和文機関紙「平和文化」No.209, 令和4年8月号
広島大学原爆放射線医科学研究所

被爆者スライド標本データベースが公開されています

 今年5月20日、広島大学原爆放射線医科学研究所(原医研)が所蔵する被爆者のスライド標本の一部を閲覧できる「被爆者スライド標本データベース」が公開されました。
 1945年(昭和20年)8月6日に原子爆弾が投下された直後より、広島の医師たちは情報が不十分なまま診療に奔走し、カルテや解剖の記録などを残しました。 また、日本各地から原爆による影響を調べるために調査団が派遣されました。 しかし、その記録、標本、写真などのほとんどはアメリカ軍が持ち帰り、日本人による研究や発表はプレスコードにより規制されていました。
 米軍病理学研究所に保管されていた資料は1973年(昭和48年)に、ようやく日本に返却され、広島の原爆に関する資料は広島大学原医研に保管されています。 資料の総数は、解剖記録を中心とした英語の医療記録が9,060人分、パラフィンブロック標本が284人分、顕微鏡スライド標本が669人分などとなっています。 しかし、個人情報を含むため一般の閲覧は認められていません。
 「被爆者スライド標本データベース」では、これらの資料の中から1945年末までの早期に解剖が行われた症例に関するスライド標本100人分(6月27日現在)について、個人情報を除き、代表的な画像と医学記録などの解説に性別、被爆時の年齢、被爆状況などの情報を加えてまとめたものを、年齢、爆心地からの距離、被爆場所などから検索して閲覧できるようになっています。
 公開されているデータは被爆後早期の放射線による症状を示す数少ない貴重な情報です。 また、被爆者スライド標本の原本は、終戦後の物資不足の中で、被爆直後から懸命に原爆症と戦い、被害の解明に努め、できるだけ多くの記録を残そうとした人々の姿や当時の医療状況を知ることのできる歴史的な資料でもあります。
 データベースは今後も少しずつ情報が追加され、更新されていく予定です。
被爆者スライド標本データベース
地図上のマークをクリックすると、その場所で被爆された方の、個人情報を除いた当時の記録などを閲覧することができます。
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