2024年12月10日、日本原水爆被害者団体協議会(以下「日本被団協」という。)のノーベル平和賞受賞をお祝いするとともに、被爆者の平和への思い・ヒロシマの心を多くの方と共有するため、ノルウェー・オスロ市で行われたノーベル平和賞授賞式に合わせて祝賀式典「被爆者の平和への願いを世界へ」を開催しました。
この度のノーベル平和賞受賞は、日本被団協が長年にわたり、「核兵器は二度と使われてはならない」というメッセージを目撃証言を通して国内外に発信し続けてきたことが、その理由とされています。
また、核兵器の壊滅的な非人道性を根拠とする「人道イニシアチブ」の動きが核兵器禁止条約に繋つながった経緯の中で、被爆者の証言は唯一無二のものであるとの評価もされています。
受賞の歴史的意義を称え、喜びを分かち合うのにふさわしい平和記念資料館メモリアルホールの会場には、夜遅い時間にも関わらず、被爆者や被爆者団体からの参加者約30名を始め、広島市議会議員約25名、本財団役員約15名のほか、多数の市民や海外の大学生など約300人が集い、満席となりました。
さらに、会場前のロビーにおいて、この度の受賞を記念して、日本被団協を含めた被爆者の活動を紹介するパネル展示を行いました。(現在は資料館東館1階で展示)
式典の冒頭には、松井一實
(まつい かずみ)広島市長が祝意を表し、「この度の受賞は、被爆者が自らの辛い体験や憎しみを乗り越えた末に、『こんな思いは他の誰にもさせてはならない』という願いを、人類全体の平和を願う崇高な理念に昇華させ、訴えてきた功績が世界に認められた証である。
引き続き、核抑止力に依存する為政者に、対話による平和的解決に向けた外交政策への転換を促すとともに、被爆者の願いが多くの方々に共有され、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた取組が世界中に広がることを期待する。」と述べました。
続いて、被爆者の切明千枝子
(きりあけ ちえこ)さんが登壇し、「日本被団協のノーベル平和賞受賞は、核戦争の危機が訪れているという警鐘を鳴らすメッセージである。勇気をもらった一方で、危機感も新たにした。ここからが新たなスタートだと思う。」と語り、「自分の命、家族の命、友達の命を守ることが、平和を守るための価値ある一歩である。力を合わせて、身近なところから平和を守っていこう。」と呼び掛けました。
次に、若者代表として、被爆の実相を外国人に英語で伝えるユースピースボランティアとして活動している県立広島大学大学院の岡本幸(おかもと さち)さんが登壇しました。
自身の大学院での平和構築の研究に触れ、「被爆者の皆様が核廃絶を訴え続け、長い年月をかけて平和への道筋を示し、ノーベル平和賞を受賞されたことは、平和構築への希望と力を与えてくれるものである。私も核なき世界の実現に向けて貢献していきたい。」と決意を述べました。
その後、会場では授賞式のパブリックビューイングを実施し、来場者はオスロでの授賞式の様子を見守りました。
日本被団協代表委員の箕牧智之
(みまき としゆき)さんたちに賞状とメダルが授与されたとき、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。
続いて行われた受賞者のスピーチでは、同代表委員の田中煕巳
(たなか てるみ)さんの思いが込められた力強い言葉に、来場者が感慨深い表情で耳を傾けていました。
最後に、本財団の谷史郎
(たに しろう)副理事長が、被爆者のこれまでのご労苦に深く敬意を表するとともに、昨年度、被爆者の方々が被爆体験講話を通じて11万3千人以上のこどもたちに被爆の実相と平和を求める「ヒロシマの心」を伝えていただいたことを紹介し、「今後もこうした機会を増やし、若い世代の平和意識を高めることに注力したい。さらに、昨今の国際情勢を踏まえ、平和への願いを市民社会の総意とし、市民社会から各国の為政者に平和への行動を促していくことを目指していく。」と述べ、本式典は幕を閉じました。
本財団では、今回の日本被団協によるノーベル平和賞受賞を糧に、皆様と連帯してこれからも被爆者の平和への願いを世界に伝え続け、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に向けた取組を推進していきます。
(平和市民連帯課)