和文機関紙「平和文化」No.202, 令和元年11月号

「原爆の絵」が完成

―高校生たちが被爆体験を絵に描く―
 本財団は、広島市立基町(もとまち)高等学校普通科創造表現コースの協力を得て、平成19年度から、本財団被爆体験証言者と同校生徒が共同し、証言者の記憶に残る被爆時の光景を描き、当時の状況を伝える「原爆の絵」の制作に取り組んでいます。
 5人の証言者と11人の生徒が平成30年度から制作を進め、このたび11点の絵画が完成しました。
 7月1日(月)に基町高等学校展示ギャラリーで行われた完成披露会には、5人の証言者と、絵を制作した生徒を始めとする創造表現コースの生徒のほか、本財団及び基町高等学校関係者が出席しました。
 原爆が投下された後、郊外へ避難する人々とその傍らで力尽きた人々のいる光景を描いた生徒は、「一人ひとりのストーリーを考えるのがすごく苦しかった。原爆に遭った人の深い悲しみというものが襲ってくるような感じで、胸が押しつぶされるような気分だった。」と、制作過程で感じた気持ちを話してくれました。
 市内中心部の焼け跡で絶望し自ら望んで死を待つ人を描いた別の生徒は、戦争を知らない世代である自分にとって、死にゆく、自分が死ぬのを待つ、ということが想像できず、教員に何度も絵を見せたり、当時の資料を調べたりしたそうです。そして、様々な試行錯誤の中で、被爆体験証言者の話を何度も聞くうちに、「このような悲惨な光景を見た被爆者の気持ちを大切にしたらいいのではないかと思った。それこそが追体験をすることだと感じた。」と、心境の変化があったことを話してくれました。
 完成した「原爆の絵」は、被爆体験をより深く理解してもらうため、証言者による被爆体験講話で活用するほか、絵の貸出や画像データの提供なども行い、原爆被害の実相を後世に継承するために役立てています。
「目もくらむ光」
「目もくらむ光」

制作 原田 真日瑠(はらだ まひる)(基町高等学校普通科創造表現コース)、小倉 桂子(おぐら けいこ)(被爆体験証言者)

「暗闇の中で燃える小屋」
「暗闇の中で燃える小屋」

制作 桂木 晋作(かつらぎ しんさく)(基町高等学校普通科創造表現コース)、小倉 桂子

「お母さんは何処?」
「お母さんは何処?」

制作 岸(きし) まりも(基町高等学校普通科創造表現コース)、 笠岡貞江

「放置されたままの黒い死体」
「放置されたままの黒い死体」

制作 河元 愛香(かわもと まなか)(基町高等学校普通科創造表現コース)、笠岡 貞江(かさおか さだえ)(被爆体験証言者)

「避難する人と力尽きた人」
「避難する人と力尽きた人」

制作 小野 美晴(おの みはる)(基町高等学校普通科創造表現コース)、川崎 宏明(かわさき ひろあき)(被爆体験証言者)

「絶望・死にゆく人」
「絶望・死にゆく人」

制作 是永 千穂(これなが ちほ)(基町高等学校普通科創造表現コース)、末岡 昇(すえおか のぼる)(被爆体験証言者)

「流れ着いた棺代わりの木箱」
「流れ着いた棺代わりの木箱」

制作 猿田 起之(さるた かずゆき)(基町高等学校普通科創造表現コース)、末岡 昇

「忘れられた女学生の遺体」
「忘れられた女学生の遺体」

制作 下西 由心名(しもにし ゆみな)(基町高等学校普通科創造表現コース)、末岡 昇

「家族の遺体を掘り出す」
「家族の遺体を掘り出す」

制作 祢宜 泳子(ねぎ ようこ)(基町高等学校普通科創造表現コース)、末岡 昇

「最も大切なものを」
「最も大切なものを」

制作 富士原 芽依(ふじわら めい)(基町高等学校普通科創造表現コース)、原田 浩(はらだ ひろし)(被爆体験証言者)

「家族の火葬」
「家族の火葬」

制作 河本 羽菜日(かわもと はなび)(基町高等学校普通科創造表現コース)、末岡 昇

(平和記念資料館 啓発課)

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