現在、広島市には
2万人以上の日本語を母語としない外国系の市民が暮らしています。
そうした方々が安心して快適に暮らせるよう、広島平和文化セン
ターでは、日本語を学ぶ機会を提供し、日本語によるコミュニ
ケーションを促進する様々な日本語教育事業を実施しています。
2月18日(日)に、SENDA LAB(広島大学東千田キャンパス地域連携フロア)で、「にほんごでつながる―外国人が日本で子育て」を
テーマとして日本語教育事業の報告会を開催し、
56名の方にご参加いただきました。
基調講演は、アメリカ・カンザス州出身のアシュ
リー・サウ
ザーさんにお願いしました。
パレスチナのガザ・ヨルダン川西岸地区で国際NGOの職員として勤務された後、現在教鞭をとる広島の私立高校では、約20年にわたって、海外の学生と日本の学生の交流や、日本の学生の海外研修を企画する等、国際理解教育を精力的に進めてこられました。
また、日本で
2児を育てた経験もお持ちです。
講演ではまず、外国に背景をもつ子どもたちが日本で自己形成を行っていく際に、「日本に同化するか。」、あるいは、「出自の文化やアイデンティティを尊重するか。」の選択を迫られる場面が度々生じる中で、大切なことは「どちらか」ではなく「どちらも」子どもの個性であり、尊重することだと強調されました。
外国系の市民が、周りと違う自分の個性や考えを大切にしつつ、日本人と上手くコミュニ
ケーションを取り、相互理解を深めながら暮らしていくという姿勢を持つことも大切です。
同時に、日本人のみなさんも「違いを大切にする」社会づくりを意識していくことが重要です。
文化の違いから、戸惑ったり、心無い言動に嫌な思いをしたりしている人がいる時、「郷に入っては郷に従え。」ではなく、「そうした訴えは、日本社会を多様に、より豊かに、変えるチャンスかもしれない。」と捉え、日本人が外国人と一緒に乗り超えてほしいと言われていました。
「国際教育は平和教育」だと熱を込めて語るサウザーさん
また、「国際教育は平和教育」だと訴えられました。
異なる考えを持つ相手と共に過ごし、対話して得た、「意見が違っても分かり合える。」と実感する確固たる経験が、争うことを踏みとどまり、平和を築くための鍵になると語られました。
「国際教育は平和教育」だと熱を込めて語るサウザーさん
講演の後、グループに分かれて車座になり、子育て中の外国人のお父さんたち、お母さんたちから、日本での子育ての苦労をどう乗り越えたか、また、子育て中の喜び等が紹介されました。
メキシコ人で主夫のお父さんが、「日本では子育て支援の多くが母親向けに設計されていて困ることがある。それでは育児の母親偏重は変わらない。」と体験を話すと、日本人の参加者も共感するように頷いていました。
外国人市民が日本に持ち込む新しい風をきっかけとして、より良い日本に向かっていけるように、外国人と日本人が
一緒に取組むべきことは、たくさんあるのではないかと考えさせられる報告会となりました。
(国際市民交流課)