本財団は、広島市立基もと町まち高等学校普通科創造表現コースの協力を得て、被爆者と同校生徒が協働し、被爆者の被爆時の記憶に残る光景を絵に描き、当時の状況を伝える「原爆の絵」の制作に取り組んでいます。
昨年10月から7人の被爆体験証言者と16人の生徒が制作を進め、このたび16点の絵が完成しました。
これで平成19年度(2007年度)に同校に制作を依頼して以来、170人を超える生徒の協力を得て、計207点もの貴重な絵を制作していただきました。
このうち、証言者の迫田勲
(さこだ いさお)さんと、持田杏樹
(もちだ あんじゅ)さん(3年生)は、“突然降り始めた「黒い雨」にはしゃぐ子供たち ~それが放射線物質を含んだ危険な雨とは知らず~”という作品を制作しました。
“突然降り始めた「黒い雨」にはしゃぐ子供たち ~それが放射線物質を含んだ危険な雨とは知らず~”
制作:持田杏樹(基町高等学校)、迫田勲(被爆体験証言者)
迫田さんは7歳のとき、爆心地から北西に約19km離れた、現在の広島市安佐北
(あさきた)区安佐町の山中で、突然降ってきた放射性物質を含む大粒の黒い雨に打たれました。
絵は、迫田さんや他の子どもたちが、それが危険な雨だと知らず、はしゃいでいたり、不思議だなと見ている様子を描いたものです。
迫田さんは、「私の記憶の中にある事を、持田さんが目に見える形にしてくれた。この絵を多くの人に見ていただき、原爆の威力、恐ろしさを感じていただきたい。」などの感想を述べておられます。
今回が2回目の制作となる持田さんは、「この過ちが二度と繰り返されないためには、ただ8月6日に起きたことを考えるだけではなく、それが今この時点までどれだけ大きな影響を与えたかをしっかり考えることが重要と思います。2回目の制作だからこそ気づけた事を、今後自分の言葉で伝えていきたい。」と述べておられます。
証言者と生徒のこうした努力により完成した「原爆の絵」は、被爆体験をより深く理解してもらうため、証言者による被爆体験講話での活用のほか、絵の貸出や、市民や報道関係者等への画像データの提供なども行い、原爆被害の実相を後世に継承するため、今後も役立てていきます。
(平和記念資料館 啓発課)