和文機関紙「平和文化」No.207, 令和3年9月号

海外へのオンライン被爆体験証言

~コロナ禍で広がる新しい継承の形~
 平和記念資料館では、オンラインで広島の被爆者と世界各国の人々を結び被爆体験証言を聞いていただく、「海外へのオンライン被爆体験証言」を、平成22年度(2010年度)から実施しています。
 海外にいる方を対象とし、聴講者が10人以上いれば無料で実施することができます。 参加者は自国にいながら被爆者とつながって生の声に触れ、質疑応答時間を通して双方向の交流を持つことができます。
被爆体験を語る小倉桂子さん
6月、感染症対策を行いながら、ボスニア・ヘルツェゴビナの人々にオンラインで被爆体験を語る小倉桂子(おぐら けいこ)さん
 昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大の中にあっても、被爆者の声を世界に届け続けるため、オンラインはますます重要なツールとして広がりを見せています。 当館でも昨年度からその環境整備にさらに力を入れています。 一昨年までは年間10回前後のオンライン証言を実施してきましたが、昨年度の実施はその約倍となる23回にのぼりました。 今年度も増加傾向は続き、8月末時点で、既にアメリカやハンガリーなど8か国に対して13回のオンライン証言を行い、およそ550人が被爆者の声に耳を傾けました。
 聴講者は、核兵器を持つ国、持たない国、核の傘の下にある国など、地域も背景も、また年齢層も様々です。
 2年連続でオンライン証言を申し込んだアメリカの大学教授は、証言は長い対話の第一歩だと語っています。 証言を聞いた学生達からは、「本や歴史の授業からは学べない体験者の生の声に衝撃を受けた」「核兵器の人間への影響について初めて深く知ることができた」といった声が複数寄せられました。 同時に、寄せられた感想の中には、「核兵器のある世界での平和はありえない」といった意見もあり、これからの若い世代の役割について考えようとする頼もしい様子も見受けられました。 これらの学生の声は、核問題を考える時、きのこ雲の下にいた一人の人間の視点を忘れないことが、いかに重要であるかを物語っています。
 被爆者の高齢化が進む今、当館では、コロナ禍でも継承の歩みを止めないためのオンライン環境の整備を続け、一人でも多くの方々に、原爆の惨禍について知り、核問題について考えていただけるよう、方策を模索し続けます。
(平和記念資料館 啓発課)
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