昨年9月、平和記念公園の国際会議場3階研修室で、「へいわこうえん 日本語教室」が始まりました。
新しく広島市民になった外国人が日本語を学ぶための教室です。
現在、広島市には約2万人の外国人が暮らしています。
市では、多文化共生のまちづくりを目指し、入門レベル(ひらがな・カタカナの学習から)の日本語教室を始めました。
日本語が全く話せないと、地域での孤立を招き、日常生活で困っても人に頼ることができなかったり、災害時に大事な情報が届かなかったりします。
また、日本語を一から始める人は、公民館等で行われている日本語教室で学ぼうとしても、日本人ボランティアと意思疎通するのが難しいことがあります。
9月から12月にこの日本語教室で学んだ第1期受講生はフィリピン、インド、アメリカ、イギリス、パレスチナ、香港、台湾、シンガポール、マレーシア出身の9人で、出身も母語もバラバラですが、分からないときは教え合い、上手にできたら一緒に喜びました。
この教室では、座学ばかりでなく、ロールプレイでの会話練習やゲーム形式の口頭練習も積極的に取り入れました。
既に日本で暮らし始めている彼らにとって、生活上不可欠となる日本人との会話力(例えば買い物でのやり取り等)をまず身に付けることが大切だからです。
また、日本語ができないと、地元文化に触れるのも私たち日本人の想像以上にハードルが高いものです。
教室では、書道体験で書く練習をしながら、また、お好み焼き体験で食べ物の名前を勉強しながら、日本と広島の文化について知る機会を作りました。
日本人ボランティアにお店の場所を尋ねてみるロールプレイ
実は、この教室では日本人も学びました。
地域で共に暮らす外国人をサポートする方法を学びたいと集まった広島市民のボランティアです。
この教室でのロールプレイの相手役をはじめ、書道体験、お好み焼き体験、商店街の買い物体験にも同行して、受講生とのふれあいの中から自分の地域での外国人市民とのコミュニケーションの糸口を学びました。
回を重ねるごとに受講生とボランティアは打ち解けていき、毎回、教室には受講生とボランティアの笑い声が響きました。
“国”単位の歴史や関係を見れば、良好とは言いにくい場合もあります。
しかし、“人”という単位でみれば、外国人市民も日本人ボランティアも、共に学ぶクラスメートです。
教室に集う一人一人の交流が、これからの平和を紡いでいくのだと感じずにはいられません。
平和記念公園で産声を上げたこの日本語教室が、被爆地広島での新しい平和の築き方を見せてくれるかもしれません。
~ウチも、ワシも~
広島市民じゃけえ!
―外国から来て広島市民になった人にお話を伺いました―
オムニヤ・アルオダイリさん
オリーブ石鹸
(せっけん)が有名なパレスチナのナブルスという街から来ました。
私は大学で英語教育法を学びましたが、パレスチナで仕事を見つけることは簡単ではありません。
そこで、料理が好きな私は、妹と一緒に日本料理と韓国料理のビジネスを立ち上げました。
特にキンパ(韓国海苔
(のり)巻き)とおにぎりは大好評でした。
日本に移住したのは、パレスチナでアラビア語等を学んでいた日本人の現在の夫と結婚したためです。
遠く離れたパレスチナでも日本人と出会う機会が何度もあり、一緒に楽しく過ごしました。
私の夢は、日本でパレスチナ料理店を開くことです。
パレスチナでは大家族が多く、みんなで大きな皿を囲んで昼食を食べる習慣があります。
そんな温かい雰囲気にしたいです。
広島に来て「へいわこうえん 日本語教室」に参加して、1人では難しい日常会話の練習ができ、友達もできました。
そのような外国人へのサポートが増えるといいと感じています。
また、ハラル(イスラム法で許された食材や料理)やベジタリアンの店ももっとあればうれしいです。
川が美しく、緑にあふれた大好きな広島の街が、もっと素敵になってほしいですから。
(国際交流・協力課)