和文機関紙「平和文化」No.222, 令和7年12月号

「広島こども平和サミット」を開催しました

 平和文化月間の11月16日、平和記念資料館のメモリアルホールで約170人の参加を得て開催しました。
 オープニングイベントでは、パンフルート、ピアノ、バイオリンの3種類の被爆楽器による演奏を行いました。 まず始めに、安田(やすだ)女子中学高等学校管弦楽部が、爆心地から530mの中区中町(なかまち)の白神社(しらかみしゃ)前の被爆樹木 ムクノキを用いて製作されたバイオリンによる「広島の空」の演奏を行いました。 次に、千田(せんだ)パンフルート合唱隊が、爆心地から1,640mの千田小学校の被爆樹木 カイヅカイブキを用いて製作されたパンフルートと、爆心地から1,800mの中区千田町の民家で被爆したピアノによる「翼をください」の演奏を行いました。 最後に、被爆楽器の演奏に合わせて、参加者全員で「アオギリのうた」を合唱しました。
「翼をください」の演奏
「翼をください」の演奏
 第1部では、児童文学作家の朽木(くつき しょう)さんにより、『~ヒロシマのこどもたちと考える ―「忘れないこと」、「悼むこと」、その先には?』をテーマに、講演いただきました。
朽木祥さんによる講演
朽木祥さんによる講演
 朽木さんは、講演の中で、記憶の継承にあたって歴史的な認識や理解を深めることの大切さについて触れられました。 すなわち起きたことの悲惨さを伝えるだけでなく、どうしてそのようなことが起きたのか、その背景にある愚かな思想や体制も伝えていかなければならない。 そして現代に生きる私たちが「負の記憶を継承することは、二度と同じ過ちを繰り返さないよう警戒することに繋(つな)がる。」と語られました。 また、「読者が戦争や平和を自分ごととして捉え、犠牲者に共感共苦を抱くことができるような物語が書ければ。」と話されました。 参加した中学生から、「心に残る本を書く上で、大切にされていることは何ですか。」との質問があり、「例えば児童向けであっても、こどもの知性を信じて手加減せずに書き、情景描写や行間からも思いが伝わるように努めている。」と回答されました。
 第2部の「平和のバトンをつないでいこう」では、まず、袋町(ふくろまち)小学校の児童が、平和学習を受けた際に投げ掛けられた「平和の反対は、何だと思いますか?」という問いを基に考えた平和への取組について発表を行いました。 その中で、平和学習で大切にしていることは、「自分事」として考え、「自分の言葉」で伝えることであり、「① 知る・考えること、② 伝える・交流すること」の繰り返しが大切であると説明しました。 また、実際に、袋町小学校で被爆された方から直接話を聞き、被爆の実相を知った上で、市内外の学校との交流を通して、伝える活動を実践したことについて発表しました。
 続く、吉島(よしじま)中学校の生徒は、「ともに ~生徒会から広がる輪~」というテーマで、平和への取組を発表しました。 その中で、吉島中学校の平和宣言「① 事実を受け止め、後世に残していくこと、② 小さな平和を大切にしていくこと」を紹介しました。 また、具体的な活動として、被爆ピアノについて学んだこと、体育祭や地域ボランティアなど、小さなことから平和について考えて行動したことを発表しました。
広島市立吉島中学校による平和の取組発表
広島市立吉島中学校による平和の取組発表
 最後のユース・ピース・ボランティアによる取組発表では、まず、「ヒロシマ平和学習受入プログラム」で全国のこどもたちの平和学習をサポートした活動について、研修から本番当日までの様子を振り返りながら概要説明を行い、また、動画を放映しました。
 続く、パネル・ディスカッションでは、英語で活動している、高校生・大学生のユース・ピース・ボランティアである大学4年生の玉城陽菜多(たまき ひなた)さんが、モデレーターとなり、パネリストの話を聞きました。
 パネリストとして参加した稲生志緒理(いのう しおり)さん、齊藤里帆(さいとう りほ)さん、阪田夏帆(さかた なつほ)さん、矢澤輝一(やざわ てるかず)さん、山下裕子(やました ゆうこ)さんの中学生3名、高校生2名は、8月5日~7日に開催した「全国平和学習の集い」をサポートするボランティア活動に参加した動機を紹介した後、テーマ1「広島の代表として全国から来たこどもたちと議論してどう感じたか。」についてディスカッションしました。 パネリストからは、「当日は緊張したが、研修で学んだことが役に立った。」、「上手く議論を進めることができ、自信がついた。」という意見がありました。
ユース・ピース・ボランティアによるパネル・ディスカッション

ユース・ピース・ボランティアによるパネル・ディスカッション

 次に、テーマ2「今回学んだことを活かして、これからどういう風に平和への取組を行っていきたいか。」では、「大きなテーマだったが、まずは、身近な自分ができる小さなことから始めたい。」「英語ボランティアとして、次の段階へ進みたい。」という意見が多く聞かれました。
 質疑応答では、参加した若者から、「若者が平和活動を行うことの意義はどのようなことがあると思うか。」との質問があり、パネリストの山下裕子(やました ゆうこ)さんが、「若者が、大人にもっとこうしてほしいと言うだけでなく、ボランティア活動などを通して平和について学び、実際に行動することで、自分たちが望むような未来をつくることに繋(つな)がるのではないか思う。」と回答しました。
 参加者からは、「平和について改めて考える1日となり、自分でできることをしていこうと思った。」、「素晴らしいサミットだった。平和について深く考え、新たな価値観を手に入れられた良い機会となった。」といった声が寄せられました。
(平和学習課)
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