和文機関紙「平和文化」No.218, 令和6年12月号

被爆80周年となる令和7年度における全国の子どもたちの平和学習の展開

たに しろう

谷 史郎

広島平和文化センター 副理事長
(平和首長会議事務局)
谷副理事長
たに しろう

谷 史郎

広島平和文化センター 副理事長
(平和首長会議事務局)

 被爆80周年となる令和7年度に向け、全国各地の子どもたちに対話的で深い学びの機会を提供する「ヒロシマ平和学習受入プログラム」について、 ① 被爆者や戦争体験者が非常に高齢となる中、若い世代の平和意識を高めていく緊要性、 ② 被爆地で、平和とは真逆の原爆被害をリアルに実感することで、平和を尊重する意識が醸成される意義、 ③ 国の補助を受けた、各都市の派遣費用に対する広島市の助成制度の創設(3分の1補助を想定)の3点に言及し、全ての平和首長会議国内加盟都市に対し、9月に参加を呼びかけました。 また、指定都市市長会は、これを受け、若い世代への平和学習の展開について率先・牽引することを、11月に申し合わせました。
 その結果、12月13日現在で、既に本年度を大幅に上回る、全国25都道府県90加盟都市、1,607人(子ども1,187人、職員等420人)の参加申込みをいただいています。 心より感謝申し上げます。 さらに、20を超える加盟都市が参加を前向きに検討中です。 各加盟都市におかれましても、これからでも十分受入可能ですので、是非参加を検討いただければ幸いです。
 
 広島への修学旅行については、東京都の北多摩中地区中学校長会で、「子どもたちに『心震わせる』体験を」と題し、12月に説明を行いました。 機会をいただき、ありがとうございました。
 説明では、多摩地区の他の中学校での実際の取組として、 ① 3年間を一貫し、いのち、人権、環境、平和などをテーマに、「総合的な学習の時間」を活用した、40~50時間にわたる、「生きる力」を育む教育課程を編成・実施していること、 ② 広島修学旅行は、その教育課程の集大成と位置付けていること、 ③ これまでの修学旅行先は歴史見学等の意義はあるが、旅行の側面が強く、「広島」のように3年間学習内容を積み重ねることにはならないこと、 ④ 3年間の学習の効果として、平和の意識はもとより、主体性や、他者・集団への尊重意識も向上するなど、生徒の意識に変容が見られること、 ⑤ 保護者からも好評価を得ていることなどを報告しました。
 また、この内容を関係全国団体に説明したところ、 ① コロナ後、修学旅行先のオーバーツーリズムにより大きな支障が生じており、今後の修学旅行のあり方そのものを問い直す動きが出てきていること、 ② 学習指導要領でも、修学旅行について、目的やねらいを明確にしたうえで、総合的な学習の時間等との関連を図り、体験をより深めることが求められていること、 ③ 国際情勢が緊迫化する中、平和学習への関心は高まりつつあり、また、3年間を通し、平和に加え、いのち、人権、環境などの包括的なテーマに取り組む教育活動は、これからのリーディング・ケースの一つとなりうることの3点の示唆をいただきました。
 さらに、校長会では、本財団が検討している二つの令和7年度事業について、説明しました。 第一が、① 3年間の教育課程とその集大成としての広島修学旅行の実践などに関する教員間の事例発表と討議、 ② 広島での平和学習プログラムの体験などを内容とする「『平和学習を考える教師の集い(仮称)』の開催」で、 第二が、① 事前学習の支援、 ② 広島での平和学習プログラムの支援、 ③ 助成金の支給(生徒1人3,000円を想定)などを内容とする「平和学習モニター校指定制度」です(20校×5年=100校の指定を予定)。 これらの事業は、広島修学旅行が西日本中心となっている現状から、トライアルとして、東京都および関東5県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)の公立中学校を対象とすることを考えています。 関心をお持ちの学校・教員の皆さんには、積極的な参加をお願いします。
 
 広島平和記念資料館では、令和9年秋を目途に、「子どもたちの平和学習向け展示」を整備することを検討中です。 被爆80周年を契機として、若い世代の平和意識を高めていく体制や仕組みづくりを、さらに進めていきたいと考えています。
 
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