和文機関紙「平和文化」No.199, 平成30年11月号

被爆73周年平和記念式典

―世界にいまだ14,000発を超える核兵器がある中、意図的であれ偶発的であれ、核兵器が炸裂したあの日の広島の姿を再現させ、人々を苦難に陥れる可能性が高まっています―
 被爆73年目の8月6日(月)、広島市の平和記念公園で、市主催の平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)が行われ、被爆者や遺族など約5万人が参列して犠牲者の冥福と恒久平和を祈りました。
 式典は午前8時に始まり、最初に松井一實(まつい かずみ)広島市長と遺族代表2人が、この1年間に亡くなられたことが確認された5,393人の氏名が記帳された2冊の原爆死没者名簿を、原爆死没者慰霊碑の中の奉安箱(ほうあんばこ)に奉納しました。 これで名簿登録者総数は314,188人、名簿総数は115冊となりました。
 続いて永田雅紀(ながた まさのり)広島市議会議長の式辞、各代表による献花の後、原爆が投下された8時15分に、遺族代表の上峠賢太(うえたお けんた)さんと、こども代表の森下碧(もりした あおい)さんが平和の鐘をつき、参列者全員が1分間の黙祷(もくとう)を捧ささげました。
平和宣言を行う松井市長
平和宣言を行う松井市長
 この後、松井市長が平和宣言を行いました。 宣言の中で市長は、「あなたや大切な家族がそこにいたらと想像しながら聞いて下さい」と呼び掛け、昭和20年(1945年)8月6日午前8時15分に広島の上空で炸裂(さくれつ)した原子爆弾による惨禍を、被爆者から寄せられた体験談により描写しました。 そして、当時20歳だった2人の被爆者の訴えを紹介し、被爆者は、為政者に対し、理性と洞察力を持って核兵器廃絶に向かうよう求めており、その取組が各国の為政者の理性に基づく行動によって継続するようにしなければならないと訴えました。
 また、核抑止や核の傘という考え方は、核兵器の破壊力を誇示し、相手国に恐怖を与えることによって世界の秩序を維持しようとするものであり、長期にわたる世界の安全を保障するには、極めて不安定で危険極まりないものだと述べ、為政者に、NPT(核兵器不拡散条約)に義務づけられた核軍縮を誠実に履行し、さらに、核兵器禁止条約を核兵器のない世界への一里塚とするための取組を進めるよう求めました。
 日本政府には、国際社会が核兵器のない世界の実現に向けた対話と協調を進めるよう、その役割を果たすことや、平均年齢が82歳を超えた被爆者をはじめ、放射線の影響により心身に苦しみを抱える多くの人々の苦悩に寄り添い、その支援策を充実するとともに、「黒い雨降雨地域」を拡大するよう強く求めました。
 平和宣言の後、こども代表の新開美織(しんかい みおり)さんと米広優陽(よねひろ ゆうひ)君が、被爆者の証言を聴き、被爆資料の見学や慰霊碑巡りなどで学んだことから、強く平和を願いながら、「平和への思いを折り鶴に込めて、世界の人々へ届けます。73年前の事実を、被爆者の思いを、私たちが学んで心に感じたことを、伝える伝承者になります。」と「平和への誓い」を読み上げました。
 この後「あいさつ」の中で、安倍晋三(あべ しんぞう)内閣総理大臣は、近年、核軍縮の進め方について、各国の考え方の違いが顕在化していると指摘し、真に核兵器のない世界を実現するためには、被爆の悲惨な実相の正確な理解を出発点として、核兵器国と非核兵器国双方の協力を得ることが必要であり、政府として、粘り強く双方の橋渡しに努め、国際社会の取組を主導していくと述べました。 そして、具体的な取組として、NPT発行50周年となる2020年の運用検討会議が意義あるものとなるよう、積極的に貢献していくことや、若い世代が被爆者の方から伝えられた被爆体験を語り継いで行く取組を推し進める考えを示しました。
 今回の式典では、昨年に引き続き、アントニオ・グテーレス国連事務総長のメッセージを、中満泉(なかみつ いずみ)国連事務次長兼軍縮担当上級代表が日本語で代読しました。 事務総長は、過去何十年にわたり核兵器のない世界という共通の目標に向け機運が高まってきたが、今、その進歩は停滞していると指摘し、そうした中、昨年、核兵器禁止条約が採択されたことは、核兵器の持つ脅威に恒久的に終止符を打つことに強く、正当な国際的支持が存在すること、そしてこの目標の達成が遅々として進まないことへの不満が存在することを示したと述べました。 そして、世界の指導者は、対話と外交の重要性を認識し、核兵器の完全廃絶、そしてすべての人にとってより安全で安定した世界の実現に向け、再び共通の道を歩まねばならないと訴えました。
 式典には40都道府県の遺族代表の他、核兵器国のアメリカ、イギリス、フランス、ロシアを含む85か国と欧州連合(EU)の大使や代表が参列しました。
 式典の様子はインターネットでライブ中継されました。 動画は、広島市公式YouTubeチャンネルから視聴できます。 式典で読み上げられた「平和宣言」、「平和への誓い」の全文は、広島市ホームページの「原爆・平和」→「平和記念式典・平和宣言等」から閲覧できます。 「平和宣言」は9言語(アラビア語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、ハングル、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語)の外国語版も閲覧できます。

(総 務 課)

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