被爆体験記の執筆をお手伝いしています
 被爆者の高齢化が進み、その体験を記録して原爆の悲惨さ、非人道性を人類の教訓として後世に伝えることが重要となっています。 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館では、被爆の記憶を体験記として残したいが自分一人では困難な方から聞き取りを行い、体験記としてまとめる被爆体験記執筆補助事業を行っています。
 今年度も執筆補助希望者の募集を行い、9人の体験記を作成する予定です。 10月末時点で4人の方からの聞き取りを実施しました。
 聞き取りをする前に、まず当館の担当者は、申し込んだ方の被爆に関する証言映像などの資料を集め、昔の住所・所属(学校や職場)などの情報から、おおまかな当時の様子について下調べなどの準備をします。 ある方の聞き取りでは、拡大した昔の地図を見てもらい、「当時この地区には、Hさんはこの1軒のみですが、もしかしてこれがご自宅ですか?」と聞くと、「そうじゃそうじゃ! 両隣はSさんとYさんで、うちと合わせて3軒だけが焼け残っ
聞き取りの様子
た!」などと、どんどん当時の情景が浮かび上がりました。
 「家が一瞬で倒壊し、友人のうめき声を聞きながら助けられなかった」、「まだ中学生だったが、人手がなく、一人で河原に行って親を火葬した」と話される表情には、物悲しさや無念さがにじみます。 被爆体験は言葉では表現し尽せないほど辛いものです。 聞き取る側も、つい目を潤ませる瞬間もしばしばです。
 しかし、被爆者の証言や体験記から教わることは、辛さ、悲しみだけではありません。 今回の聞き取りでは、「結婚差別を憂慮して、経済的に自立しようと薬剤師になり、最終的には共稼ぎの家庭を希望する男性と結婚した」と話される、働く女性の元祖のような被爆者の方のたくましさや、九死に一生を得て、軍国教育から開放されて感じた自由の素晴らしさを、身振り手振りで表現される被爆者の方の姿に心を打たれました。
 被爆体験を伺い、悲惨な歴史を繰り返してはならないという教訓はもちろんですが、そんな体験を経てもなお、前を向き、ひたむきに生きてこられた姿に、次世代が学ぶこともたくさんあるのではないでしょうか。
 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館には被爆体験記が約14万編収蔵されていますが、執筆補助事業で集まったものも、13年間で130編余りあります。 これらは祈念館に来館くだされば読んでいただけます。 予約や申し込みは不要です。 ぜひ祈念館を訪れ、被爆体験記に触れてください。

(原爆死没者追悼平和祈念館)

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