和文機関紙「平和文化」No.197, 平成30年3月号

「原爆の絵」が完成

―高校生たちが被爆体験を絵に描く―
 本財団は、広島市立基町(もとまち)高等学校普通科創造表現コースの協力を得て、平成19年度から、本財団被爆体験証言者と同校生徒が共同し、証言者の記憶に残る被爆時の光景を描き、当時の状況を伝える「原爆の絵」の制作に取り組んでいます。
 8人の証言者と18人の生徒が平成28年度から制作を進め、このたび、18点の絵画が完成しました。
 7月4日(火)に、基町高等学校展示ギャラリーで行われた完成披露会には、7人の証言者と、絵を制作した生徒を始めとする創造表現コース生徒のほか、本財団及び基町高等学校関係者が出席しました。
 川に漂う無数の死体を描いた生徒は、「最初は凄惨(せいさん)な世界を絵に表現できるか不安だった。水の色を忠実に再現するため何度も描き直した。制作を通して自分の想像以上の現実があったことを学んだ。今後も平和のためにできることをしていきたい」と話してくれました。
 完成した「原爆の絵」は、被爆体験をより深く理解してもらうため、証言者による被爆体験講話で活用するほか、絵の貸出や、画像データの提供なども行い、原爆被害の実相を後世に継承するために役立てています。
「防火用水の中で立ったまま焼かれた被爆者たち」
製作者:三坂日奈子(みさか ひなこ)(基町高等学校2年生)、浅野温生(あさの よしお)(本財団被爆体験証言者)
「焼け跡からやっと見つけた孫娘を連れ帰るお婆さん ―その女の子の膝から下は骨になっていた―」
製作者:製作者:野村(のむら)かなめ(基町高等学校3年生)、浅野温生
「川で亡くなった人々を収容する兵士」
製作者:加藤詩温(かとう しおん)(基町高等学校2年生)、浅野温生
「くちびるの潰れた友達」
製作者:奥野天葵(おくの てんき)(基町高等学校2年生)、浅野温生
「家族を火葬する人たち」
製作者:亀髙菜那(かめたか なな)(基町高等学校2年生)、浅野温生
「焼けた電車内、逃げる間もなく死んでいった二人の亡骸」
製作者:桐林勲(きりばやし いさお)(基町高等学校2年生)、浅野温生
「『遺体収容所』になった二中のグランドに並んでいた簀(す)巻き状態の遺体」
製作者:川﨑友貴(かわさき ゆき)(基町高等学校3年生)、浅野温生
「日赤病院前の無傷の死体」
製作者:前田葉月(まえだ はづき)(基町高等学校2年生)、浅野温生
「炎から逃れ水を求めて雁木(がんぎ)に集まってきた人々」
製作者:松田優奈(まつだ ゆうな)(基町高等学校3年生)、大田金次(おおた かねじ)(本財団被爆体験証言者)
「潮の引いた河原の惨状」
製作者:黒川奈夏(くろかわ なつ)(基町高等学校3年生)、大田金次
「払っても寄ってくるハエ、異様な臭いに群がるウジ」
製作者:今村遥香(いまむら はるか)(基町高等学校3年生)、笠岡貞江(かさおか さだえ)(本財団被爆体験証言者)
「御幸橋より 波に漂う屍(しかばね)
製作者:石田菜々子(いしだ ななこ)(基町高等学校3年生)、河野キヨ美(こうの きよみ)(本財団被爆体験証言者)
「『友達を助けてくれ!』『火が廻(まわ)って来たぞ、逃げろ!』」
製作者:宮本陽菜(みやもと ひな)(基町高等学校2年生)、兒玉光雄(こだま みつお)(本財団被爆体験証言者)
「爆風で亡くなった女性」
製作者:河﨑海斗(かわさき かいと)(基町高等学校2年生)、新宅勝文(しんたく かつふみ)(本財団被爆体験証言者)
「広島文理大学グラウンドの惨状」
製作者:和田(わだ)はるな(基町高等学校2年生)、新宅勝文
「市内電車の中で吊革(つりかわ)を持ったまま焼けて、骨になった人」
製作者:岡田萌々((おかだ もも)(基町高等学校2年生)、新宅勝文
「力尽きた人々」
製作者:杉江湧愛(すぎえ ゆめ)(基町高等学校3年生)、朴南珠(パク ナムジュ)(本財団被爆体験証言者)
「小学校の体育館でうじ虫を取ってもらっている」
製作者:島田菜々花((しまだ ななか)(基町高等学校2年生)、松本都美子(まつもと とみこ)(本財団被爆体験証言者)

(平和記念資料館 啓発課)

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