和文機関紙「平和文化」No.206, 令和3年3月号

コロナ禍の下で船出:ヒロシマ ピース ボランティア14期生46人

 昨年3月、平和記念資料館のヒロシマ ピース ボランティアに14期生46人が新たに加わりました。 ところが同時期から新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により海外からの来館者は激減しました。 さらに、当館が二度にわたり臨時休館し、ボランティア活動を再開した期間も館内の移動解説を控えたりと、従来のような活動をすることが難しくなっています。 こうした状況にあっても、新人を含む232人のボランティアが、感染症対策を徹底したうえで、平和記念公園及び周辺の慰霊碑等の解説を行い、広島を訪れてくれる修学旅行生をはじめ全国各地からの来館者の平和学習を支援しています。
 14期生は、約5か月にわたる座学と実地研修を終え、昨年3月にボランティアとしてデビューする予定でしたが、実際に活動を開始できたのは4か月が経過した7月でした。 しかしその間も、活動歴の長いボランティアがウェブ会議システムを活用し、オンラインで新人ボランティアにノウハウを伝え、実地では有志による新人向けの研修が行われるなど、広島に原爆が投下されてから75回目の夏を前に、被爆地からの発信をあきらめず、地道に取り組みを続けていました。
 まだ暑さの続く9月、東京から来館されたご家族3人の平和記念公園解説を務めたのは、経験豊富な永原富明(ながはら とみあき)さんでした。 当時まだデビューしていなかった新人の三浦福美(みうら ふくみ)さんは永原さんに同行し、解説のコツを教わることにしました。
 解説の予約件数も減少し、機会がなかなか巡って来ず、ピースボランティアの一員としてやっていくことが出来るかどうか不安でいっぱいだったと当時の状況を振り返る三浦さん。 自分の持つ知識をすべて相手に伝えなければと思っていた三浦さんは、相手に寄り添いながら言葉を紡ぐ永原さんの解説を目の当たりにし、「解説の基本は同じだが、その方法に決まったものはなく、十人十色でいいんだ、と感じられ勇気が湧いた」と感想を綴(つづ)っています。 また、解説を受けた方から、 「私たちは今回東京から参りました。このコロナ禍の中、広島へ来ることはためらわれましたが、今年は被爆から75年という節目のため、ぜひ平和記念公園に来たいと思っていました。その願いがかないました」 という感謝の言葉を永原さんと共にいただき、改めて国内外の方々に被爆の実相を直接伝えていくことの大切さを痛感した、と三浦さんは書きとめています。
 この秋から冬にかけ、引き続き様々な制約がある中でも状況に応じた対策を取り、また、仲間同士が積極的に連絡を取り合うなどした結果、14期生の多くが最初の一歩を踏み出すことができました。 2月4日現在、未だにデビューできていない方もいますが、今後とも活動曜日ごとのグループにおけるつながりを大切にしながらボランティア活動を継続し、新型コロナウイルス感染症が収束した暁には、国内外からこれまで以上に多くの来館者を迎え、ヒロシマの地で同じ時間を共有できることを心待ちにしています。
(平和記念資料館 啓発課)
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