和文機関紙「平和文化」No.221, 令和7年10月号

第1回平和学習を考える教師の集いが始まりました

 広島修学旅行に関する栗原貞子(くりはら さだこ)さんの「始めに教師ありき。教師が人間的感動を持って生徒にぶつかって行くならば、生徒たちも感動の火花をもって答えるのである。」という言葉を糧に、8月21・22日の2日間開催しました。
 東京都、茨城県、千葉県から21名の校長・担当教師、広島市から平和学習に携わる11名の教師・広島市教育委員会指導主事、さらに広島大学教育学部教員が参加し、平和学習に関するグループ・ディスカッションを行うとともに、広島での様々な平和学習プログラムを体験しました。
 1日目の冒頭、被爆体験講話では、元小学校校長の梶矢文昭(かじや ふみあき)さんの証言を聞き、参加者からは、「ひとつひとつの言葉が重く感じた。」、「その当時を知る人にしか、語れない凄まじさを感じた。」との声がありました。
 平和学習の事例発表では、中央区立佃(つくだ)中学校から「広島市立己斐(こい)中学校とのオンラインと現地で実施した学校間交流」、港区立御成門(おなりもん)小・中学校から「広島に修学旅行に行くことを決めるまでのプロセス」の発表がありました。
 グループ・ディスカッションでは、広島修学旅行に関する2つのテーマ〈①広島での現地学習の質を高めるための視点と取組(広島での現地学習はどうあるべきか) ②事前・事後学習を広島での現地学習にどうつなげるか、またそれを学校全体の活動にどう発展させるか〉について、関東の教師と広島の教師が4人程度のグループに分かれて、活発に議論を交わしました。 あるグループでは、平和について自分事として考えさせるために、「自分の生き方と結びつくようにこども自身が課題をつくるようにしている。」(関東の教師)、「いきなり平和について考えましょうではなく、カープなど興味のあるところから調べてみたら80年前のヒロシマに辿(たど)り着いた、となるようにしている。」(広島の教師)といった実践事例の意見交換がありました。 また別のグループでは、「なぜ広島に修学旅行に行くのか」という広島の教師の問いから、「今も世界に存在し、使用される可能性のある核兵器の被害を受けた場所だから」、「遺産が街中に目に見える形で残っている場所だから」といった意見が出ていました。
関東と広島の教師によるグループ・ディスカッション

関東と広島の教師によるグループ・ディスカッション

 その後の全体発表では、広島市が作成した「ひろしま平和ノート」について、「(関東でも)ぜひ教材として使いたい。」と好評でした。 多くの参加者から、「もっと話をする時間が欲しかった。」という声があがっていました。
 2日目は、平和記念資料館や本川小学校平和資料館の見学・慰霊碑巡り、朗読体験といった被爆の実相を学ぶプログラムが中心でした。 その活動の中で、中学生の犠牲者が多かった理由や、本川小学校でたった一人生き残った児童の話などに、真剣に耳を傾ける参加者の姿が見られました。 また、「ボランティアの方々の思いも同時に受け取れた。それぞれの方が、学び、考え、そして吟味して伝えているのを目の当たりにし、とても感動した。」との声がありました。
関東からの参加者と奥おく原はら球たま喜き元本川小学校長(左端)及びセンター職員

関東からの参加者と奥原球喜(おくはら たまき)元本川(ほんかわ)小学校長(左端)及びセンター職員

 令和8年度は、神奈川県の公立中学校(414校)に対象を拡大し、内容もさらに充実したいと思います。 経費は広島平和文化センターが負担しますので、平和学習に興味をお持ちの学校・教師の皆さんの参加を是非お待ちしています。
<参加者の感想>
  • 充実した、学びの多い、素敵な研修会だった。多感な時期に広島や長崎を訪れることは必要だと改めて感じた。また、中学校の3年間を通して、少しずつ平和学習を積み重ねることの大切さを学んだ。このような意義や取組を、広島からもっと発信してほしい。
  • 広島の学校では平和教育が当たり前に根付いていることや、教師の意識の高さ、熱量を感じた。特に若い教師が強い気持ちを持って平和学習を推進している姿を見ることができたのは、大きな収穫だった。広島大学教育学部での平和学習の理論等についても、さらに学んでみたい。
  • ピース・ボランティアの話はとても分かりやすかった。修学旅行でも取り入れたい。また、特に学校間交流も印象に残った。モニター校制度についてもさらに知りたい。
  • 無知な自分が参加して良いか不安に思っていたが、広島の方々にとても温かく迎え入れていただいた。そして熱量が高い先生方と触れ合う中で、意欲だけでなく知識も深まり、より一層広島修学旅行を計画し、実行していこうと思う気持ちが強くなった。
  • 素晴らしい内容で、今後さらに参加者が多くなる気がする。同僚教師に(教師の集いを)勧めていくことはもちろん、これからを生きる生徒たちに広島や平和について語り継いでいくためにも、関東の学校による広島修学旅行が少しでも増えたらと考える。
(平和学習課)
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