本財団新理事長に小溝泰義前駐クウェート国特命全権大使が就任
  本年4月1日、前駐クウェート国特命全権大使の小溝(こみぞ)泰義(やすよし)氏が本財団の9代目の理事長に就任しました。
  小溝理事長は就任後すぐに、4月22日からスイスのジュネーブで開かれたNPT(核不拡散防止条約)再検討会議第2回準備委員会に松井広島市長とともに出席し、各国政府代表と意見交換を行う等、活発な活動を展開しています。
【略歴】
昭和23年生まれ。法政大学法学部卒。昭和45年、外務省入省。
国際原子力機関(IAEA)事務局事務局長特別補佐官(ウィーン)、条約局法規課専門官、条約局法規課法規調整官、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部不拡散・科学原子力課国際原子力協力室長、在ウィーン国際機関日本政府代表部大使、駐クウェート国特命全権大使を経て、平成24年11月退職。

 就任のあいさつ
 このたび広島平和文化センター理事長に就任しました小溝泰義です。

 平和と核兵器廃絶を目指す原点の地・広島にお招きいただいたことを光栄に思いますとともに、その重い責任を実感しています。 広島の悲劇と苦闘の中から生みだされた尊い平和と非核のメッセージを世界に、また、未来世代に誤りなく伝え広めるために、広島の方々の声をよく聞き、衆知を集め、工夫し、少しでもお役に立てるよう誠心誠意努力していきたいと考えています。
 広島をはじめて訪れたのは、26年前、1987年の夏でした。国際原子力機関(IAEA)に勤務することとなり、日本人として原子力・核不拡散の仕事をするためには、広島のことをもっとよく知るべきだと考えたからでした。 その後、折あるごとに広島を訪ね、被爆者の方々、核兵器のない世界を目指して努力する方々と触れ合い、原点を確認しつつ、仕事に取り組んできました。

 2000年には、エルバラダイIAEA事務局長(当時)が提案したIAEA主催の広島・長崎原爆展ウィーン開催実現にお手伝いをさせていただきました。 当時私は、事務局長特別補佐官として、毎日、エルバラダイさんと二人きりで語り合う時間がありました。 時に、直接の仕事を超え、核のない世界に向けた未来を語り合いました。 核のない世界を実現するためには、「核抑止」という相互不信と脅しに依存する安全保障に替えて、 同じ人間としての信頼関係、共同体意識を基礎とした新たな「信頼できる」安全保障の枠組みを築くことが不可欠だというのが、エルバラダイさんの考え方であり、私も同感でした。 そしてこのような基礎を作る仕事には、国や国際機関だけでは不十分であり、市民社会の幅広い運動と協調が不可欠であるという認識で一致しました。
 昨年11月、43年近くに及ぶ公務員生活を終え、いよいよ市民社会の側から、平和と「核兵器のない世界」を実現するために、自分に何ができるかを模索し、東京、広島、長崎、アメリカ各地をめぐり歩き、多くの人々と意見交換してきました。 その中で、思いもかけず、広島平和文化センターからお招きを受け、大任にとまどいましたが、大切な広島のメッセージを広めるお役にたてるならば、誠心誠意努力しようと決意しました。

 グローバリゼーションがどんどん進行する中、人類としての共同体意識は未発達で、分断化、不信、対立が目立つ残念な状況が現実です。 その中で差異を紛争の原因とするのではなく、人間社会を豊かにする多様性として生かしていくためには、同じ人間、人類としての深い絆、共同体意識を強めて行くことが重要だと思います。 想像を絶する悲劇の中から心労を重ねて生み出してきた、すべての人への広島のメッセージ。 あのような悲劇は誰にも繰り返させないとの止むにやまれない人間の深い心情から発する尊いメッセージは、まさに今の世界の人々が厳粛な気持ちで受け止めるべき、現在から未来に向けての重要なメッセージだと思います。
 過去・現在の多くの心ある人々が血のにじむ努力を重ねて築いてきた基盤を大切にし、その上に未来に向けた新たな非核の波を起こすため、皆様とともに力を尽くしていきたいと心から願っています。 よろしくお願いします。

 最後に、想像を絶する苦労を重ねてこられた被爆都市・広島の皆様が、誰よりも、どこよりも、平和で、文化が躍動し、仲良く、力強く、笑顔にあふれ、思いやりのある人間精神が満ち満ちた日々を過ごしていかれますよう心からお祈りします。
(2013年4月1日)

* 本紙では記事内でNPT(核不拡散防止条約)再検討会議第2回準備委員会の開催都市がウィーンとなっていますが、ジュネーブの誤りです。お詫びして訂正いたします。
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