本財団は、広島市立基町
(もとまち)高等学校普通科創造表現コースの協力を得て、本財団被爆体験証言者と同校生徒が協働し、被爆者の記憶に残る被爆時の光景を描いて当時の状況を伝える「原爆の絵」の制作に取り組んでいます。
今年度は、18人の生徒と9人の証言者にご協力いただいており、昨年11月中旬、生徒に被爆の実相をより深く学ぶ場を提供し制作に役立ててもらうため、平和記念資料館にて学習会を開催しました。
本企画のきっかけは、前年度の「原爆の絵」の取り組みに参加した被爆体験証言者から寄せられた言葉でした。
「被爆者の話をもとに絵を描くだけでなく、原爆のことをより深く学び、絵を描く意義を考える。高校生のためにこうした場を設けることも重要ではないか。」これを受け、「原爆の絵」に携わる高校生に来館してもらい、職員の案内による展示見学と、平和学習講師による平和学習講座を実施することになりました。
当日は、放課後の1時間強という短い時間ではあったものの、創造表現コースの有志も加わった総勢25人もの生徒が参加しました。
浜岡副館長の案内で館内を見学する基町高等学校の生徒たち
前年度、証言者の國分良德
(くにわけ よしのり)さんと「原爆の絵」を制作した川﨑
(かわさき)あすかさん(2年生)は、
「普段の証言者さんとの打ち合わせでは、被爆者の方一人一人の心情に沿ったお話を中心に聞かせていただいています。今回は、講師の西村宏子
(にしむら ひろこ)さんから原爆と被害についての事実や私たちがどう動いていくかということ、そして浜岡
(はまおか)副館長から展示における工夫や展示に至った経緯などを聞き、いつもとは違った視点で原爆について考えることが出来ました。事実をきちんと知ったうえで絵を描くことはとても大切だと考えています。今回のお話を心に留めて制作していきたいと思います」
とのメッセージを送ってくれました。
川﨑さんのメッセージのとおり、証言者の話を聞くだけでなく、客観的な視点から原爆を見つめることが絵の制作において重要であることは言うまでもありません。
証言者の体験にどれだけ耳を傾けても、原爆を経験していない高校生たちにとって、当時の惨状を想像だけで絵に描くことは困難だからです。
その点、館内に展示されている被爆者の遺品や、被爆の惨状を示す写真、「市民が描いた原爆の絵」からは、人や都市の被害の様子が多様な視点から視覚的に伝わってきます。
館内を見学した益田彩可
(ますだ さやか)さん(1年生)は、展示と証言者の話、さらには自分が取り組んでいる絵の制作をつなげて、次のように感想を書いています。
「苦しんだ人々の写真を見ると、ときには目を覆いたくなることもあったけど、ここで目を背けずにきちんと向き合い、証言者の話をもとに広島の惨状と事実を絵にしたいと思います。そして私の描いた絵を見た誰かが、平和への気持ちを新たにしてくれたらと思います。」
別の生徒も、
「原爆を知らない全ての人にぜひ資料館を訪れていただき、多くの人に原爆について知ってほしいと思っています。そして、そういった活動の一部として原爆の絵を描き、少しでも核廃絶に貢献できればと思います」と、「原爆の絵」を描く自分自身が、当事者としてヒロシマを伝えていきたいとの気持ちを共有してくれました。
(平和記念資料館 啓発課)