和文機関紙「平和文化」No.218, 令和6年12月号

平和首長会議理事会の開催等に伴う英国・アイルランド訪問

英国訪問

 平和首長会議の副会長都市である英国・マンチェスター市で、第13回平和首長会議理事会を開催しました。
第13回平和首長会議理事会
 まず、現行の2021年から2025年の行動計画に定められた取組が着実に行われていること、特に「平和文化の振興」について、市民の平和意識を醸成する取組が各都市で活発に行われており、引き続き平和首長会議として注力することを確認しました。
会議の様子
会議の様子
 続いて、2025年から2029年に取り組む次期行動計画において、事務局及びリーダー都市が中心となった体制づくりに取り組む考えや、戦禍の実相の発信・共有及び次代の平和活動を担う青少年の育成を重点的な取組と位置付ける考えを事務局より説明しました。
 また、2025年の被爆80周年の取組について、長崎市で開催予定の第11回平和首長会議総会、青少年平和と交流支援事業の再開、原爆ポスター展の開催等に関し闊達(かったつ)な議論を行いました。
 意見交換では、継続的かつ安定的に活動を行っていくために、財政基盤について意見を交わしました。 メンバーシップ納付金や寄付金については役員都市や専門委員から様々な意見があり、引き続き検討を行っていくこととしました。
 これらの議論を踏まえ、総括文書の採択を行いました。
 この度の理事会への出席を通して、現下の国際情勢において、国家間では疑心暗鬼に陥っていますが、我々平和首長会議の役員都市は揺るぎない絆(きずな)で結ばれており、平和への強い思いを共有していることを再認識しました。
 今後も、市民の安心・安全な生活を守る自治体の首長で構成される組織として、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に向け、市民社会の「平和文化」を共有できる世界を創っていくため、世界中の加盟都市とより一層連帯を深めながら、協働していきたいと考えています。
集合写真
集合写真

アイルランド訪問

 英国訪問の機を捉えて、松井一實(まつい かずみ)会長(広島市長)が核兵器禁止条約推進国であるアイルランドを訪問し、過去の悲しみや憎しみを乗り越え、核兵器のない平和な世界を願うヒロシマの心を伝え、平和首長会議の取組に対する理解と協力を呼び掛けました。
アイルランド議会上院でのスピーチ
松井会長によるスピーチ
松井会長によるスピーチ
 スピーチでは、アイルランドのノーベル文学賞受賞者シェイマス・ヒーニーの作品の一節を引用し、どんな困難に直面しようとも希望を持ち続けることが重要であるとした上で、被爆者の八幡照子(やはた てるこ)さんの被爆体験証言や、日本被団協のノーベル平和賞受賞に触れ、世界の安全保障情勢が悪化している中で、核兵器廃絶のためには今こそ平和を目指した市民レベルの連帯強化が必要であると訴えました。
 また、豊かな文化を有するアイルランドの方々は世界で平和文化を先導することができるとして、多くのアイルランドの都市が平和首長会議に加盟していただきたいと呼び掛け、盛大な拍手をいただきました。
 これを受けた各政党代表者返礼演説では、「被爆の実相に対する理解」や「平和首長会議活動への連帯の意思」などが示されました。
アイルランド大統領との面会
ヒギンズ大統領(左)と握手を交わす松井会長
ヒギンズ大統領(左)と握手を交わす松井会長
 マイケル・D・ヒギンズ・アイルランド大統領からは、平和首長会議の活動について、都市間の関係構築は重要であり、今後の健闘を祈ると激励いただきました。 松井会長からは、今市民が何を望み、何を必要としているかを国に伝えていくこと、また、戦いは間違った行動であると若い人たちが学習することを重視していると伝えたところ、大統領からは、市民が持っている良心に訴えて学習を進めること以上に重要なことはないとの言葉をいただきました。
ヒロシマ・ナガサキ原爆写真ポスター展の視察と現地の若者との交流
 在アイルランド日本国大使館の全面的な協力により開催された「ヒロシマ・ナガサキ原爆写真ポスター展」や「サダコと折り鶴ポスター展」について、3か所で開会セレモニーへの出席や地元の学生との交流を行いました。 展示に加え、来場者との質疑応答を行うことにより、より一層被爆の実相や核兵器の非人道性について理解を深めていただく機会となりました。
ブランチャーズタウン図書館での原爆写真ポスター展の様子
ブランチャーズタウン図書館での原爆写真ポスター展の様子
 この度のアイルランド訪問では、戦争や暴力による痛みを知るアイルランドの人々の平和を希求する心を学ぶとともに、ヒロシマと同様和解という道を選んだ点に深く共鳴しました。
 今後とも、アイルランドにおける平和首長会議の加盟都市拡大や平和文化の振興を通じて、より一層、同国及びその加盟都市との連携を強化していきます。
 同時に、アイルランドの若者との交流を通じ、その多くが平和について関心を持っていることを大変心強く感じるとともに、平和学習の重要性を再認識しました。 被爆者の高齢化が進む中、次代を担う若い世代にバトンを渡していくことが重要であり、その上に立って、平和文化を市民社会に根付かせていきます。
(平和首長会議運営課)
 
公益財団法人 広島平和文化センター
〒730-0811 広島市中区中島町1番2号
 TEL (082) 241-5246 
Copyright © Since April 1, 2004, Hiroshima Peace Culture Foundation. All rights reserved.