“ヒロシマの心”を発信する人々
「平和で美しい地球の未来を願うメッセージをこめて、
日本の絵本を贈ります。」

―ひろしまと世界を結ぶこども文庫―

世界には、まだまだ原爆の実相を知らない人たちが多くいます。 「ひろしまと世界を結ぶこども文庫」は、15年にわたり、世界中の国と地域に、原子爆弾のおそろしさや地球環境の大切さを伝える絵本を贈る活動を続けてきました。
  この活動について、会の代表世話人の柴田幸子(しばた ゆきこ)さんにお話をうかがいました。

活動のきっかけについて教えて下さい。
1995年、中国・北京(ペキン)で開かれた第4回世界女性会議のNGOフォーラムに、広島市から市民11名が派遣されました。 私もその中の1人でした。 私達は「核兵器の廃絶と平和の創造」をテーマにワークショップを開き、原爆の恐ろしさを伝えるために、資料のひとつとして絵本を展示しました。 この時、民族や文化、言葉の壁を越えて直接メッセージを伝えることのできる絵本の力を実感するとともに、世界にはまだまだ原爆の実相を知らない人たちが多いことも痛感しました。 帰国後、フォーラムに参加した11名で、自分たちに出来ることから始めようと、「ひろしまと中国を結ぶこども文庫」を設立し、 中国の子どもたちに平和や環境についてのメッセージを伝える絵本を贈ることを始めました。 1996年のことで、これがこの活動の始まりです。

絵本に添えて贈られるメッセージ
(クリックで拡大します)
現在では世界に向けた活動をしておられますね。
中国の子どもたちに絵本を贈る活動をするなかで、いろいろな問題がありましたが、特に資金の面で送料の負担が大きく、会費や補助金、寄附金だけでは不足がちとなりました。 広島には多くの国の人々が訪れます。そこで、そんな機会に手渡ししていこうということにしたのです。
  1998年、私たちの会は「ひろしまと世界を結ぶこども文庫」と名称を改め、広島を訪れる様々な国の人たちに絵本を手渡し、広島市民の「平和を願う心」を伝える活動として新たにスタートしました。 それまでの活動を通して知り合った多くの人たちからご協力を受け、その年、原水禁世界大会に招かれて広島を訪れたパキスタンの物理学者アブドラ・ナイヤー博士に絵本数冊を手渡すことが出来ました。 博士はその本をイスラマバードの高校に届けて下さり、現地の高校生からは本を読んだ感想が送られてきました。
  広島は、多くの国際会議が行われる都市です。 平和市長会議が行われた際には、会議場のロビーに私たちの活動を紹介するブースを(もう)けて、 会議に参加した市長のお一人お一人に、絵本を手渡すことが出来ました。
  また、国連が実施している「国連軍縮フェローシップ」の一環として、毎年、各国の若手外交官が平和学習のために広島を訪れます。 この人たちにも2002年から絵本を贈ってきました。
  その他にも、広島市の姉妹・友好都市の図書館や学校にも、相互訪問などの機会を利用して絵本を贈ることが出来ました。 また、JICA(国際協力事業団)中国センターのご協力を得て、JICAから世界各国へ派遣される人たちを通して絵本を贈ることもできました。

どんな絵本を贈るのですか。
現在主に贈っている絵本は、「絵で読む広島の原爆」(那須正幹(なす まさもと)作、 西村繁男(にしむら しげお)絵、 福音館(ふくいんかん)書店出版)の英語版、「HIROSHIMA」(田中利幸(たなか としゆき)訳)です。 これは絵本ですが、被爆当時の様子が正確に描かれているとともに、科学的な側面からも解説されていて、資料的価値の高いものです。 この本に私たちの活動の趣旨(しゅし)を書いたもの(日英語)を()えて贈っています。
  また、国連軍縮フェローズの団長として何度も広島に来られているポーランドのイエルジー・ザレスキー氏には、毎回異なる絵本を選んで贈っています。 そして、その本が今、ジュネーブの国連図書館に蔵書として置かれていることを知り、とてもうれしく思っています。
これまでに贈った本の一部をご紹介します。>>

今後の活動について聞かせて下さい。
様々な出会いを通じて、平成22年末までに、世界の147ヵ国の949ヵ所に、1,876冊を贈ってきました。
  また、直接お会いすることが難しい方にも、各国の大使館を通じて絵本を贈りました。 そして、2008年のG8(主要国首脳会議)下院議長会議のホスト役の河野洋平(こうの ようへい)氏(元衆議院議長)や、 同会議に参加されたナンシー・ペロシ米国下院議長(当時)、 さらに2009年に来日されたヒラリー・クリントン米国国務長官から、お礼状が届くという、うれしい出来事もありました。
  絵本は人間が創り出したすばらしい文化です。 私たちはその絵本を通して世界の人々と交流し、思いもかけない方々との様々な出会いをすることもできました。 また、すばらしい仲間と多くの人々に支えられ、活動が続いてきたことに感謝しています。
  そして世界のどこかで私たちの贈った絵本がずっと読み続けられ、平和のメッセージが届くことを願いながら、これからもこの活動を続けていきたいと思っています。

ありがとうございました。


(2011年2月3日取材 総務課)

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