和文機関紙「平和文化」No.209, 令和4年8月号

海外へのオンライン被爆体験証言

~世界で響く証言者の思い~
 広島平和記念資料館では、オンラインで広島の被爆者と世界各国の人々を結び、被爆体験証言を聴いていただく、「海外へのオンライン被爆体験証言」を、平成22年度(2010年度)から実施しています。
 海外にいる方を対象とし、聴講者が10人以上いれば無料で実施することができます。 参加者は自国にいながら被爆者とつながって、生の声に触れ、質疑応答時間を通して双方向の交流を持つことができます。
 核兵器使用のリスクが世界を脅かす昨今、新たに4名の被爆者が海外へのオンライン証言に臨みました。 被爆当時の状況を聴講者が鮮明にイメージできるよう、構成や伝え方に工夫を凝らし、終盤の質疑応答まで丁寧に自身の被爆体験を届けました。 そのうちの一人、八幡照子(やはた てるこ)さんは、海外の方にも自身の思いをより響かせたいという思いを胸に、常日頃から練習を重ねている英語で最後のメッセージを伝え、聴講者の胸を打ちました。
被爆体験を語る八幡照子さん
4月、初めてオンラインで海外の方に被爆体験を語る八幡照子さん
 証言を聴いたアメリカの学生達からは、「核兵器がいかに破壊的で恐ろしいものか痛感した」、「いかなる場合でも核兵器を正当化してはならない」といった声が多数寄せられ、被爆者の思いを引き継ぎ、未来を担う世代が核兵器の脅威がない中で安心して暮らせるよう、自身ができる事を模索しようとする力強く頼もしい眼差しが画面越しでもしっかりと伝わりました。
 オンライン証言は被爆者の声を世界に届け続ける重要なツールとして、ここ数年で特に広がりを見せています。 昨年度の実施回数は当事業がスタートして以来最多の27回にのぼり、1,000人以上の方に被爆体験をお聴きいただきました。 このことは、近年特に力を入れてきたオンライン環境整備の成果が出始めていることと、国外でも高まる被爆の実相や被爆体験への関心の表れだと実感しています。 当館では、昨今のような状況下でも被爆体験継承の歩みを止めないためのオンライン環境の整備を続け、今後も一人でも多くの方々に、原爆の惨禍について知り、核問題について考えていただけるよう、方策を模索し続けます。
(平和記念資料館 啓発課)
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