NPT再検討会議に合わせ平和首長会議が代表団を派遣
―活動報告と今後の展開―
|
平和首長会議(会長 松井一實広島市長)は、今年4月、アメリカ・ニューヨーク市で開催されたNPT(核不拡散条約)再検討会議に合わせて代表団を派遣しました。
また、「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」の高校生10人が同行しました。
松井市長の主な用務
4月26日(日)
平和NGO集会で挨拶を行い、核兵器のない平和な世界の実現に向け、力を合わせて、大きなうねりを起こすよう参加者に呼び掛けました。
続いて、参加者と共に平和首長会議のバナーやプラカードを掲げて大通りを行進し、2020年までの核兵器廃絶をアピールしました。
|
平和行進
|
行進の終了後、アンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表とタウス・フェルーキNPT再検討会議議長に「核兵器禁止条約」の交渉開始等を求める市民署名約百十万筆の目録を手渡すとともに、参加者に「核兵器禁止条約」締結に向けた世界的な動きを創り出そうと呼び掛けました。
4月27日(月)
広島・長崎の声を結集し、核兵器廃絶を広く世界に訴えることを目的とした「ヒロシマ・ナガサキアピール集会」を開催し、被爆者や市民団体、ユース非核特使、国連・日本政府関係者等約100人が参加しました。
集会では、バージニア・ガンバ国連軍縮担当次席上級代表に対し、平和首長会議からの要請文、「核兵器禁止条約」の交渉開始等を求める約百十万筆の署名目録、及び広島女学院高校の生徒が折った折鶴を手渡しました。
このほか、岸田文雄外務大臣による挨拶、広島と長崎の被爆者による証言、市民団体、ユース代表による活動報告、広島県知事によるスピーチが行われ、最後に、「ヒロシマ・ナガサキ アピール in ニューヨーク」を採択しました。
続いて、日本原水爆被害者団体協議会が広島・長崎両市の共催で開催した「国連原爆展2015」に出席し、挨拶とテープカットを行いました。
会場では、広島平和記念資料館と長崎原爆資料館が提供した被爆資料や原爆ポスターも展示されました。
4月28日(火)
セバスチャン・クルツ オーストリア外務大臣及びタウス・フェルーキNPT再検討会議議長と面会し、核兵器廃絶に向けての一層の努力を要請するとともに、核軍縮に関する情勢についての意見交換等を行いました。
4月29日(水)
「平和首長会議ニューヨーク集会」を開催し、平和首長会議リーダー都市を始めとする加盟都市、平和NGO、国連及び政府関係者等70人が出席しました。
集会ではリーダー都市に就任した、タイ・バンコク市、カメルーン・フォンゴトンゴ市及びメキシコ・メキシコシティ市にリーダー都市認定証の交付を行ったほか、副会長都市の長崎市及びノルウェー・フロン市などから活動報告や今後の取組についての発表がありました。
続いて行ったパネルディスカッションでは、平和首長会議事務総長の小溝泰義本財団理事長のコーディネートの下、平和NGOの代表者が、NPT再検討会議後の核兵器廃絶に向けた法的整備の具体的な取組や核兵器廃絶に向けた市民社会の役割について議論しました。
最後に2020年までの核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた決意を示す「平和首長会議ニューヨークアピール」を採択しました。
4月30日(木)
昨年に続き2回目となる「平和首長会議主催ユースフォーラム」を開催し、「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」に参加した高校生10人、ナガサキ・ユース代表団の大学生2人、中国新聞ジュニアライター2人、タイ・バンコク市の大学生2人が、それぞれの平和活動や平和への思い、核兵器廃絶に向けた取組への決意等を発表しました。
また、インド・コーチ市の青年のビデオメッセージを紹介しました。
質疑応答では、田上富久長崎市長が、今後も継続して次世代への継承の取組を行うことが重要であるとの感想を述べ、また被爆者からも若い人たちの熱心な活動に対する感謝の言葉がありました。
続いて、アダム・シャインマン米国大統領特別代表(核不拡散担当)と面会し、オバマ大統領の広島・長崎訪問の実現や核兵器禁止条約またはそれと同様の法的枠組みについての議論を進めること等を要請しました。
さらに、広島市の被爆70周年記念事業及び国連創設70周年記念事業として、広島邦楽連盟とともに「国連創立70周年記念未来につなぐヒロシマ平和祈念コンサート」を開催し、国連や各国政府関係者等約100人が出席しました。
5月1日(金)
マンハッタン計画関係施設の国立歴史公園化を推進してきたアトミック・ヘリテージ・ファンデーションのシンシア・ケリー理事長と面会し、被爆地としての懸念や意見を伝えるとともに、核兵器の非人道性を伝える展示内容にしてもらいたいとの要望を行いました。
続いて、NPT再検討会議の公式プログラムであるNGOセッションでスピーチを行い、核兵器がいかに
|
非人道的で「絶対悪」であるかを各国の政府代表に対し強く訴えました。
その中で、近年、核兵器の非人道性についての問題意識が国レベルで着実に広がっている点を評価する一方で、国家間の対立やテロ行為が核軍縮交渉の進展を阻んでいるとする考えに強く反対の意を述べました。
さらに、世界の為政者に対し、今こそ核兵器廃絶に向けリーダーシップを発揮すべきであると強く呼び掛けるとともに、核不拡散条約(NPT)第6条に規定する核軍縮交渉を誠実に行う義務は全ての締約国にあることに触れ、一刻も早く核兵器禁止条約に関する交渉を始めることの重要性を訴えました。
|
NGOセッション
|
NPT再検討会議議長及び再検討会議に出席している締約国代表に対する要請文の発出
平和首長会議代表団一行の帰国後、当初NPT再検討会議の最終文書案に盛り込まれていた、世界の指導者らに広島・長崎の被爆地訪問を促す一文が削除されたことが判明しました。
平和首長会議では、この一文の復活と、核兵器の全廃に向けた法的な溝を埋めるための誠実な核軍縮交渉の遂行に向けた具体的コミットメントを盛り込むことを訴える要請文を、役員都市及びリーダー都市の連名で作成し、NPT議長等に送付しました。
NPT再検討会議の評価
4週間にわたって核軍縮の方策を討議した会議は決裂し、今後5年間の核軍縮の進め方を盛り込んだ最終文書は、中東の非核化を巡る対立により採択されず、極めて残念な結果となりました。
その一方で、核兵器廃絶に向けた今後の議論の進展を期待させる動きもありました。
例えば、最終会合に提出された最終文書案には、世界の政治指導者たちが核兵器の被害を受けた地域や人々と交流し経験を共有することや、核軍縮義務を全うするため、法規制を含めた効果的な措置を特定する作業部会を本年9月から開催予定の国連総会で設けることが盛り込まれました。
これは、平和首長会議が訴えてきた広島・長崎の被爆地訪問や核兵器禁止条約の交渉開始に関する議論がなされ、その重要性が多くの国に認識された結果であり、一定の評価ができると考えています。
また、今回の会議では、核兵器の非人道性を訴え不使用を求める共同声明に過去最多の159か国が賛同するとともに、オーストリアが提出した「人道の誓約」には107か国が賛同しました。
核兵器の非人道性の認識の更なる拡大とともに、多くの非核保有国の間に自らも核兵器の被害国となりうるという当事者意識が広がり、核兵器禁止に向けた法的枠組みの必要性の認識が広がったことについても評価できると考えています。
平和首長会議の今後の取組
今回のNPT再検討会議の結果を受け、核兵器の法的禁止についての多国間協議の場が設けられるかどうかが当面の課題であり、その動向を注視していかなければなりません。
いずれにしても、今後、平和首長会議として、核兵器の非人道性の議論の高まりを受けたこの流れを途切れさせないよう、被爆の実相を守り、被爆者の平和のメッセージを広め、その思いを将来世代や国境を越えて世界に伝えていく必要があります。
2020年までの核兵器廃絶に取り組む平和首長会議では、今後核兵器廃絶に向けて各国政府に具体的な対応を促す市民の声を更に大きくし、核兵器廃絶の国際世論を拡大するため、加盟都市のさらなる拡大と世界の各地域における主体的・自主的な活動を展開していきます。
|
|
(平和連帯推進課) |
|