新しい ユース・ピース・ボランティアの役割
—内外での平和発信への参画—
岡上 修
公益財団法人広島平和文化センター 平和文化企画課 課長補佐
第1回ユース・ピース・ボランティア専門研修の実施
被爆から80年以上が経過し、被爆者の方々が高齢化する中、壊滅的な原爆被害の実相と核兵器廃絶を願うヒロシマの心を国内外に発信し続けるため、若い世代が積極的に参画していくことが課題になっています。
このため、(公財)広島平和文化センターでは、広島で学生生活を送る10名の大学生を対象に、核兵器の非人道性に関する深い理解や多様な背景を持つ人々と共に平和構築活動を広めるためのコンピテンシー(知識・スキル・姿勢)を身に付けるため、「第1回ユース・ピース・ボランティア専門研修」を初めて実施し、令和7年11月から令和8年3月まで10回にわたる核軍縮や国際関係論などの専門家による講義や討論、長崎視察などを行いました。
また、その成果として、受講生が核兵器廃絶に向けた提言をまとめ、3月末に広島市長や被爆体験証言者、ヒロシマ・ピース・ボランティア等の出席の下、提言報告会を行いました。
提言では、SNSを使って若者による意識の変化を起こすことで核兵器廃絶に向けた政策を推進する、若者が平和について気軽に話し合える場を設けるといった核兵器廃絶に向けた具体的な取組が示されましたが、今回、そうした提言を基に国際社会で核兵器廃絶を訴えるため、第11回NPT再検討会議に専門研修の受講生である安田女子大学3年生の植田真子
(うえだ まこ)さんと広島大学3年生の北薗
(きたぞの)いろはさんを、高校生6名とともに平和首長会議ユースとして派遣しました。
第11回NPT再検討会議での活動
現地では、NPT再検討会議のサイドイベントとして国連本部で開催された平和首長会議のユースフォーラムに登壇し、提言について英語でプレゼンテーションを行ったほか、現地にある大学等を訪問し、若い世代同士で地域を越えて核軍縮に関する意識をいかに高めていくかなどについて話し合いました。
また、NPT再検討会議のNGOセッションや平和首長会議主催のサイドイベントを傍聴し、被爆地の訴えが国連の場で発信される瞬間を見守ったほか、中満
(なかみつ)国連事務次長や市川
(いちかわ)軍縮会議日本政府常駐代表など、核軍縮や平和分野の第一線で活躍されている方々とも面会し、核兵器廃絶に向けて取り組む際のアドバイス等をいただきました。
派遣を振り返り、植田さんからは「平和のあり方について学ぶことができた今回の経験を活かし、私の中での軸である『平和について考えるきっかけを与えられる存在になれること』を大切にしながら、今後も発信を続けていきたい。」、北薗さんからは「市民一人ひとりが身近なことからでも平和について考え、声を上げ続けることで少しずつ社会の意識や価値観を変えていけるのではないかと感じた。」とのコメントが寄せられ、自分たちが国際社会で果たすべき役割などについて深く考える機会になりました。
専門研修の成果
専門研修では、受講生それぞれが核兵器廃絶という目標は共有しつつも、それを実現する手段や現在の安全保障環境の認識については意見が分かれる場面も多く、話し合いを重ねてお互いの考え方を理解し、粘り強く一致点を探りながら提言をまとめました。
さらに、提言をNPT再検討会議等で発信し、若者同士で意見を交わすことで、核兵器廃絶に向けて国を越えた共通認識を見出すことができました。
それらのプロセスは、ある意味で、国際社会でこれまで行われてきた核軍縮や核兵器廃絶に向けた歩みを受け継ぐものであり、専門研修の受講生全員の努力によって成果に結実したものだと思います。
平和文化のバトンを若い人に託す
こうした経験を踏まえ、受講生のみなさんには、今後も若い世代の平和文化の担い手として活躍を期待しています。
また、提言にあった「平和について気軽に話し合える場」については、早速今秋にも開催できないか検討しています。
さらに、10月からは、第2回の専門研修を開始する予定です。
広島は、昭和24年(1949年)の広島平和記念都市建設法により、平和記念都市ヒロシマとなりました。
その過程では、市民投票で90%を超える賛成がありました。
平和記念都市を完成するにはまだまだ時間が必要ですし、それを進めるのは若い世代の皆さんです。
これからも、ユース・ピース・ボランティア活動全体を通し、平和文化のバトンを若い世代に託していきたいと考えています。
(平和文化企画課)