2月末に始まったロシアのウクライナ侵攻により、ウクライナ国内で800万人が故郷を追われ、600万人以上が国境を越えて避難したという統計が出ています(UNCHR調べ、5月23日現在)。
800万人という数字は、東京都の人口の半分以上であることを考えても、大変な数と言えます。
日本でも4月初旬からウクライナ避難民の受入れが始まり、広島市には最初の避難民が4月末に到着しました。
避難民の突然の慣れない異国での生活を支えるため、国際市民交流課は広島市からの委託を受けて支援事業を整え、取組を始めています。
ウクライナ人避難民向けの全く新しい取組みを一から作るというよりは、これまで国籍を問わず在住外国人市民の支援を行ってきた組織、ノウハウ、リソースを活用して支援を行っています。
事業には大きく分けて2本の柱があります。
1本目の柱は、広島市・安芸郡
(あきぐん)外国人相談窓口の行政手続や生活相談、医療機関受診の際の通訳者手配です。
例えば、外国人が日本で一定期間定住するためには必ず出入国在留管理庁で在留資格を得る手続が必要ですが、この様な煩雑な手続に通訳を派遣し、サポートする等しました。
2本目の柱は日本語学習機会の提供です。
これから日本に長く定住する可能性がある避難民が自立して安定的に生活していくためには、日本語の習得が不可欠です。
日本語が話せないと、日々の生活で困難や不便が生じます。
また、知り合いの少ない日本でコミュニケーションが取れなければ、孤立してしまう可能性もあります。
さらに、希望する職業に就いて働くためにも、一定以上の日本語能力が必要です。
国際市民交流課では、例年国際会議場で外国人市民向けの入門レベルの日本語教室を開催しており、今年度春期は5月初旬から7月下旬に開講しました(週2回、全22回コース)。
この教室に2世帯3人のウクライナ人が通いました。
加えて、ロシア語話者の講師による日本語個別指導も提供しました。
突然過酷な境遇を背負うことになった避難民ですが、ほとんど欠かさず授業に参加し、前向きに貪欲に学習に取り組み、短期間で目を見張るほど上達しました。
また、日本語教室では日本文化体験(茶道や書道等)のほか、七夕などの行事を取り入れており、そういった活動が、母国を心配しながら慣れない日本で奮闘する生活の中で癒しや励みになったようです。
スタッフは教室や個別指導で週数回、数か月にわたって避難民と顔を合わせるため、彼らに困ったことや変わった様子があれば察知して、必要に応じて広島市等、関係機関と連携をとっています。
このように、継続して関わることで、自然と見守りができ、必要な時にはスムーズに支援が行えます。
回数を重ねるごとに彼らの表情は緩んで行っています。
日本語初学者向けの日本語教室で生活に最低限必要な日本語を身に付けた後は、地域の日本人とともに学習を続けていくことになります。
ぜひ多くの方がウクライナ人避難民をはじめ、既に隣人として日本で生活している外国人に関心を持ち、温かい手を差し伸べる初めの一歩を踏み出してくださるよう期待しています。
(国際市民交流課)