米国・ニューヨーク市で開催された第11回NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議へ、松井一實
(まつい かずみ)平和首長会議会長(広島市長)、鈴木史朗
(すずき しろう)副会長(長崎市長)及 び香川剛廣
(かがわ たけひろ)事務総長(本財団理事長)等から成る代表団を派遣しました。
NGOセッションでのスピーチ
開会の挨拶で、グテーレス国連事務総長は、NPTは世界の破滅を防ぐためのものであるが、記憶は薄れ、その精神は蔑ろにされているとして、核軍縮に再び息吹を吹き込む必要があると訴えました。
また、NGOセッションで、松井会長は鈴木副会長と共に平和首長会議の代表としてスピーチを行いました。
スピーチでは、現在、世界各地で多くの武力紛争が続き、核兵器使用のリスクがかつてなく高まる中、市民が際限のない不安を抱えながら日々を送っている現状を指摘しました。
その上で、NPT体制の重要性を再確認するとともに、各国政府代表に対し、核抑止に依存しない真の平和の実現を願う市民社会の声を受け止め、対話による外交努力を通じて、核軍縮・不拡散を誠実に前進させるよう求めました。
核保有国代表、国連関係者等との面会
緊迫する国際情勢の中、核保有国4か国を含む多くの各国政府・国連代表者等との意見交換を行いました。
それにより、いずれの国においても、非人道性の観点から、核兵器は人類を滅ぼしかねないものであることは共通認識となっており、核兵器のない世界を願っていること、そのため、NPT体制の重要性を認識していることが確認されました。
平和首長会議としては、核保有国に対し、NPT第6条の義務を誠実に履行するよう求めるとともに、この要請が国境を超えた市民社会の切なる願いであることを強調しました。
グテーレス国連事務総長ほか面会者からは、平和首長会議の国際的な平和活動に対する期待の声が寄せられ、改めてその意義と重要性を認識しました。
今後の活動展開のさらなる原動力にしていきます。
UNIDIRとのサイドイベントの共催
また、UNIDIR(国連軍縮研究所)フェローで本財団の専門委員を務める河野勉
(こうの つとむ)氏に助力いただき、今回初めて平和首長会議とUNIDIRとの共催で、「NPTの現状を振り返る」と題するサイドイベントを開催しました。
具体的には、これまでの再検討プロセスにおける取組の成果と課題を振り返るとともに、NPTが今後も国際社会において意義ある枠組みであるための方策について議論を行いました。
ロビン・ガイスUNIDIR所長の司会進行によりイベントが開始され、まず、3名のパネリストがプレゼンテーションをしました。
まず、UNIDIRから参加した中東非大量破壊兵器プロジェクトのチェン・ザック・ケイン主任は、AIなど新技術が新たな課題を生んでおり、核の拡散リスクを高める可能性もあり、その対応策としてIAEAの査察体制強化などがあると述べました。
次に、広島市立大学広島平和研究所の大下隼
(おおした しゅん)講師は、「放射線治療などの原子力の平和的利用のための途上国向け技術協力は、彼らのNPTの運用上の不満を緩和してきた。これが核軍縮の誠実交渉義務の進展不足を覆い隠さないよう、国連軍縮部にNPT事務局の設置を提案する。」と発言しました。
続いて、元国連軍縮局職員のランディ・ライデル氏は、「核兵器国と非核兵器国の間に深刻な乖離
(かいり)が存在しており、この度の会議において最低限、各々の基本義務を再確認することが重要である。」と発言しました。
最後に、司会が、NPT体制が大きな圧力に直面している中でも、なおその維持・強化が不可欠であると強調し、会を締めくくりました。
なお、サイドイベント終了後の松井会長とロビン・ガイス所長との面会において、今後とも平和首長会議とUNIDIRの間の連携強化を図っていくことが確認されました。
平和首長会議ユースフォーラムの開催
広島平和研究所の大下隼講師の司会進行の下、同会議のサイドイベントとしてユースフォーラムを開催しました。
広島なぎさ高校の2名は、被爆者の森下弘
(もりした ひろむ)さんのことばから「戦争を生み出したのは人間です。しかし、平和を生み出すのも人間です。」と引用し、「行動し続ければ、何かが変わります。」と訴えました。
ノートルダム清心
(せいしん)高校の2名は、「核抑止に頼らず、対話や国際交流を通じて相互理解を深めることが重要である。」と発表しました。
広島大学附属高校の2名は、「核兵器の危険性について、科学的・実証的な観点から人々に警鐘を鳴らし続けなければなりません。」と訴えました。
発表後のディスカッションでは、互いの平和活動内容を共有するためのプラットフォームが必要だとの聴講者からの意見に対し、国連軍縮部の職員は、軍縮への若者の関与の必要性や人や組織のつながりの重要性に触れ、幅広く情報共有できるプラットフォームを整備する予定であると発言されました。
また、核軍縮における理想と現実のギャップをどのように埋めていくべきかとのユースからの問いに対しては、国連軍縮部の研修生から「広島・長崎は素晴らしい取組を行っており、この場にいること自体が意思決定者への影響につながっている。」との激励の言葉が寄せられるなど、活発で有意義な意見交換が行われました。
今回の派遣を通じてユースは、核兵器問題や平和構築に関する多様な視点に触れ、平和は国や立場を越えて共に築いていくべきものであることを改めて認識することができました。
また、「国際情勢が厳しい今だからこそ、広島から核兵器の危険性を訴え続けたい。」との声も聞かれ、自らの役割や社会との関わり方について考えを深める貴重な機会となりました。
平和首長会議としても、今後も若者が主体的に学び、考え、行動する機会を創出していきます。
(平和首長会議・国際政策課)