り命をつないでくれた人たちへの感謝とともに、「被爆者の思いを自分事として受け止め、自分の言葉で伝えていきます。身近にある平和をつないでいくために、一人一人が行動していきます。誰もが平和だと思える未来を、広島に生きる私たちがつくっていきます。」と、「平和への誓い」を読み上げました。
式典には31道府県の遺族代表の他、核兵器国のアメリカ、イギリス、フランスを含む111か国と欧州連合(EU)の大使や代表が参列しました。
式典で読み上げられた
「平和宣言」、
「平和への誓い」の全文は広島市
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(総 務 課)