平和について思う
被爆70年:2015年NPT再検討会議
― 市民の取組と今後の展望 ―

広島県生活協同組合連合会 専務理事 高田 公喜
プロフィール
〔たかだ こうき〕

1958年6月28日広島県生まれ。 1980年生協ひろしま入協、共同購入事業部長、経営企画室長、福祉事業部長などを歴任。 2006年から日本生協連福祉事業推進部部長として出向し、広島帰任後、生協ひろしま常務理事を経て2013年より現職。

最大の渡航目的は、被爆者のサポート
  2010年のNPT再検討会議に引き続き、生協代表団(91名)の副団長として日本被団協代表団(49名)と共に総勢140名で2015年NPT再検討会議に参加しました。 私たち生協代表団は、被爆者の皆さんの現地活動をサポートしながら、被爆の実相を広める取り組みと合わせて、主要各国政府への要請行動や、全国から集めた「核兵器禁止条約の交渉開始を求める署名」の国連代表部への提出を行いました。 また、帰国後に現地の様子や感じたことなどを報告し、草の根的世論形成をしていくことを目的に掲げて渡航しました。
  ニューヨークにおいて4月26日、NGОの共同行動やデモ行進に参加後、ダグ・ハマーショルド広場で、核兵器禁止条約を求めて平和首長会議と原水爆禁止日本協議会がそれぞれ集めた署名をタウス・フェルーキNPT再検討会議議長に手渡しました。 全国の生協は、広島市が提唱する平和首長会議の取り組みに賛同し、市民による世論形成を喚起するものとして取り組みを進めました。 松井(まつい)広島市長から、これまで取り組んできた「核兵器禁止条約の早期交渉を求める署名」(1,097,059人分、うち約89万筆が生協集約分)が手渡された時、私は、「まさに市民の取り組みが国連に届いた瞬間だ」と思いました。
横断幕を持ち行進する日本被団協代表団と生協代表団
署名目録を手渡す松井一實・広島市長
2015年NPT再検討会議に向けた新たな取り組み
  今回のNPT再検討会議では、ニューヨーク訪問に至る経緯でこれまでにない進展がありました。 それは、平和首長会議とのコラボレーションの実現でした。 昨年から広島市、広島平和文化センターとの打ち合わせを重ね、日本生協連代表団として正式に、ニューヨークで平和首長会議が主催する集会への参加を実現できました。 具体的には、4月27日、岸田(きしだ)外務大臣も参加された「ヒロシマ・ナガサキアピール集会」に10名の生協代表団が出席し、スピーチを行いました。 戦後一貫して、生協は市民の立場から平和活動を重点の一つとして取り組んできましたが、おそらくNPT再検討会議の関連行事でのスピーチは初めてであったと思います。 その集会において、核兵器の廃絶を国家間対立を盾に議論を先延ばしにするのではなく、法的禁止(核兵器禁止条約の締結)にむけて、以下の3つがアピール声明として参加者によって採択されました。
@ 核保有国の首長は、被爆地を訪問すること
A 今後の核軍縮交渉では、核兵器の非人道性について理解すること
B NPT第6条にのっとり、誠実に交渉を開始すること
  この3つのアピール声明は広島県生協連も賛同しています。

結果は残念だったがあきらめない
  今回の再検討会議の結果は、皆さんもご存知の通り、核保有国と非核保有国の対立が平行線をたどり決裂しました。 しかし、核兵器の非人道性に関わる世界各国の潮流は大きく変化し、被爆者の皆さんの活動が多くの市民の声に反映されて広がっているのです。 私たちは、世界が抱える諸問題を理解した上で、国連や核保有国、非核保有国代表との対話(ロビー活動)も平行して行いました。 どの国の代表にも真摯に接して頂きました。 しかし、核兵器の非人道性は、国を超えた人類共存のための価値観としての立ち位置には未だなりえていないという実感もしました。
原爆展での被爆者の証言の様子
国連本部でのニュージーランド政府国連代表部への要請活動
「戦争も核兵器もない平和な世界を」市民の集いを開催
  帰国後の6月5日(金)、広島市内において、市民6団体(広島県生協連、広島県被団協、YMCA広島など)で構成する実行委員会主催の、“2015「戦争も核兵器もない平和な世界を」市民の集い”を開催しました。 5回目となる今年は、湯崎(ゆざき)広島県知事、松井広島市長をはじめ、広島県内8市7町の首長や職員の皆さん、広島平和文化センター、友誼(ゆうぎ)団体、全国から参加した生協の組合員や役職員、合計224人が参加しました。 参加者は過去最高の人数でした。
  この集会を通じて、日本を含め、世界のリーダーたちは、「被爆の実相に向き合い、今こそリーダーとしての使命を果たすべき」であり、私たち市民は、「思想信条を乗り超えて連帯し、核保有国やその同盟国に大きなインパクトを与えるためにも、オールヒロシマ・オールジャパンで平和の活動を推進していくことが大切である」と、あらためて思いました。

私たちが取り組まなければならないこと
  世界では、新たなる紛争に伴い核兵器の使用リスクが高まっています。 抑止力という考え方は、歴史的に見ても長く続く考え方ではありません。 むしろ、欧米を中心とした世界のパワーバランスが損なわれる可能性が高くなってきている情勢の中で、核兵器を持っている国は相互確証破壊(MAD)を誘発し、人類存亡の危機をまねく恐れが高くなっていると思います。 さらに、核そのもののリスク管理も必要となります。
  そうならないために、私たちは、非人道的破壊兵器である核兵器を直ちに無くす努力を求めていかなければなりません。
  私たちが取り組まなければならないことは、被爆者の想いを伝承・継承し、戦争も核兵器もない平和な社会を目指して、多くの市民の参加するネットワークを構築し、そのネットワークを通して世界に発信できるように世論を高めていくことです。
(2015年10月23日寄稿)
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