和文機関紙「平和文化」No.222, 令和7年12月号

第1回ユース・ピース・ボランティア専門研修を開始しました

 令和7年11月から、ユース・ピース・ボランティアの大学生10名を対象に、核兵器廃絶の課題に社会的・構造的に取組む力量を身につけることを目的とした、「第1回ユース・ピース・ボランティア専門研修」を開始しました。
 研修では、被爆の実相のさらに深い理解に加え、核軍縮、人道イニシアティブ、国際関係論などの講義やグループ討議を通して、主体的に核兵器の非人道性を発信するための専門知識を習得し、若い世代として戦争や核兵器の廃絶を進める力を獲得するためのプログラムを実施していくことにしています。
 このため、研修中には、大学教員や報道関係者など、広島・長崎の第一線で活躍する専門家から、各分野に関する講義を受講するとともに、習得した専門知識を基にグループによる討議や意見交換を重ね、最終的に来年3月に開催する報告会で「核兵器廃絶に向けたヒロシマ・ユース・ピース・ボランティアの提言」を発表することを目標にしています。
専門研修第1講の様子

専門研修第1講の様子

 この研修では、とりわけ、核兵器の非人道性などに関する深い理解や、多様な背景を持つ人々と共に平和構築活動を広めるコンピテンシー(知識・スキル・姿勢)を身に付けることを重視しており、11月23日に開催された第1講では、広島平和文化センターの谷(たに)副理事長から「人道イニシアティブ」に関する講義を受講するとともに、今年8月6日に開催した被爆80周年特別国際シンポジウムに向けて当センターで作成した映像作品「人類の壊滅に内実を与えるヒロシマの原爆体験」を視聴しました。 さらに、広島大学大学院人間社会科学研究科教授の中矢礼美(なかや あやみ)先生による「ユース・ピース・ボランティア コンピテンシー」に関する講義を受講し、核兵器の非人道性に関する理解を基に、多様な背景を持つ人々と共に平和構築活動(戦争や核兵器の廃絶を進める活動など)を広めるための知識・スキル・姿勢を学びました。
 12月からも月に1、2回のペースで、安全保障、核軍縮、核兵器を巡る世界情勢などの講義を受講するとともに、来年2月には、長崎視察を行い、長崎の専門家による講義や、原爆資料館をはじめとした平和関連施設の視察などを予定しています。
 また、受講生は、この研修の終了後に引き続きユース・ピース・ボランティアとして、国連ユース非核リーダー基金派遣者や国連軍縮フェローズの若手外交官が広島を訪問した際の討議のリード役として活動いただくとともに、受講生のうち2名程度を令和8年5月に開かれるNPT(核不拡散条約)再検討会議の関連会合に派遣することなども検討しています。
 広島平和文化センターとしては、「ヒロシマ平和学習受入プログラム」に参加した多くの中学生・高校生の活動意欲が高まっていることを踏まえ、この専門研修の受講生を一つの到達点とし、中学生から大学生までを一貫するユース・ピース・ボランティア体系の下での人材育成を目指すことにしています。
 また、活動後も、ボランティアを経験した若い世代に、平和を大切にする広島のまちの担い手となってもらうとともに、各界で平和人材として活躍することを期待しています。
(平和文化企画課)

ユース・ピース・ボランティア専門研修に期待すること

《中矢 礼美 広島大学 大学院人間社会科学研究科 国際教育開発プログラム 教授》
中矢先生

 大学生・大学院生がユース・ピース・ボランティア、将来社会人としても平和構築活動を推進していけるコンピテンシーの育成を目指して、体系的に組み立てられた本研修は、非常に意義深いものです。
 研修の最終成果としての提言は、単なる理想を語ることではなく、多様な背景や役割をもつ人々に、論理的・合理的で説得力ある平和構築にむけたステップを示し、協働を促す力を示すものです。
 提言力は未来を描く力であり、未来への考え方は現在の行動を形づくり、人々の社会変革力を高める活動へと広がります。
 この提言力の向上に向けて、すべての研究講義が組み立てられています。 第1回研修後のコンピテンシー自己評価では、「同じ意見を持つ人と合意形成するのは簡単であるため、異なる意見を持つ人と共に取り組むことが重要だと学んだ」「創造的なアイデアを出すことはできなかったがジレンマの例を挙げて話すことはできた」などの記述がありました。
 参加者は、講義で理解した知識をもとに、平和にむけた活動の在り方を議論することで、ユース・ピース・ボランティアのコンピテンシーを着実に向上させているようです。 3月までの研修を通じて、参加者の皆さんが平和構築エージェンシー、そして平和構築に向けて協働する人々を育てる平和教育者へと成長されることを心から期待しています。
公益財団法人 広島平和文化センター
〒730-0811 広島市中区中島町1番2号
 TEL (082) 241-5246 
Copyright © Since April 1, 2004, Hiroshima Peace Culture Foundation. All rights reserved.