和文機関紙「平和文化」No.213, 令和5年9月号

第11回NPT再検討会議に平和首長会議代表団を派遣

 平和首長会議は、オーストリア・ウィーン市で開催された第11回NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議第1回準備委員会へ、7月29日(土)~8月4日(金)の日程で、松井一實(まつい かずみ)会長(広島市長)、鈴木史朗(すずき しろう)副会長(長崎市長)、香川剛廣(かがわ たけひろ)事務総長(本財団理事長)を含む代表団を派遣し、国連・各国政府関係者等に対して、スピーチや個別の面会を通じて、核兵器のない平和な世界を願うヒロシマの心を伝え、具体的な核軍縮の進展を要請しました。
 また、広島県内で平和活動に取り組む高校生を派遣し、平和首長会議ユーフォーラムの開催等を通じて、次代の平和活動を担う青少年の育成を図りました。
第11回NPT再検討会議第1回準備委員会NGOセッションでのスピー
松井会長によるスピーチ
松井会長によるスピー
 松井会長は、G7広島サミットにおいて核保有国を含む各国首脳に「ヒロシマの心」を深く知っていただいたことに触れながら、「今や破綻している核抑止論を放棄し、核兵器廃絶に向けた具体的な行動を開始する必要があります。」と訴えるとともに、「今回の準備委員会の場で、具体的な核軍縮・不拡散措置を確実に進展させるための大きな一歩を踏み出されることを期待しています。」と述べました。 続いて、鈴木副会長は、「被爆の実相を知ることは、核兵器のない世界に向けた出発点であり、世界を変えていく原動力です。核兵器の脅威は、広島、長崎だけの過去の出来事ではなく、地球上に生きるすべての人たちの現在と未来の課題です。」と述べ、「長崎を最後の戦争被爆地に」という言葉でスピーチを締めくくりました。
G7各国代表との面会
 G7のうちフランス、英国、米国、日本の4カ国の代表と面会し、G7広島サミットでは、各国首脳が被爆の実相に直接触れ、芳名録へ記帳されたこと、また、その内容から、世界恒久平和の実現を祈念し、核兵器は二度と使われてはならないとの「ヒロシマの心」を深く知っていただけたことが伝わるものであったと言及した上で、核兵器廃絶に向けて、広島ビジョンに基づいた具体的な行動を要請しました。 また、平和首長会議としては、為政者が核兵器廃絶に向けた具体的な行動を行うための後押しをしたいとの考えを伝えるとともに、加盟都市の更なる拡大への協力を要請しました。
 小笠原一郎(おがさわら いちろう)軍縮会議日本政府常駐代表に対しては、核兵器禁止条約の締結を要請するとともに、まずは第2回締約国会議へオブザーバー参加していただきたいと呼び掛けました。
国連関係者等との面会
中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交及び面会
 松井会長が広島の高校生の活動について紹介した後、高校生代表から中満泉(なかみつ いずみ)国連事務次長に、「これは一筆一筆、核兵器廃絶を願う気持ちが込められた署名です。」と約4万4千筆分の「『核兵器禁止条約』の早期締結を求める署名」の目録を手交しました。
 中満国連事務次長は、「被爆地広島の若い世代が核兵器をどう廃絶していくか真剣に考え、街頭に立って署名を集めるという実際の行動に移し、核軍縮にコミットしていることに勇気づけられた。」と述べられるとともに、「若者には、恐れることなく活動を続け、自分たちの声をどんどん上げてほしい。」と激励されました。 中満国連事務次長から相互理解や情報発信についてアドバイスを受けた高校生からは、面会後、「多様性を尊重し、意見の異なる相手の話を誠実に聞くことの大切さを実感した。今後、人の心に訴え掛けるような発信に努めたい。」との感想が聞かれました。
中満国連事務次長(中央)と高校生
中満国連事務次長(中央)と高校生
ヴィーナネン第11回NPT再検討会議第1回準備委員会議長との面会
 松井会長は、G7広島サミットで各国首脳が被爆の実相に触れたことに言及するともに、厳しい国際情勢の中で、新たなプロセスの出発点となる今回の準備委員会に対する期待を述べました。
 これを受け、ヤルモ・ヴィーナネン議長は、被爆地からの平和のメッセージは、今回の会議に参加する全ての代表団にとって重要なものであると述べられるとともに、核軍縮・不拡散の先に核兵器のない世界があり、核軍縮が進展しない状況を変えなくてはならないとの見解を示されました。
 その他、ブラジル、韓国、オーストリア、キリバスからの出席者との意見交換も行いました。
主催行事等
平和首長会議ユーフォーラムの開催
フォーラムでの発表の様子
フォーラムでの発表の様子
 同準備委員会のサイドイベントとして開催した本フォーラムは、立ち見が出る盛況の中、広島及びウィーンの高校生を始めとする世界各国の若者8組が、核兵器廃絶と平和な世界の実現に向けて自らが取り組んでいる活動内容を発表し、活動を通じて感じた平和を希求する思いを共有しました。 参加者からは、「日本の若者の取組に感銘を受けた。」、「ここに集った若者が連帯してネットワークを構築し、共に目標に向かって歩んでいきたい。」といった決意の言葉が聞かれました。
 フォーラムの最後には、中満国連事務次長から、「次代を担う強い意志を持つ若者の皆さんには、国際関係や軍縮について深く学び、 政府や外交官を突き動かすことができるような効果的な発信をする存在になってほしい。」と激励の言葉をいただきました。
 フォーラムを終えた広島の高校生からは、「自分たちの活動を知ってもらえたことが嬉うれしかった。」、「いろいろな国の人の話を聞くことができて、新しい刺激になった。」との感想が聞かれました。
平和首長会議役員都市意見交換会の開催
 広島市、長崎市、ポルトガル・エヴォラ市、ベルギーイーペル市、スペイン・グラノラーズ市の5つの役員都市が出席し、各都市における取組発表及び活発な意見交換を行いました。
平和首長会議原爆展の開催
 同準備委員会の会期中(7月31日~8月11日)、会場内において、会議参加者や国連関係者に、広島・長崎の被爆の実相や核兵器の非人道性、平和首長会議の取組について理解を深めてもらうため、平和首長会議原爆展を開催しました。
7月31日には、武井俊輔(たけい しゅんすけ)外務副大臣が原爆展を視察し、松井会長及び鈴木副会長から展示内容の説明を行いました。
(平和首長会議運営課)
 
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