平和記念資料館を全面的にリニューアル
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広島平和記念資料館は、開館から今年で58年目を迎え、本館は老朽化が進んでおり、その保存を行う必要があります。
また、戦争体験のない世代が多くを占めるようになった現在、被爆の実相をよりわかりやすく正確に伝えるために建物を改修し、展示を全面的に見直すこととなりました。
リニューアルにあたっては市民の皆さんから意見をいただきながら、学識経験者や被爆者等から成る検討委員会での検討を経て2010年(平成22年)7月に策定した「広島平和記念資料館展示整備等基本計画」に基づいて進められています。
現在、展示の設計が終了し、施設の改修との調整を行っています。
観覧動線が変わります
現在は、東館1階から入館し、まず東館の展示を観覧した後、渡り廊下で本館へ移動し、本館の展示を観覧後、本館から退館するルートとなっています。
来館者などへの調査を行ったところ、平均観覧時間は約45分で、うち本館の観覧時間は約19分という結果が示されました。
これは、館の中心をなす「被爆の実相」を伝える展示の観覧に十分な時間をかけられていないことを示しています。
この課題を解消するため、リニューアル後は、東館1階から入館して新設するエスカレーターで直接3階へ上がり、導入展示を観覧後、すぐに渡り廊下で本館へ移動し、まず本館の展示を観覧できるようにします。
その後、渡り廊下で東館3階へ戻り、東館の展示を観覧後、東館1階から退館するルートになります。
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「導入展示」パノラマ模型
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4つのテーマで展示
常設展示は、「導入展示」(東館3階)、「被爆の実相」(本館)、「核兵器の危険性」(東館3階)、「広島の歩み」(東館2階)の4つのテーマに分かれ、展示構成や資料など展示内容が大幅に変わります。
中でも本館の「被爆の実相」は当館の使命を果たすための中心的な展示テーマと位置付けています。
より人間の被害に重点
本館の「被爆の実相」展示は、原爆の非人道性、被害の甚大さや凄惨さ、被爆者や家族の苦しみ、悲しみなどをこれまで以上に伝えることとしています。
展示は、大きく「8月6日のヒロシマ」と「被爆者」の2つのゾーンに分かれます。
「8月6日のヒロシマ」のゾーンでは、原爆の熱線、爆風、放射線が複雑に絡み合い都市と人に大きな被害を及ぼしたことを伝えます。
一瞬にして壊滅した都市の中で多くの生命が失われたことを示すため、破壊されたレンガ壁など大型の被爆資料と亡くなった人たちが着用していた衣服、遺体や火傷を負った人たちを撮影した写真など、より多くの資料を合わせて、当時の凄惨な状況がイメージできる集合展示を行います。
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本館「8月6日のヒロシマ」集合展示
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「被爆者」のゾーンでは「人」に主眼を置き、遺品と合わせて遺影や詳しい被爆状況、寄贈者の思いを展示し、一人一人の命の存在や遺族の悲しみなどを伝えます。
また、健康被害や心の傷など今日まで続く原爆被害の実態を、被爆者の体験記も活用しながら展示します。
大型の情報検索装置
本館から再び東館へ戻ると、3階では「核兵器の危険性」、2階では「広島の歩み」をテーマとする展示です。
ここでは、来館者が関心を持ったテーマについて、より深く調べられるよう、大型の情報検索装置である「メディアテーブル」を新たに設置します。
「メディアテーブル」はタッチパネルで画面展開し、自分が知りたいさまざまな情報を入手することができます。
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「メディアテーブル」
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2018年度(平成30年度)にグランドオープン
今年度から東館の改修工事に着手し、東館は2015年度(平成27年度)まで、本館は2016年度(平成28年度)、2017年度(平成29年度)に改修工事を予定しています。
工事期間中は、どちらか一方の館の展示は観覧できるようにします。
東館、本館の2館を観覧できるグランドオープンは2018年度(平成30年度)の予定です。
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(平和祈念資料館 学芸課) |
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